組長になんてなりたくない――『ROAD59 -新時代任侠特区- 摩天楼モノクロ抗争』が描く、令和の任侠ビジュアルノベル

ブシロードが送るメディアミックスプロジェクト『ROAD59 -新時代任侠特区-』。その初のゲーム化作品となる『ROAD59 -新時代任侠特区- 摩天楼モノクロ抗争』(2025年9月25日発売)を先行プレイする機会を得た。

プレイしてみると想像以上に重厚な人間ドラマと、現代的なゲームシステムの融合に驚かされた。

近未来の東京湾に浮かぶ人工島「天海区」を舞台に、血の盃で受け継がれる「ジンギ」と呼ばれる特殊能力を持つ任侠者たちの抗争。そこに巻き込まれる若き組長・氷室ショウの物語は、ただの任侠物語に留まらない深みを持っていた。

近未来×任侠×伝奇が織りなす独特の世界観

東京湾に浮かぶ巨大人工島「天海区」。この街では、血の盃を交わすことで「ジンギ」と呼ばれる超人的な力を手にした任侠者たちが、4つの組織に分かれて覇権を争っている。

▲「狛浪組」。伝統と格式を重んじる関西にルーツを持つ。

▲「黒条組」。金と権力でのし上がった天海区の最大勢力。

▲「春雲組」。時代のしがらみにとらわれない、自由な気風の組。

▲「PHOENIX」。世界規模で展開する海外マフィアの連合組織。

主人公・氷室ショウは狛浪組の跡取り。しかし本人は極道稼業に全く興味がない。むしろ「平凡で平穏な生活」を願っている青年だ。

そんな彼が、姉の命令で組長代行を務めることになるところから物語は始まる。

天海区の地下にはどんな願いも叶える「ヤマタノオロチの首」が眠っているという都市伝説があり、これが抗争を激化させる要因となっている。現代日本の任侠ものに、SF要素と伝奇要素を加えた独特の世界観が本作最大の特徴だ。

仁侠物に馴染みがない人でもとっつきやすいキャラクターたち

本作をプレイして驚いたのは、コメディ要素の多さだ。

「仁侠物」と言われると、アニメ・ゲームファンにはなかなか馴染みが薄いジャンルで、ともすればハードでバイオレンスなシーンがずっと続くのかと思われたが、序盤は主人公のショウと汐音、涼香を中心としたギャグシーンも多くキャラクターに興味を持つフックになっている。

▲姐さんにめっちゃ怒られる。

キャラクター同士のユルいギャグ会話でとっつきやすさをもたせながらも、しっかりと「仁侠物」として極道の世界での裏切りや、非情な選択を強いられる展開に物語が広がっていく。

序盤のキャラクター同士の「平凡で平穏な日常」が描かれるからこそ、後半の血なまぐさい抗争のショックが際立つのが印象的だ。

▲ジンギによる迫力の抗争シーンにも注目。

バーテンダーになって情報を収集する面白さ

本作の選択肢は多岐にわたる。妹にいくらお小遣いをあげるかという日常的なものから、裏切者への対処という組の存亡に関わるものまで、様々だ。

興味深いのは、どの選択も「正解」が明確でないこと。任侠の世界に生きる者としての判断と、一人の人間としての判断。この二つの間で揺れ動くショウの姿に、プレイヤーも共感せざるを得ない。

また、本作の特徴とも言えるのが、物語中盤から登場する「バーROAD59」のシステムだ。こちらはショウがバーテンダーとして働き、「様子を見る」「話をする」「飲み物を出す」などを行い、客から情報を聞き出すパートとなっている。

▲お酒が入ると深い会話が進むことも。

相手の性格を見極めながら接客する必要があり、失敗すると重要な情報を逃してしまうどころか、最悪の結果を招いてしまうことも……。多くのキャラクターと会話できるので、ボリュームも十分。敵味方問わず酒を酌み交わす場面は、任侠ものならではの魅力がある。

古典と現代が見事に融合した新しい任侠エンターテインメント

本作は「任侠もの」という伝統的なジャンルに、現代的な要素を巧みに組み込んでいる。ジンギという超能力バトル要素、選択によって変化する物語、そしてキャラクターの心理描写。これらが絶妙なバランスで配置されている。

特に主人公のショウは、従来の任侠ものの主人公像を覆す存在だ。強くもなければ、カリスマ性もない。でも、だからこそ現代のプレイヤーが感情移入しやすい。

▲締める時は締めるところが格好良い。

舞台版のキャストがそのまま声優を務めているため、キャラクターの一貫性が保たれている。また、マンガや舞台で描かれた世界観がゲームでさらに深掘りされており、ファンには嬉しい要素が満載だ。

初めて『ROAD59』に触れる人でも問題なく楽しめる作りになっているが、他メディアも合わせて楽しむことで、より深い理解が得られるだろう。

『ROAD59 -新時代任侠特区- 摩天楼モノクロ抗争』は、任侠という重いテーマを扱いながらも、エンターテインメント性を失わない作品だ。

主人公・氷室ショウの不器用な生き様は、きっと多くのプレイヤーの心に響くはず。組長になりたくない組長が、大切な人を守るために成長していく物語。10月8日23:59まではリリース記念でダウンロード版が20%OFFのセールも実施中とのことで、ぜひチェックしてみてほしい。

作品概要
ROAD59 -新時代任侠特区- 摩天楼モノクロ抗争
■ジャンル:ビジュアルノベルゲーム
■発売日:2025年9月25日
■CAST:
砂川脩弥/七海ひろき/美波わかな/相羽あいな/北村諒/末野卓磨
井上正大/工藤晴香/岡田夢以
君沢ユウキ/河内美里/前田誠二/白又 敦/鮎川太陽/山本康平
蒼井翔太/渡辺和貴/加藤里保菜
石川由依/津田健次郎/佐々木李子/谷江玲音/小林親弘
■STAFF:
 企画・原作:ブシロード
 キャラクターデザイン・メイングラフィッカー:ぎどら
 開発:ロケットスタジオ
■プレイ人数:1人
■対応機種:Nintendo Switch™ /Steam®
■対応言語:日本語(言語字幕は英語、繁体字、簡体字にも対応)
■CERO:C
■価格:
【Nintendo Switch™】
通常パッケージ版・ダウンロード版:3,960円(税込み)
特典付き限定版:16,500円(税込)
【Steam®】
ダウンロード版:3,960円(税込)
■公式HP:https://game.road59.com/

© Bushiroad

(執筆者: sasuke_in)

  1. HOME
  2. ゲーム
  3. 組長になんてなりたくない――『ROAD59 -新時代任侠特区- 摩天楼モノクロ抗争』が描く、令和の任侠ビジュアルノベル
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。