雛形あきこインタビュー「北斎について生きていたお栄という強い人にあこがれさえ抱きます」 舞台「『新 画狂人北斎』-2025-」
東京・紀伊國屋ホールを皮切りに大阪、熊本、京都など全国にて「『新 画狂人北斎』-2025-」の上演がスタートしました。
本作は『画狂人北斎』として、2017年に宮本亞門が演出。リーディング公演という形式で墨田北斎美術館、イギリスの大英博物館にて上演、さらに曳舟文化センターにて朗読劇「画狂人 北斎」を上演しました。2019年には、ストレートプレイの舞台作品として初演を迎え、2021年、2023年とブラッシュアップをしながら全国で上演されてきた作品になります。
今回は、前作と同じく宮本亞門演出、池谷雅生の脚本ですが、前作から完全リニューアルした、まったく新しい作品として、新たな葛飾北斎の物語を上演してます。
北斎の娘・お栄を演じる雛形あきこさんにお話を聞きました。
●演じられるお栄は、父の北斎を支えつつも、絵師を目指して奮闘する強い女性として描かれるそうですね。
わたしも一昨年に演じた時にたくさん調べさせていただいたのですが、実際にお栄に関する残っている資料はとても少ないんです。北斎の資料はあるんですけど、それが少ない分、みんなが想像を膨らますことができる女性なんですよね。いろいろな人が小説を書いたり、先日も映画になったり、たぶんお栄はこうだっただろう、こう北斎を支えたのではないか、こう一緒に生きたのではないかと想像を掻き立てられる人物だと思います。
●なるほど、余白が多いから補完しながら追う楽しみがあるわけですね。
北斎は、北斎漫画を描いて、富士山を描いて、肉筆画を描いてとちゃんと残っているが、お栄の場合は、北斎が描いたものと言いながら実はお栄が書いたものではないかとか、これは間違いなくお栄が描いたものであるとか、そういう感じの資料しか残っていない状況で想像をしていく。でも、最後に北斎と一緒にいたのはお栄だということはわかっている。そういうわからない部分が魅力で、みんなの想像を掻き立てる部分だと思います。
●その北斎を演じる西岡徳馬さんの印象はいかがですか?
実は10代の頃にご一緒させていただいたことがあり、その時は時代劇で兄妹の役だったのですが、約30年経ちましたが、あんまり変わってないんです(笑)。ずっと同じ感じでエネルギッシュなんです。先日79歳になられたそうですが、本当に変わらずピュアで、いろいろな人のアドバイスを聞いたりして演技プランを採り入れている。その瞬発力や柔軟性は、近くで見ていてすごいなと思います。
●素敵な方ですよね。なかなかできることではないです。
あの歳で経験もたくさんあると、自分はこうと決めがちで、わたしだってそうなってしまいそうな感じがありますが、そうじゃなくてアドバイスとして他人の意見を受け入れ、自分のものとしてできてしまう。だからどんどん進化して、新しいものにチャレンジしていけると思うんですよね。その姿は本当に素敵で、今回もそばでご一緒させていただいております。
●長く芸能活動をされていると思いますが、お芝居については、どのように受け止めていらっしゃいますか?
いくつになっても今回もお芝居って難しいなと思います。これでいいということがない。一生ない。今回の舞台も大変だなと思いながらやっているし、それが楽しくもあるし、あとは好きなことなので、責任を持ってやりたいなと思っています。「ちょっと違ったな」と反省はしても後悔はせず、わたしが思うその時の全力でやり遂げたい。これの繰り返しでいきたいと思っています。
●最後になりますが、みなさんへメッセージをお願いいたします。
北斎やお栄の姿を見ていると、好きなことだけをして生きることが、どれほど大変なことなのかということが伝わればと思います。その想いだけで強く生きられたエネルギーも素敵だなと思いますし、その北斎について生きていたお栄という人もすごく強い人なので、ぜひ注目していただきたいと思います。
■公式サイト:https://no-4.biz/hokusai2025/ [リンク]
■ストーリー
ストーリーは葛飾北斎と鳥居耀蔵の対峙を軸に展開していきます。水野忠邦の天保の改革の下、目付や南町奉行という要職に就いた耀蔵は、絵師としてずっと憧れていた北斎に立場上、牙を剥き始めます。耀蔵は心根は北斎の人間や生き方に魅力を感じながらも厳しく市中の取締りを行い、それは度を越し、とんでもない行動を起こしていきます。絵を描くことにしか興味のない北斎の生き様は、時には人を傷つけ常軌を逸しているようにも思われるが、その人間力の魅力と奥深さに人が惹き付けられていく…。何が幸せなのか。北斎と耀蔵の生き様は現代の世に突き刺さります。
(執筆者: ときたたかし)
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