エルトン・ジョン&ブランディ・カーライル、『天使はどこに』収録曲本人解説の日本語訳が公開

 2025年4月4日に発売された、エルトン・ジョン&ブランディ・カーライルのコラボレーション・アルバム『天使はどこに』が、全英アルバム・チャート1位、米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”9位を獲得した。

 今作のエルトン・ジョンの公式サイトに掲載中のエルトンとブランディによる全曲解説の日本語訳が公開された。なお、アルバムにはエルトン、ブランディ、バーニー・トーピン、アンドリュー・ワットによる楽曲解説が掲載されている(日本盤は翻訳付)。以下、日本語訳となる。

1. The Rose Of Laura Nyro ローラ・ニーロの薔薇
エルトン:アルバムを作り始め、最初に取り掛かったのが、バーニー・トーピンが書いた「ローラ・ニーロの薔薇」だ。私はローラ・ニーロというアーティストを心から愛していたし、バーニーも同じだった。彼女は、私たち二人の初期のソングライティングに多大な影響を与えてくれた。というのも、彼女の曲は、ただ“ヴァースからコーラス、そしてミドル8へ”という決まりきった構成じゃなく、時にはテンポを落としたり速めたり、曲の終わりにコーダを入れたりと、自由な展開があったんだ。そんな彼女への想いを込めてこの曲を作ったんだが、仕上がりの爆発力には、自分たちでも圧倒されるほどだったよ。

ブランディ:バーニーは、歌詞の語句の使い方や細かい表現の部分で私を作業に参加させてくれた。あのバーニー・トーピンと並んで言葉を書いているなんて、信じられなかった。なんとか心を落ち着かせて、一瞬一瞬を噛みしめながら、自分に言い聞かせた。「この時間を楽しむのよ、ブランディ。あなたが作詞を始めたのは、バーニー・トーピンがいたから。その彼と今、言葉を書いているのよ」って。17歳のとき初めてロサンゼルスにやって来て、バーニーの机の写真を撮れる場所を訪れたほど、彼の書く歌詞は昔も今も、私にとって特別なのです。

2. Little Richard’s Bible リトル・リチャードのバイブル
ブランディ:リトル・リチャードはゲイの男性だった。そのことを受け入れることもあれば、否定することもあった。彼が生涯の最後まで、完全に自分自身を受け入れられなかったのは、とても辛いこと。彼は自分を“ロックンロールの建築家”だと呼んだ。だからこそ、私たちは彼ができなかった分まで、私たちは“受け入れる”という姿勢を大切にするべきだわ。

エルトン:曲のミックスをしたのが、偶然にもリトル・リチャードの誕生日。そうだと知っていて、そうしたわけじゃない。この曲に限らず、アルバムすべてがそうだったんだ。もちろん「アルバムを作ろう」と決めて作り始めたわけだから、計画はあった。でも、4人でスタジオ入った時点では、どうなるかなんてまったくわからなかったんだ。ところが、いざ火がついたら、それはもう凄まじいのなんのって!スタジオの中、疑いや不安、希望、そして人間らしさが混ざり合う、まさに感情の嵐だった。

3. Swing For The Fences スウィング・フォー・ザ・フェンシズ
エルトン:力強くてエネルギーに満ちたアルバムにしたいというアイデアが最初にあった。ブランディには、もっと思い切り自由に歌ってほしかったし、そういう曲を書いてほしかった。そして彼女は「スウィング・フォー・ザ・フェンシズ」でそれを見事にやってのけた。リード・ヴォーカルはブランディ、私はハーモニーを担当した。難しかったよ。そんなふうに徹底してハーモニーに回るのは初めてだったからね。このアルバムは、ハーモニーがすべてだ。ただここで1行、あそこで1行ハモっているというのではない。本格的なデュエット・アルバムなんだ。

ブランディ:この曲が、おそらく『天使はどこに』の中で最初に思いついた音楽的なアイデアだったと思う。若いLGBTQIA+の人たちにとっての応援歌になればいいなと思ったの。私たち、2世代にわたるクィアの二人が、誰にも負けずに“勝っている”姿を、彼らに見せたかったのよ。

4. Never Too Late ネヴァー・トゥー・レイト
ブランディ:エルトンが“年を取る”という概念をどうしても受け入れようとせず、それでも人生の後半になってようやく、心の穏やかさや安らぎを見つけた――そのことを曲にしたかった。聴いてくれる誰にとっても、希望のあるメッセージになると思ったから。それで私が歌詞を書き、彼がピアノの前に座って歌い始めたのだけど、いきなり叫んだの。「最初の1行はカット!意味が通らない」って。私が「だって6/8拍子なのよ、エルトン」と言っても、彼は「違う!」と突っぱねて、そのまま最初の1行を歌い出した。すると、曲がどこからともなく現れた。15分後にはもう録音していた。あれは本当に信じられない瞬間だった。

エルトン:美しい曲だ。意志と意欲、そして自分の間違いを認めてやり直そうという謙虚ささえあれば、何かを変えるのに遅すぎるなんてことはない。人生で一番素晴らしいのは、謙虚さと品位を持って「やってみよう。遅すぎることはない。自分にならできる。私にはまだエネルギーがある」と言えることだ。私はそういう性格だったんで、運が良かったんだ。

5. You Without Me ユー・ウィズアウト・ミー
ブランディ:長女のエヴァンジェリンとの関係に変化が訪れようとしていて、その最初の兆しが現れたのが、まさにこのアルバムを録音するためにカリフォルニアに向かった時だった。胸が張り裂けそうなくらいショックだったのに、同時にものすごく誇らしくもあって、本当に不思議な感覚だった。きっと世界中の親がみんな経験したこと、もしくはいつかは経験することだと思う。

エルトン:このアルバムを誰かに聴かせるたびに、決まって「今のをもう一回かけて」と言われるのがこの曲だ。それくらい、その想いが心を打つんだ。それは私とデヴィッドが今まさに経験していることでもある。長男が寄宿学校に入学したので、彼を学校に送り届けたあと、一緒にランチをして帰宅した。その瞬間に涙があふれて止まらなくなった。デヴィッドが「どうしたんだ?」と聞くので、「息子を失った。僕が愛したあの小さな男の子に、もう二度と会えないんだ」と言ったんだ。あの曲には本当に共感できるよ。

6. Who Believes in Angels? 天使はどこに
エルトン:とても力強い曲で、サビでクライマックスを迎えるように、徐々に盛り上がっていく。この曲には、私たちがお互いをどれほど愛しているかがすべて込められていると思うよ。聴くたびに胸を打たれるし、楽曲の出来にも構成にも、とても満足している。彼女の詞に対して私が書いたメロディも、これ以上のものはなかったと胸を張れる。ミュージシャンにとって、それ以上のことってあるだろうか。ブランディは私の天使。心からそう思っている。真夜中だろうといつだろうと、電話をかければいつでもそこにいてくれる、そういう存在だ。多分、私も彼女にとってそうなのだろう。私たちは本当にぴったりなんだ。

ブランディ:子供の頃、壁にエルトンの写真を貼るほど夢中だった私が思い描いていたエルトン・ジョンと、現実のエルトンは、まるで違っていた。そんな素顔を見せてくれるほど、彼は寛大だったの。「天使はどこに」の歌詞で私が伝えたかったのも、まさに“本当の自分を見せる”ということ。それは、私とエルトンの関係や、私たちがお互いにとってどんな存在なのかを描いた物語でもある。音楽的には、エルトン・ジョンの作風の中でも“これぞエルトン”という核心に触れることができて、そこに私の歌詞が乗った――それこそが、私の夢の実現なのです。

7. The River Man ザ・リヴァー・マン
ブランディ:「ザ・リヴァー・マン」はアンドリュー・ワットがあたためていたギター・リフから生まれた曲。聴いた瞬間に素晴らしいリフだとわかったから、あとはエルトンがその気になってくれるのを待つだけだった。アンドリューはずっと「エルトン、このギター・リフはやるべきだよ。僕が16歳の時に書いたんだから…」と言い続けていた。そうしたらある日、エルトンが「アンドリューの曲をやろう」と言ったの。「やった!」と思ったわ。エルトンがピアノを弾き始めた瞬間、曲は生まれたの。

8. A Little Light リトル・ライト~世界に光を
エルトン:ブランディは、私たちが(アルバム制作中に)住んでいた家の隣に滞在していて、ある朝ふらっとやって来た。ちょうどイスラエルがガザに侵攻した日だ。私はすごく動揺して「世界でこんなことが起きている中で、なぜ自分はレコードなんか作っているんだ?」と彼女に言った。すると彼女はその気持ちを受けとめて、今起きていること、そしてそれを音楽でどう変えていけるかについての、とても前向きな歌詞を書いてくれた。あの時の私の気持ちを、ちゃんと前に向けてくれたんだ。

ブランディ:その時のエルトンとの会話や、私たちにできること――お互いを支え合い、他の人たちにも何かできること――について、歌詞にしたのです。私たち二人にとっても、少しだけ気持ちを楽にしてくれる曲になったと思う。少なくとも、アルバム作りを続ける力にはなった。あの時は本当に辛くて、アートを作ること自体をやめたくなるほどだったから。

9. Someone To Belong To サムワン・トゥ・ビロング・トゥ
ブランディ:エルトンには、バーニーだけではなく、(夫でありマネージャーでもある)デヴィッドとの深い絆がある。私はあの二人のパートナーシップが本当に大好きです。90年代にエルトンの音楽に出会った時、エルトンとデヴィッドは、私が初めて目にしたゲイカップルだった。今回のアルバム制作中、デヴィッドはほぼ毎日スタジオにやって来た。彼が来るたびに、エルトンの肩の力が抜けて、少しずつその日をリラックスして過ごせているのがわかった。“愛する人がそこにいる”という安心感というか。それで私は鉛筆を手に取り、エルトン・ジョンからデヴィッドに贈る歌を書いた。デヴィッドがずっと受け取るべきだったラブソングよ。

エルトン:「もしまだあの丘に黄金が眠っているなら、それは君のおかげだ」という歌詞の通り、デヴィッドは美しい夫であるだけでなく、素晴らしいマネージャーだ。この10年、私のキャリアは、今の自分の年齢や立場のアーティストにとって、本当に信じられないほど恵まれていた。デヴィッドが私のキャリアを根本から変え、新たな場所へと導いてくれたから、私は心から楽しんでこれた。最高の夫がいて、美しい子どもたちがいる――そんな私は本当に幸運だ。実際、それがすべてだと思うよ。

10. When This Old World Is Done With Me この古き世界が私と共に終わる時
ブランディ:バーニーから歌詞が送られてきた時、スマホの画面では読まずにプリンターに転送したの。大事な歌詞に違いないと感じたから、紙に打ち出して読みたかったのよ。私はエルトンより先にその歌詞を目にすることになり、そしてそれをエルトン・ジョンのピアノの上に置いて、彼がやって来るのを待つという光栄に恵まれた。エルトンはピアノの前に座ると、そのまま曲を書き始めた。私は彼の後ろに座って、音楽が生まれていく瞬間を聴いていた。そして最初のサビが書き上がる頃、彼は涙をこらえきれずに号泣したの。

エルトン:(曲を書き始め)歌いながら、「なんて美しいヴァースだろう」と思っていた。でも、その先に何が待ち受けているか、まったく想像もしていなかった。サビに差し掛かった瞬間、涙があふれ、45分くらい止まらなかった。本当に心に刺さったんだ。まずピアノ(のパート)を録ってからヴォーカルを録ったが、アンドリューが「明日、気持ちを切り替えて、新鮮な気持ちで歌い直したほうがいい」と言ってくれて。それで翌日、ピアノとヴォーカルを同時に一発で録った。それが収録されているテイクだ。

◎リリース情報
アルバム『天使はどこに』
2025/4/4 RELEASE
https://umj.lnk.to/EJBC_WBIA

Photo: Peggy Sirota

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