金利上昇でも約8割が「変動型」!住宅ローン最新利用状況と超長期住宅ローンの落とし穴

金利上昇でも8割が「変動型」!住宅ローン最新トレンドと超長期ローンの落とし穴

住宅ローンの金利が上昇トレンドに入った。住宅金融支援機構が2024年10月~2025年3月までに住宅ローンを借りた個人を対象に、2025年4月~5月に調査を行った結果を公表した。この間に住宅ローンを借りた人は、どんなローンを選んだのだろうか?

【今週の住活トピック】
「住宅ローン利用者の実態調査結果(2025年4月調査)」を公表/住宅金融支援機構

金利上昇でも、約8割が変動型。ただし金利や返済期間に変化

さて、日本銀行が「マイナス金利政策の解除」を決め、政策金利をこれまでに2回、引き上げている。それを受けて、2024年10月以降に変動型の金利を引き上げた金融機関は多い。調査の対象は、金利が上がった時期に住宅ローンを借りた人といってもよいだろう。金利の影響は、ローンの選択に影響したのだろうか?

前回調査(2024年10月調査)と比べて、目立った変化があったのは、「借入金利」と「返済期間」だ。

まず、利用した「金利タイプ」の結果を見よう。「変動型」が79.0%、「固定期間選択型」が12.2%、「全期間固定型」が8.8%。「変動型」は前回が77.4%だったので、前回より増えている。金利上昇局面になっても、「変動型」を選んだ人が多いということだ。

では、変化が目立つ「借入金利」を見ていこう。増加傾向にあった「年0.5%以下」の割合が下がって、代わりに、「年0.5%超~年1.0%以下」の割合が増加した。これは、多くの金融機関が変動型の金利を上げた結果、以前は0.5%以下だったものを0.5%超に上げたといった影響が考えられる。

借入金利の水準

借入金利の水準(出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2025年4月調査)」)

次に、「返済期間」を見よう。返済期間で最も多かったのは、「30年超~35年以内」の45.8%だ。住宅ローンの最長期間は原則として35年なので、できるだけ長い期間で設定していることがうかがえる。ただし、急速に増加しているのが「35年超~40年以内」(18.4%)と「40年超~50年以内」(7.1%)だ。

返済期間

※1:「40年超~50年以内」は、2023年10月調査より選択肢に加えて設問している
※2:2023年4月調査までは「35年超」として設問している
返済期間(出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2025年4月調査)」)

最長返済期間が40年あるいは50年といった住宅ローンを、一般的に「超長期住宅ローン」と呼んでいる。【フラット35】の場合の超長期住宅ローンに【フラット50】があるが、これは住宅が長期優良住宅の場合などに限られる。住宅の長寿命化に対応して、返済期間を長期化したものだ。

一方、まだ提供している金融機関は多くないが、民間の住宅ローンなどでは住宅に制限はない。ただし、もともとローンの完済時年齢が80歳未満などといった条件(金融機関によって異なる)を設けているので、おのずと20代~30代の若い世帯が対象になる。

つまり、金利が上がったことで、返済期間を超長期にした若い世帯が、少なからずいたということだろう。

「日本銀行の金融政策変更の影響」について聞いたところ、44.3%が「変化あり」と回答した。どう影響したかは、「金利タイプを見直した(変動型→固定期間選択型へ)」(6.2%)、「借入額を減らした」(5.6%)など、さまざまな変更をしたことがうかがえるが、「返済期間を長くした」(4.9%)もその一つに挙がっている。

日本銀行の金融政策変更の影響

日本銀行の金融政策変更の影響(出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2025年4月調査)」)

超長期住宅ローンのメリットとデメリットは?

さて、金利が上がったことで超長期住宅ローンを選ぶ人が増えるというのは、なぜだろう?

超長期住宅ローンのメリットは、毎月返済額が抑えられることだ。たとえば、4000万円を当初金利0.6%で借りた場合、35年返済なら毎月返済額は10万5611円だが、10年延ばして45年返済にしたら8万4541円になり、2万1070円抑えることができる。

なお、最長返済期間が40年や50年の超長期住宅ローンの場合、最長35年の住宅ローンと同じ金利の場合もあれば、金利が高くなる場合もあるので、必ずしも試算どおりとはならない点に留意してほしい。

■4000万円を借りた場合

返済期間35年45年差額当初金利0.60%0.60%毎月返済分105,611円84,541円21,070円※筆者による試算(4000万円を金利0.6%で元利均等、毎月返済のみで借りた場合で、35年返済と45年返済を比較)

さらに、同じ毎月返済額でも超長期住宅ローンのほうが借入額を増やすことができる。ただし、返済期間が長いほど利息は増える。上記の例では、金利が完済まで0.6%のままだったとした前提で、総返済額は35年返済が約4435.7万円、45年返済が約4565.2万円となり、約129.5万円の利息増になる。

また、超長期住宅ローンでは、老後のマネープランも気になるところだ。30歳で35年返済にしたら65歳が完済年齢だが、45年返済にしたら75歳が完済年齢になる。計画的に繰り上げ返済をしないと、年金生活時の家計をローン返済が圧迫することになりかねない。

分かれ目は「金利の低さ」か「金利が変わらない安心感」か

さて、調査結果に戻ろう。住宅金融支援機構では、「住宅ローンを選んだ理由」を聞いているが、全期間固定型である【フラット35】の利用者とそれ以外の利用者に分けて、回答を求めている。

【フラット35】以外の利用者では、「金利の低さ」(61.0%)を最多の理由に挙げた。一方、【フラット35】利用者では、「金利がずっと変わらない安心感」(58.4%)を挙げた。特徴的なのは、いずれも“金利”をカギに挙げている点。借り入れる際の金利が低いか、借り入れた際の金利が変わらないか、どちらを重視するかが住宅ローン選択の分かれ目になっているようだ。

住宅ローンを借りたら、長く返済を続けることになる。しかも最近は、返済期間が40年や50年など長期化している。生涯の家計に影響を与えるものであるのに、調査結果を見ると、住宅ローンを比較検討していない(比較した住宅ローンが1つ=現在借りているローンのみ)人が65.6%もいる。今は住宅ローンが多様化しているので、複数の住宅ローンを比較検討して、自分のライフプランにあったものを選んでほしい。

比較した住宅ローンの数

比較した住宅ローンの数(出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2025年4月調査)」)

また、超長期住宅ローンを利用している若い世帯では、返済途中に売却するから返済期間は気にならないという人もいると聞く。低金利であっても、返済期間が長いほど元金の減り方が遅くなる。売却時になって、思ったより元金が減っていないということのないように、借りるときに長期的なシミュレーションをしておくべきだろう。

●関連サイト
住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2025年4月調査)」

  1. HOME
  2. 生活・趣味
  3. 金利上昇でも約8割が「変動型」!住宅ローン最新利用状況と超長期住宅ローンの落とし穴

SUUMOジャーナル

~まだ見ぬ暮らしをみつけよう~。 SUUMOジャーナルは、住まい・暮らしに関する記事&ニュースサイトです。家を買う・借りる・リフォームに関する最新トレンドや、生活を快適にするコツ、調査・ランキング情報、住まい実例、これからの暮らしのヒントなどをお届けします。

ウェブサイト: http://suumo.jp/journal/

TwitterID: suumo_journal

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。