「世界で最も憧れられたバッグ」、オリジナルバーキンの国宝級オーラ(辛酸なめ子)
エルメスのバーキンといえば、世界で最も有名なバッグといっても過言ではありません。その中でも世界の至宝ともいうべき逸品が、ジェーン・バーキン本人が愛用していた、元祖オリジナルバーキン。映像や写真で見たことはありましたが、現物を拝む機会などないと思っていました。
どこか遠いヨーロッパにあると思っていたオリジナルバーキンが、実は意外と近く、東京にあることが発覚。しかも11月19日から11月24日まで「ALLU OMOTESANDO」にて日本初公開展示イベント「The ORIGINAL BIRKIN Exhibition」が開催されると聞いて、プレビューに馳せ参じました。バーキン、そしてシャルロット・ゲンズブールのファミリーのファンの一人として……(一般公開は抽選制)。
ALLUはエルメスを中心とした超高級ブランドのヴィンテージなどを扱うショップ。バーキンやケリーなど名作バッグがひしめく中、オリジナルバーキンが迎え入れられたそうなので、他のバッグたちも女王の降臨を喜んでいることでしょう。
オリジナルバーキンの展示ルームに行く前に、2階の展示を拝見。ジェーン・バーキン関連書籍などがケースに並んでいて、モニターにはオリジナルバーキンについての映像が流れています。この世界的なバッグを競り落としたオークションの風景も見ることができました。
2025年7月、パリで開催されたサザビーズオークションにて、バッグ史上最高の14億7000万円(手数料込み・為替換算ベース)で落札されたという歴史的場面です。オークションは100万ユーロ(約1800万円)から始まり、110万、120万、130万と秒刻みで増額。300万、400万、500万、600万とスピーディに入札され、最後700万ユーロで木槌が下ろされました。選ばれた人だけが入札できるオークションで、日本人が競り落としたというのが、久しぶりに景気がいい話で嬉しいです。
映像内ではファッション業界人がこのバッグについて口々に称賛していました。「すべてのバッグの母」「世界で最も憧れられたバッグ」「芸術のトリックのよう」「世界で最も美しい」「手に入れるためなら全てを捧げる」「職人技、デザイン、希少性、有名人の影響が合わさった奇跡のアイコン」など……。
オリジナルバーキンの誕生きっかけは、1981年にジェーン・バーキンが飛行機に乗ったとき、偶然隣の席にエルメス社長のジャン・ルイ・デュマ氏が座ったこと。中のものがすぐ出てしまうカゴバッグを持っていたジェーン・バーキンを見て、「もっといいバッグを持った方が良いですよ」とアドバイスしたデュマ氏。エルメスの社長だと自己紹介し、ジェーン・バーキンにとって理想のバッグを実際に作ってプレゼントしたのが始まりです。
オリジナルバーキンは、現行のバーキンにはないショルダーストラップがついていたり、ジェーン・バーキンのイニシャル「JB」の刻印が入っていたり、他にはない特徴が。現行のバーキンすらじっくり拝見したことがないので、素人的には一見違いがわからないですが、デザインの完成度の高さは十分伝わってきます。サイズ的にも使いやすそうです。ジェーン・バーキン本人が大量の書類やコスメやタバコなどバッグに詰め込みまくっている映像を見ると相当丈夫です。こんなに入るのかと思うくらいの容量が入っていたので、もはや亜空間を内包しているよう。
また、ジェーン・バーキンはショルダーに「爪切り」を付けていたのも特徴的です。常に爪のお手入れをしたい方だったようです。ヤスリじゃないのが親近感がわきます。さすがに、ファッションアイコンの影響力を持ってしても、バッグに爪切りをつけるブームは起きなかったようですが……。
3階には、そのオリジナルバーキンが厳かに展示されていました。まるで国宝のようにガラスケースに収められている美しい黒バッグ。十数年、荒っぽく使われていたのに型崩れもほつれもなく、程よく経年変化して優雅さを保っています。マチが広くて、ジェーン・バーキンが入れていたように大量の書類でもなんでも入りそうです。
当時はジェーン・バーキンの信条を表すステッカーが貼られていたのが、剥がされて跡だけが残っていました。ただのバッグではない存在感、そして魂が宿っているのを感じます。晩年のジェーン・バーキンのドキュメンタリー映画を観たら「ものごとは大体うまくいくと思ってる」などとポジティブなことを話していたので、きっとこのオリジナルバーキンにも良いエネルギーが宿っていると思われます。
ALLU OMOTESANDOの他のフロアにはたくさんのバーキンが売られていました。気になった紫のバーキンの価格を聞いたら「193万円です」とのこと。ヴィンテージ市場では、黒や茶色などベーシックカラーの方が人気で数百万円以上するそうです。また、サイズが小さい方が高くて、大きいものは100万円前後で買えることもあるとか。14億7000万円のバーキンを見たあとなので、100万200万は端数に思えてきます。
物欲が刺激されてなんでも安く思える錯覚で、この物価上昇を乗り越えられる気がしてきました。
イベント概要
イベント名:The ORIGINAL BIRKIN Exhibition 唯一無二のオリジナル・バーキン、日本初公開
開催日:2025年11月19日(水)~11月24日(月)11:00~19:00(最終日のみ16:00まで)
会場:ALLU OMOTESANDO(〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5丁目46-14 Jinguumae546)
アクセス:表参道駅から徒歩5分/渋谷駅・明治神宮駅から徒歩11分
主催:バリュエンスジャパン株式会社
応募方法:特設ページ内応募フォームより(抽選制)
結果通知:当選者にメールにてご連絡
特設ページ:https://allu-official.com/jp/ja/event/birkin-origin/
(イラスト・文:辛酸なめ子)
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