【ライブレポート】緑黄色社会、これまでの13年の“チャンネル”をつなぐ、魂のパフォーマンス──ワンマンライブ〈Channel Us 2025 at 東京体育館〉
2025年7月4日。
開演の時刻を迎えると、会場が暗転し、ステージに用意された大きな「U」の照明が点滅し始める。そしてSEが流れた瞬間から、会場の空気がゆっくりと色を変えていくのがわかった。そして、ステージに、緑黄色社会のメンバーと、ドラムスの比田井修、そして4人のコーラス隊が登場。この日、東京体育館に最初に鳴り響いたのは“Party!!”。一音目から、心が解けていくのがわかった。高鳴る鼓動とシンクロするように跳ねるビート。長屋晴子の歌声が天井を突き抜けて、まるで誰かがそっと背中を押してくれるような、そんな安心感があった。そこから“sabotage”、“これからのこと、それからのこと”と続くセットリストは、迷いや不安さえも肯定してくれるようで、どこか泣きたくなるような温かさがあった。
今回の〈Channel Us〉は、全国29公演を回ってきた〈Channel U tour2025〉に連なるライブ。長屋は今回のライブについて、「“Channel U”の先にある“Us”という名前の通り、私たちだけじゃなく、みんなを巻き込んだライブにできたら」と語りかけ、「今ここにいるみんなと一緒に、“今日しかない最高のライブ”を作りたい」と宣言した。
次のブロックでは、ポップさのなかに毒気を漂わせるような、センスの塊をそのままぶつけたような歌詞と、ギタリスト・小林壱誓と、ベーシスト・穴見真吾が織りなすアグレッシブなサウンドが印象的な“馬鹿の一つ覚え”、“Monkey Dance”を立て続けに。夏の暑さを思い出させるような熱気に包み込むと、次に披露された「マジックアワー」では、peppeのキーボードの音色で、少しずつ景色は夕暮れに変わるように、静かに移り変わっていく。壮大なバラード「僕らはいきものだから」では、観客それぞれの心の奥にしまっていた何かがじんわりと滲み出したような気がした。楽曲を披露し終えると、万雷の拍手が鳴り響く。その観客の反応に、長屋がどこか安心したような顔をしていたのが印象に残った。
このライブが開催された「7月4日」はバンドの結成記念日であり、この日をもって13周年を迎えた緑黄色社会。中盤に行われたのは、その歴史を総括するような圧巻の年代メドレーだった。それは、まるで一緒にアルバムをめくるような時間だった。2017年の「Bitter」から2024年の「ナイスアイディア!」まで──バンドの進化を一望できる構成は、まさに”チャンネルを切り替える”ような面白さがあった。そして、スクリーンに表示された数字が「2025」、つまり「いま」を示したとき、長屋は「新曲です」と告げる。そして演奏されたのは、この日リリースされたばかりの「illusion」。冒頭から複雑なコーラスワークが響き渡り、緑黄色社会の次なるフェーズを予感させた。
圧巻の演奏を繰り広げたあとは、長屋が「少し景色を変えようかな」と言いながら、ステージ上段へと移動。そして「少し前に、旅をしたんです。人生で一度は見てみたいと思っていたオーロラを探しに」そう語り出した長屋は、旅の目的だったオーロラには出会えなかったものの、「その経験そのものが今も心の中で生き続けている」と穏やかに続けた。「一つの出来事が、時間がたっても温度が冷めないまま、自分の中に残っていることが嬉しかった」と振り返り、感情が色褪せることなく心にとどまる体験の尊さを語った。
「生きていると、いろんなものが欲しくなったり、ふと死について考えてしまったり、自分って何のために生きてるんだろうって思ってしまうこと、ありますよね。でも、意味なんてないの。意味を探さなくても、ただ“感じる”ことがあるだけで、十分なんだと思えたんです」と語る長屋。その言葉は、深く息を吸うように会場に広がっていった。
そんな旅と心の揺らぎを元に生まれたのが、“オーロラを探しに”という曲だ。曲の前に彼女はこう続けた。「森の中で心が空っぽになって、“ああ、これでいいんだ”って思えた。その空っぽになった心にすっと入ってきた景色、音、温度、気持ち……。あのとき感じたすべてが、少しでもみんなに伝わればうれしい」ただ「美しい景色」を求めた旅は、思いがけず、彼女の中の“なにか”を確かに照らした。そんな気づきと静かな希望をのせて歌われた“オーロラを探しに”は、会場に集まった観客一人ひとりの胸にも、そっと灯りをともしていた。
ライブはここから終盤。長屋は「最近ちょっとした調査をしてるんです」と切り出すと、観客に向けて“世代別リアクション調査”を開始。「10代!」「20代!」と10代から80代まで幅広い世代に挙手を促し、「意外と50代が一番元気なんですよ」と笑顔で語り、会場を沸かせた。さらにそこから「60代、ありがとう!」「70代も最高!」「きっと80代の方もどこかにいると思う」と、全方位に感謝を届ける姿に、会場は温かい拍手と笑顔に包まれた。
続けて、学生世代にも呼びかけると、中高生から小学生、さらには幼稚園・保育園の子どもとその親御さんまで手を挙げる姿が。「こんなにも私たちの音楽がいろんな世代に届いてるんだって実感して、すごく嬉しい」と語る長屋の目には、確かな感動がにじんでいた。「さあ、自分がどこで手を挙げたか、ちゃんと覚えててね? 盛り上がる準備、いいですか?」と呼びかけ、コール&レスポンスを行うと、会場の一体感は最高潮に。今まさに多世代の“チャンネル”をつなぐ存在となっている緑黄色社会。この日、東京体育館に集った観客一人ひとりが、その架け橋の一部になっていた。
そこからライブは一気にクライマックス。“花になって ”、“Mela!”、“キャラクター”といった緑黄色社会のライブアンセムを連続して披露すると、会場のテンションはピークへ。観客が一体となって歌い、踊る光景は“祝祭”そのものだった。そして本編最後は、“PLAYER 1”。「どんな困難も共に乗り越え、限界突破していくぞ」と宣言するかのように、その音楽は熱く鳴り響いていた。
本編を終えると、某有名音楽番組をオマージュしたギターサウンドが鳴る中、サングラスにスーツ姿の真吾先生(おそらく穴見真吾)のVTRの時間へ。絶妙なクオリティーのモノマネを挟んだあとは、ここからラッパーに扮した真吾先生がヒップホップのトラックに乗せて、グッズの紹介ソングが披露された。真吾先生の「Put your hands up!」という合図に合わせて、オーディエンスもしっかり手を振っていた。その姿を見た時、「真吾先生、愛されているな」と感じた。
ライブはそこからボーナスステージへ。まずはタイトなギターリフが全体を引っ張る“コーヒーとましゅまろ”で温かな空間を作り出し、リョクシャカの世界へとオーディエンスを呼び戻していく。
そこから長屋は「今日、7月4日は、13年前のこの日、初めてライブハウスでライブをした日なんです」と語る。そんな言葉で語られたのは、制服姿でカバー曲を織り交ぜながらステージに立っていたバンドの原点だった。「当時は衣装もないし、知り合いを誘ってなんとかお客さんを集めていたような頃で。でも、そんな私たちにも漠然とした自信だけはあって。ただ、今日みたいな景色を目の前にできる日が来るなんて、当時はまったく想像もできなかった」
13年という月日は、決して短い道のりではなかった。長屋は「私たちにとってはがむしゃらで、意味のある13年だった」と語る一方で、「いろんなことが変わってきたけど、案外、変わらないものの方が多い」とも話す。変わらずふざけ合うメンバーとの関係性、友達と遊ぶように音楽を作るスタイル、目の前の観客とライブをする時間を大切に思う気持ち――それら“変わらないもの”こそが、自分たちにとって最も大事なものだと、彼女は胸を張った。
そして「もっともっと数字を重ねていきたい。信頼できるメンバーと、そして何よりも、私たちを愛してくれるみんなと一緒に。これからも、もっと大きな景色を見せていけたらと思います。本当にありがとう。今日も暑い中、足を運んでくれてありがとう。そして、ずっと応援してくれてありがとう」と感謝の言葉を口にした。
そしてボーナスステージは“Shout Baby”、“恥ずかしいか青春は”へと進む。長屋の言葉のあとに聞く“恥ずかしいか青春は”は、いまの緑黄色社会を象徴しているかのようだった。きっと4人にとって、この13年間はきっと「青春」だったのだろう。そして、緑黄色社会は、その青春をまだまだこれからも謳歌していくのだろうと、そう思った。
取材&文:ニシダケン
撮影:西槇太一
ライヴ情報
Channel Us 2025 at 東京体育館
2025年7月4日 セットリスト
M00. SE~U
M01. Party!!
M02. sabotage
M03.これからのこと、それからのこと
M04.馬鹿の一つ覚え
M05. Monkey Dance
M06. マジックアワー
M07.僕らはいきものだから
M08.始まりの歌
M09. 13th Anniversary Medley
01. Bitter
02. リトルシンガー
03.幸せ
04.夏を生きる
05. たとえたとえ
06. 陽はまた昇るから
07. ピンクブルー
08. ナイスアイディア!
M10. illusion
M11.オーロラを探しに
M12. あのころ見た光
M13. サマータイムシンデレラ
M14.花になって
M15. Mela!
M16. キャラクター
M17. PLAYER 1
[BONUS STAGE]
BN01. コーヒーとましゅまろ
BN02. Shout Baby
BN03.恥ずかしいか青春は
ライヴ情報
緑黄色社会 Fan Club Live “livestone vol.3”
《日時・会場》
7月16日(水)福井県・福井県県民ホール
OPEN 18:15 / START 19:00
7月26日(土)群馬県・Club JAMMERS
OPEN 17:15 / START 18:00
7月27日(日)栃木県・HEAVEN’S ROCK 宇都宮 VJ-2
OPEN 17:15 / START 18:00
7月31日(木)兵庫県・Harbor Studio SOLD OUT!
OPEN 18:15 / START 19:00
8月1日(金)岡山県・CRAZYMAMA KINGDOM
OPEN 18:15 / START 19:00
8月3日(日)徳島県・club GRINDHOUSE
OPEN 17:15 / START 18:00
Ryokuoushoku Shakai ASIA TOUR 2025
2025年9月30日(火)愛知県 Zepp Nagoya
2025年10月2日(木)大阪府 Zepp Osaka Bayside
2025年10月11日(土)ソウル YES24 LIVE HALL
2025年10月12日(日)ソウル YES24 LIVE HALL
2025年10月18日(土)台北 Zepp New Taipei
2025年10月19日(日)台北 Zepp New Taipei
2025年10月24日(金)上海 VAS est
2025年10月26日(日)広州 REPUBLIC OF SOUND
2025年10月28日(火)香港 Kitty Woo Stadium, TungPo
2025年11月7日(金)ジャカルタ THE KASABLANKA HALL
2025年11月9日(日)シンガポール The Theatre at Mediacorp
2025年11月14日(金)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
詳細
https://www.ryokushaka.com/live/
アーティスト情報
HP:https://www.ryokushaka.com/
YouTube:https://www.youtube.com/c/ryokuoushokushakai

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