「にごり酢」に再注目。健康と文化の交差点を探る特別セミナー。日本最大級の「にごり酢まつり」も今後開催

11月25日の「いいにごり酢の日」を前に、にごり酢やコンブチャに含まれる酢酸菌を切り口に、健康と文化を横断して語る特別セミナーが東郷記念館で開かれた。

会場では、感染症動向を踏まえた体調ケアの考え方や、酢酸菌研究の最新トピック、発酵と暮らしを結ぶホリスティックな視点、さらに蔵元による復刻の背景と味わいの個性までが立体的に共有された。

なお、にごり酢を扱うメーカーは2019年の2社から2025年には11社へと拡大していることが紹介され、体験フェアの告知も行われた。

第1部:健康編

セミナー前半では、感染症が増える季節を前に、日常生活の中で実践できるセルフケアとしての発酵食品の位置づけが語られた。酢酸菌をはじめとする発酵由来の“菌”をどう生活に取り入れるかが、医療と研究、そして食卓の視点から共有された。

■ 冬に備えたい免疫対策と酢酸菌

登壇したイシハラクリニック副院長・石原新菜先生によると、日頃の体調管理ではまず、手洗い・うがい、睡眠、湯船に浸かる、よく笑う、発酵食品を取り入れるといった基本が大切だという。

その背景として語られたのが、免疫細胞が外敵を見分ける“スイッチ”の役割を持つTLR(トル様受容体)の考え方だ。乳酸菌や納豆菌など多くの発酵菌が関わるTLR2だけでなく、登壇で紹介された酢酸菌はTLR2とTLR4の双方に働きかけ得ると説明された。

石原先生は、「体に良いことは、頑張りすぎずに続けられる形で取り入れることが大切」と話し、納豆×にごり酢、ヨーグルト×にごり酢など、生活の中で取り入れやすい実例も紹介した。

■ “捨てられていた菌”から生まれる新常識

続いて登壇したキユーピー 免疫・認知プロジェクト 次長・奥山洋平氏は、酢酸菌がかつて流通工程で濾過されてきた経緯に触れつつ、近年は細胞壁の糖脂質などに注目した研究が進んでいると紹介した。

セミナーでは、酢酸菌単体だけでなく、乳酸菌や納豆菌と併用した際にみられる相乗的な活性の研究データも提示され、“飲むだけではなく料理・調味に使う”といった生活への取り入れ方も共有された。

④ 第2部:文化編

後半では、酢や発酵を「身体づくり」「地域文化」「生産者の哲学」といった暮らしを形づくる要素として捉え直す視点が展開された。

■ 菌とともに、美しく生きるホリスティックライフ

登壇したNPO法人日本ホリスティックビューティ協会 代表理事・岸紅子氏は、家族の経験をきっかけに食生活を見直した自身の歩みを紹介し、「食べることは自分をつくること」という考え方を軸に、発酵食品を生活に取り入れる意義を語った。

市販の透明な酢が広まる中で、“にごりの中にこそ酢酸菌がいる”という視点は、調味料の選び方をあらためて考えるきっかけとなる。

■伝統製法に宿る“にごり”の価値

トークセッションでは、庄分酢・とば屋酢店・タマノイ酢の3社が、それぞれの視点から「にごり」と「酢酸菌」の魅力を語った。

まず福岡県・大川市に蔵を構える庄分酢の高橋清太朗氏は、にごり酢に込められた蔵の歴史について触れた。「蔵人だけが味わえていた“できたての酢”のやわらかさがあります」

玄米酢を大甕でじっくり育てる伝統製法は、手間や時間がかかるが、ゆえに残る旨味と香りがあるという。

続いて、福井県のとば屋酢店の中野貴之氏は、にごり酢が地域の食文化と結びついていることを強調した。「発酵は、土地と空気と水の味そのもの。小浜で育ったお酢には、ここでしか生まれない香りがあります」

にごり酢は単なる調味料ではなく、風土が映る“食の記憶”でもある。

一方で、タマノイ酢は“日常の食卓で使われる選択肢を増やす”役割を語った。お酢は基礎調味料であるがゆえに、「なくなったらいつものものを買う」という購買行動に陥りやすいという。「にごり酢のような新しい選択肢が生活の中に普通に並ぶようにしたい」

消費者が“選ぶ理由を持てる酢”を増やすこと。それが、タマノイ酢の目指す文化の広げ方だ。

このほか、会場では「にごり酢」を使ったキーマカレー、旬魚の“にごり酢締め”、にごりりんご酢のゼリー×ヨーグルトなどが提供された。酸味が料理の輪郭をやわらかくまとめる感覚に、参加者からは「思ったより優しい味」「香りが立つのに角がない」といった声が多く聞かれた。

「いいにごり酢の日」に合わせた特別イベントが開催

「文化と出会い、体験できる場へ」その広がりを象徴する取り組みとして、11月25日「いいにごり酢の日」を中心に、全国でにごり酢の魅力を体験できるイベントが開催される。

【第1回 にごり酢まつり(東京・下北沢)】

全国の蔵元やメーカーが集まり、にごり酢・酢酸菌ドリンクの試飲や、造り手との交流ができる“文化祭”のような場。味や香りの違いを飲み比べながら、自分の「好きな一本」を見つけられる。

【にごり酢 × にごり湯 体験企画(全国10カ所)】

にごり酢とにごり湯を組み合わせた体験型の取り組み。「まずは気軽に触れてみる」入り口として広がりつつある。

興味のある方は、ぜひ実際に足を運んで「にごり酢」の魅力を味わってみてほしい。

食卓からはじまる、無理のないセルフケア

にごり酢は、健康のための特別な何かではなく、日々の食事の中にそっと置いておける存在だと感じられたセミナーだった。文化や土地の記憶が息づく調味料であることも印象的で、選ぶ一本には、造り手や背景を知る楽しさもある。

11月25日の「いいにごり酢の日」には、各地で試飲や体験の機会が用意されている。気になる人は、どこかで一度、味を確かめてみるのもいいかもしれない。なにかを大きく変えるというよりも、ふだんの食卓にそっと視点をひとつ増やすような、そんなやわらかなきっかけになりそうだ。

酢酸菌ライフ公式サイト:https://sakusankin-life.jp/

  1. HOME
  2. エンタメ
  3. 「にごり酢」に再注目。健康と文化の交差点を探る特別セミナー。日本最大級の「にごり酢まつり」も今後開催
マガジンサミット

マガジンサミット

TVと雑誌がコラボ! 雑誌の面白さを発見できるWEBマガジン 自分が欲しい情報を、効率よく収集できる「雑誌」 ライフスタイルに欠かせない「雑誌」 ちょっと雑誌が欲しくなる、もっと雑誌が読みたくなる、そんなきっかけが生まれるように、TVやラジオ番組の放送作家たちが、雑誌の情報を中心にオリジナル記事を発信していきます!

ウェブサイト: http://magazinesummit.jp/

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。