霜降り明星・粗品が音楽の特別授業で生徒へ熱いメッセージ「心を殺して売れるか、自分を貫いて飯を食うか。考えておいたほうがいい」

9月6日、恵比寿ガーデンプレイス ザ・ガーデンホールに音楽専門校「バンタンミュージックアカデミーPOWERED BY ユニバーサルミュージック」が来年4月開校することに先駆けて、お笑い芸人でありアーティストでもある粗品の特別授業が開催された。

音楽講座が開始

今回の講座の大きな4つの流れは「作詞作曲」、「コード進行」、「音楽の流行の時代の流れ」、「質問コーナー」だ。まさに、正攻法の授業である。前半の二つは、それこそバンタンに入学してから学ぶような内容である。

その上での注釈として、「正解がないので選択肢を提案したい」、「技術以外の話は粗品の感覚なので通常より捻くれている」、「粗品は音楽で売れていない」と提示した。前半の技術の話は王道でベタなもの、音楽の時代の流行は粗品の肌感でやっていくと伝えた上で、音楽では売れていない事実も棚上げしないとした。

「売れてないなりにもがいている僕やからわかってあげられる話もあると思う」と、バンタンミュージックアカデミーで以前特別授業の講師をしたレジェンドの布袋寅泰やimaseとはまた違う伝え方をしたいという意思表示もされた。さすがのわかりやすさだ。

作詞と作曲について

作詞や作曲とは、どうするべきなのか。「音に合わせて思いついたことを並べるでもいいんです」とした上で、選択肢としてのテクニックを伝える粗品。作詞のテクニックとして「表現の工夫」、「押韻」、「言葉選び」、「シンプルさ」に集約されるとした。

粗品自身が作詞したアニメ『青のオーケストラ』ED「夕さりのカノン feat.『ユイカ』」の歌詞を題材に講義を進める。

オーケストラ部の青春を描く作品の曲という依頼に応えた曲であり、歌詞のひとつひとつに込めた意味を解説する。退屈を表す表現を文学的にすることで、ストレートではなく捻りを加えるテクニックがあると語る。

すこし意味がわからないぐらいのほうが、受け手がより良いように受け取ることもある。それはラッキーである、とした。新人であればあるほど、ストレートよりも工夫を凝らすことで唸らせる効果もあるとした。

さらに音韻のテクニックの話もした。母音を合わせることである。ただ、韻を踏むだけではなく、意味も通っていたほうがより良いとした。

歌詞の意味は通っていれば通っているほど綺麗で美しい。だが、通っている必要性はない。洋楽の歌詞の意味がわからなくとも音がいいから聴いていたなんて話もザラにある。自身の作曲した「オーディンの騎行」を引き合いに、15音の大音韻なども披露。

しかし、音韻にこだわり過ぎても意味がない。街なかで聴いたときに韻を踏んだ歌詞にピンと来ることはない。だが、このテクニックを知っていることで、それを使っていることでプロ感を出せるのだ。

そうしたテクニックが身についているからこそ、THE BLUE HEARTSの「リンダリンダ」のようなシンプルさが武器になることが理解できる。まさに、選択肢を増やすことに重きを置いている。

作曲の方法について

高校生の頃から作曲を手掛けていたという粗品。その方法は「コードを先に決めて当てる」、「鼻歌にコードをつける」の二つのやり方があるとした。

そもそも、コードとはなんなのか。そんな超基礎の話もしていく。ドレミファソラシドの単音の組み合わせは旋律、そこに3つぐらいの音を同時に弾いて伴奏するのがコードである。

「コードを先に決めて当てる」場合は、「感覚でやるか」、「理論でやるか」のさらに二つに分けられる。自身が感覚でできるかどうかを理解することで、できないなら理論でやればいいと方向性を理解できる。

メロディが降りてきたら録音する。それを曲にするにはコードをつける必要がある。鼻歌を実際に歌いながら、コードを試して、しっくり来るものを試していく。これが感覚で付けるパターンだ。

理論でするときは、鼻歌をメロディで弾き、そこに構成音を探っていくことになる。それを粗品は、機材トラブルに見舞われながらも、なんとか実践してみせた。

コード進行は学べば学ぶほど面白く、こねくり回していろんなことをしたくなる。そうした奥深さがある。そうした音楽理論を理解する一つ手前の感覚的なコードについての話もした。

「きらきら星」を使って、ひとつのメロディに対して、「いろんなコード進行をつける」を実践した。王道、そこから変化をつけて少し外して違和感ない範囲を探ってみせる。

さらに、自身の曲を題材に、基本とされる王道コード進行から階段的に半音下げていく進行、わざと不協和音をいれていくコード進行。それぞれの好みによって、王道、オシャレ系、コード変態のようなタイプ別があることを明かした。バズる曲を作る人はコード変態になりがち、とも。

ここで違和感のあるコードの正体、分数オーギュメントについても解説した。

自作の玉野競輪のイメージソング「車輪疾駆の風々」の楽譜を題材に、分数オーギュメントにフラットファイブ、セブンスといったコードを使っているとした上で、今は違和感のあるコードでも上級音楽家が評価してくれる時代だとした。これもまたテクニックである。

音楽流行とそれに対するアプローチ

後半戦は技術の話から一転、アプローチの話が始まった。まさに、『ラーメン発見伝』芹沢達也の言葉「いいものなら売れるなどというナイーヴな考え方は捨てろ」だ。どんなに技術を磨いても、売れなければ意味がない。売るためには、売るための道筋を立てる必要がある。

粗品は「めっちゃ売れたい?」か「ちょっと売れて飯食えたら良い?」と、売れ方の考え方を二つ提示する。「ちょっと売れて飯食えたら良い」という人は、好きにやればいい。だが、「めっちゃ売れたい」という人は、戦い方を考える必要がある。

2025年にめっちゃ売れるためには「タイアップ」か「TikTok」しかない。粗品はそう断言した。もちろん、最初にあったように、粗品独自の捻くれた考え方ではある。だが一理も百理もありそうだ。

「タイアップ」をつける道を行くならどうすればいいか。「事務所に入って押してもらう」のが道であると粗品は示す。

なお、タイアップがついたからといって必ず売れるわけではない。そこには運も絡む。

そして粗品は壁にぶつかったときのために、「どんなに良い作品を作っても、どんだけ最高傑作が出来ても、誰にも聴いてもらえないことはある。運なんですよ」という言葉を心にとどめておいて欲しい、と伝えた。

その上で、「やり続けるしかない。どこまで折れずに頑張れるか」と、必要とされる精神論も付け加えた。

そして、粗品は今回のまとめとして、「心を殺して売れるか」、「自分を貫いて飯食うだけか」は、なんとなくでも考えておいたほうがいいとした。迎合して売れるためにいろいろやるのは悪くない。自分を貫くのはカッコいい。自分を貫いて売れようとすると壁にぶつかる。

自分はなにをしたいのか。どう在りたいのか。どこに寄せていくのか。そうしたクリエイター人生の信念についての話で講義は終わった。

質問コーナー

講義の終わりでは、質問コーナーが設けられた。

Q1:
曲作りをするときに、自分の好きなアーティストに曲が似ちゃいます。オリジナリティーを出すにはどうすればいいですか。

粗品:
わかります。ぼくもTHE BLUE HEARTSが好きで、アルバムで12曲作ったら、見事にTHE BLUE HEARTSみたいな曲になりました。でも、これな、しゃあないねん。やっぱ、自分の好きなアーティストの影響は受ける、ただ、まるまる被ってないかどうかのチェックはできる。

作戦としては、講義であった分数オーギュメントというコード。THE BLUE HEARTSは使ってなかったよな、みたいな。だから、わざと入れる、というような。尊敬しているアーティストとかけ離れているところにあるやつを組み合わせたらいい。

Q2:
作曲で、歌詞から作るか、曲から作るか悩んでるんですけど。粗品さんはどういう感じで作曲していますか。

粗品:
僕はね、歌詞が一番最後ですね。僕も作曲得意じゃないんで、オススメのやり方です。歌詞を先にできる人って、「ありがとう」って歌詞を使いたくても、5文字のメロディを作らなあかんから、だいぶね、むずかしい。だから、一番簡単なのは、コードを先決めて、ドミソからやってメロディをつけて、後で歌詞をつけるのが一番オススメ。

でも、なんとなく「こういう曲にしたい」「夏、青春、花火みたいな曲にしよう」っていう歌詞のイメージを思いながら、メロディーをつけるのは全然アリ。

もし、「夏、青春、花火みたいな曲」にしたいと考えているのなら、既存のそのテーマの楽曲のコードを参考にして、自分やったらこうメロディをつけるって作業をするのも作曲の第一歩。

Q3:
ぼくは今、美容学生で、髪型とか人物とかファッションを掛け合わせて作品を作って、SNSに投稿する際に音楽と組み合わせるのをしています。粗品さんがここまで登りつめるために常に考えてきたことはどんなことでしょうか。ぼくは美容師としてめちゃくちゃ売れたいなと思っているので、アドバイスをいただきたいです。

粗品:
いいねえ。憧れの美容師とか居んの。尊敬している人がいるなら、ぶちのめさなあかんからなソイツを。

で、それは何をしたかというと、シンプルに同業者の誰よりも努力することをした。キミなら、同業者の誰よりも美容というジャンルに時間を割くこと。もっと具体的に言うと、誰よりも寝ないこと、誰よりも遊ばないこと、誰よりも酒を飲まないこと。

結局どこまでもストイックにやることが自信になるときが来る。結果が出んくても自分は同世代の誰よりも努力しよるから、毎日2時間しか寝てへん、22時間ずっと美容のこと考えてる、作品もこんな異常な数作れた、ストックはある、あとは運だけ。このスタンバイ状態。一番準備できてる、努力できてる自分に酔うこと。俺やれてんなぁ、これは俺がんばれてるぞ、ていうのが自信になって、体調も良くなる。

二時間しか寝るなっていうけど、健康面はもちろん気にせなあかんけど、自分にできることは全部やらなあかん。遊び全部なし、趣味なし、ゲームしない、スマホ見ない。そういうところを20代前半にやったかな。

折角の機会なんで、グーーッと突き詰めていってもいいんじゃないですか。

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