映画『星と月は天の穴』咲耶インタビュー「純文学原作でモノクロ、おかたい感じに見えると思いますが……」主演の綾野剛に感謝の気持ちも

『花腐し』(23)の綾野 剛さん、荒井晴彦監督が再びタッグを組み、吉行淳之介さんによる芸術選奨文部大臣賞受賞作品を映画化した『星と月は天の穴』が公開に。離婚経験から愛することを恐れる一方、愛されたい願望をこじらせる綾野さん演じる40代小説家・矢添の日常を、エロティシズムとペーソスを織り交ぜながら綴る愛と性の物語です。

その矢添を取り巻く女たちのひとりであり大学生の瀬川紀子役を、咲耶(さくや)さんが好演。女性を拒む矢添の心に無邪気に足を踏み入れる役柄で、無意識なのか確信的なのか、その本心がつかみにくいキャラクターを演じています。咲耶さんにお話をうかがいました。

●出演が決まった時は、どのようなお気持ちになりましたか?

心底うれしかったです(笑)。わたしは漠然と純文学が好きで、その中の登場人物になりたいという願望がずっとありました。女優という職業をしていくうえで、フルヌードを映すような作品も抵抗なく挑戦したいという気持ちもありました。また、昭和の雰囲気を感じる邦画も、最近ではなかなかなくて。すべてがわたしが願っていたような理想形の作品のオーディションのお話をいただいて、このチャンスを逃したくないと思いました。

●実際にヒロインとしてあこがれの世界に入った感想はいかがですか?

荒井組のみなさんはとても優しく雰囲気がよくて荒井監督とも仲良くなりましたし、綾野さんもとても優しくて素敵な先輩でした。作品の撮影期間は本当に幸せな時間でした。

●綾野さんとは共演にあたり、何かお話する時間はありましたか?

たくさんアドバイスをくださいましたし、わたしを安心させようとしてくださいました。特に今回の作品はセクシャルなシーンが多いので、あまりプレッシャーを感じさせないようにしてくださいました。リラックスしたほうが撮影が円滑に進むので、そのケアなどもしてくださいました。

●大学生の瀬川紀子は、どのような人物像だと理解しましたか?

計算高くて、あとはちょっと嘘つきかもしれないと思いました。紀子が言っていることは、どこまでが本当かウソかわからない側面もあるかなと思いました。

●そもそも純文学に興味を持たれたきっかけは何だったのでしょうか?

何がきっかけか覚えていないのですが、中学生くらいの時から気づいたら好きでした。谷崎潤一郎さんの作品をよく読んでいて、耽美でエロティックで、ちょっと浮世離れしている、そういう雰囲気のものが好きなんです。何が影響かわからないけれど、いつの間にか好きでした。

●ご家庭で触れる機会があったのかもしれないですね。

だとしたら、母(広田レオナ)だと思いますね。ただ、好みに関しては母とかぶってはいるのですが、母の直接的な影響ではないような気がします。いつの間にか好きになっていた感じです。

●今回の『星と月は天の穴』、みなさまにはどのように薦めますか?

純文学原作でモノクロで、昭和が舞台なので、おかたい感じに見えると思うんです。でもフタを開けてみると、わたしはコメディだと思うんです。笑える箇所がたくさんあるんです。パッと見はおかたく見えるし、ものすごく映像もきれいなのになんだか笑えるっていう。そのギャップが余計に笑える要素になっていると思うので、そういう視点でも観てほしいです。

■公式サイト:https://happinet-phantom.com/hoshitsuki_film/ [リンク]

■ストーリー

⼩説家の矢添克二(綾野 剛)は、妻に逃げられて以来10年、独⾝のまま 40代を迎えていた。偶然に再会した大学時代の同級生(柄本佑)から、彼の娘が21歳になると聞いて時の流れを実感する一方、離婚によって空いた心の⽳を埋めるように娼婦・千枝⼦(⽥中麗奈)と時折り軀を交え、妻に捨てられた傷を引きずりながらやり過ごす日々を送っていた。実は彼が恋愛に尻込みするのには、もう⼀つ理由があった。それは誰にも知られたくない⾃⾝の〝秘密〟に、コンプレックスを抱えていることだった。不惑を過ぎても葛藤する矢添は、⾃⾝が執筆する⼩説の主⼈公・A(綾野=二役)に⾃分を投影し、20歳も年下の大学生・B子(岬あかり)との恋模様を綴ることで、「精神的な愛の可能性」を探求していた。

そんなある⽇、矢添は画廊で⼤学⽣の瀬川紀⼦(咲耶)と運命的に出会う。車で紀子を送り届ける途中、彼⼥の〝粗相〟をきっかけに奇妙な情事へと⾄ったことで、⽮添の⽇常と心情にも変化が現れ始めた。無意識なのか確信的なのか……距離を詰めてきては心に入り込んでくる紀子の振る舞いを、矢添は恐れるようになる。

一方、久しぶりに会った千枝子から「若いサラリーマンと結婚する」と聞き、「最後に一緒に街へ出てみるか」と誘い、娼館の外で夜を過ごす。恋愛に対する憎悪と恐れとともに心の底では愛されたいという願望も抱く矢添は、再び一人の女と向き合うことができるのか……。

(執筆者: ときたたかし)

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