ダイドー新型自販機「HAKU」ボタンも商品表示もない理由

トヨタ自動車株式会社とウーブン・バイ・トヨタ株式会社が開発を進めてきたモビリティのテストコース「Toyota Woven City(トヨタ・ウーブン・シティ)」が、9月25日にオフィシャルローンチを迎えました。

静岡県裾野市のToyota Woven Cityにインベンターとして参画するダイドードリンコ株式会社は、自動販売機を通じた新たな価値創造を実証テーマに商品サンプルやボタン、コインの投入口が無い自動販売機「HAKU(ハク)」を設置したことを発表しています。

同社自販機営業企画部の古門義浩さんにHAKUについて詳しい話を聞きました。

ーーHAKUの存在価値は?

古門:HAKUは、従来の自動販売機とは一線を画す存在です。前面はディスプレイになっており、画像や映像を自由に投影できるため、設置場所の雰囲気に合わせた演出が可能です。空間や場所に溶け込み、調和することができるデザイン性に加え、プロモーションツールとしても活用できるなど、これまでの自動販売機の常識を覆す自動販売機として新たな価値を提供できると考えております。

ーーHAKUのコンセプトはどこから?

古門:ダイドードリンコは、社会課題の解決や新たな価値創造に貢献する存在へと進化させたいと考えています。多様なニーズへの対応、地域との共生といった観点から、自販機の役割を再定義し、より人に寄り添う存在へと変革することが課題だと考えております。

しかしながら、現状の自販機は「便利な飲料提供装置」として定着しているものの、無機質で画一的な存在として捉えられがちです。一方では、自販機としての存在感が非常に大きく、空間における視覚的なノイズとして敬遠されがちな存在でもあります。

そんな自販機の“利用者との物理的な距離”を縮めるためには、「存在感が強すぎて空間から浮いてしまうモノ」から、「空間に自然に馴染み、そばに置きたくなるモノ」 へ存在概念そのものをシフトすることが肝要となります。

今回のHAKUは“空間に調和するデザイン”をコンセプトとして企画開発いたしました。従来の自販機の常識を覆すデザインと機能を備えることで、空間に溶け込み、調和しながら、利用者の感性に訴える存在として、街の景観や人々の暮らしに新たな価値を提供できればと考えております。

ーーどういった使われ方を想定していますか?

古門:想定される活用シーンとしては、例えばホテルなどの宿泊施設で、空間に溶け込むことができるデザインを生かし、ウエルカムドリンクの提供にご利用いただくケースが考えられます。また、企業の受付スペースなどで来客用の飲料提供に活用することも可能です。

また、前面ディスプレイを活用することで、企業PRやコーポレートブランディングなど、広告・プロモーションの場としても機能します。自動販売機でありながら、空間演出や情報発信ツールとしてもお役立ていただくことができると考えております。

ーーHAKUを設置するメリットとデメリットは?

古門:景観に溶け込む=どんな場所にでも自販機の設置ができるという点がメリットとなります。例えばオフィスの執務室内や、学校の教室の中、コンセプト重視の空間などにおいても自販機が自然に馴染む仕様となりますので、より利用者の近くで活躍できる自販機になると考えます。

また、HAKUを“真っ白なキャンバス”と捉えていただくことで、HAKUへさまざまな絵を描くことが可能となります。企業PRやプロスポーツ応援だけでなく、アーティスティックなグラフィティでも、皆様の自由なデザイン・発想をHAKUに反映していただき、自販機をより身近で楽しい存在へと昇華させることが可能となります。

景観に溶け込むデザインとした場合、一見では自販機と認知いただけない場合もあるのがデメリットでしょうか。現在の実証実験に於いては“HAKUを自販機と認知いただいている特定の方”をターゲットにしていますが、別途“不特定多数の方”をターゲットにした場合には、自販機であることを訴求する仕掛けも必要となるかもしれません。

現在、画像や映像を投影することで認知訴求する仕掛け(特許出願中)を企画中です。

ーー「商品購入時はQRコード読み取り→端末上で商品選択→キャッシュレス決済」ということですが、普通に硬貨を投入して購入したほうが早くないですか?

古門:HAKUには商品サンプルの表示がないため、購入までの導線をスマートフォンなどの端末とQRコードを活用することで、商品選択からキャッシュレス決済までを一気通貫で完結させることができる利便性を重視しています。また、現金を用意する必要がないため、お客様にとっても手間が少なく、オペレーションにおいても釣銭を用意する必要がないことから業務負荷を軽減できるなど、効率化にもつながると考えております。

ーーありがとうございました。

「自動販売機を通じた新たな価値創造」の結果、自動販売機は今後どう進化していくのでしょうか。

※画像提供:ダイドードリンコ株式会社

(執筆者: 6PAC)

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