「私の第一言語は音楽」─至宝の歌声で存在感を放つ『白雪姫』の“声”について聞いてみた/レイチェル・ゼグラーさんインタビュー

1937年に公開された不朽の名作アニメーション『白雪姫』が約90年の時を超えて実写映画化されました。4年の歳月と莫大な予算を投じたプロジェクトの末に姿を現した本作ですが、その完成度はもはや“異例”ともいうべき仕上がり。

魅力的なキャラクター描写や躍動感、画のクオリティはもちろんのことですが、特筆すべきはミュージカル映画としての歌のクオリティです。

白雪姫を演じるのはレイチェル・ゼグラーさん。名作ミュージカルを映画化した『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021年)のオーディションで、約3万人の候補者の中から主人公マリア役に抜擢され、史上最年少でゴールデン・グローブ主演女優賞に輝いた実績を持つ彼女、本作『白雪姫』でも透明感と伸びのある質感を備えた歌声で名曲を奏でます。

そんな彼女に対し、今回は「ウサダ記者」ことウサ耳を付けたオサダ記者がインタビューしてきました。ちょっと緊張感のあるホテルの一室に入ると、歌姫がにこやかに佇んででいました。

──ガジェット通信のウサダと申します。よろしくお願いします。

レイチェル・ゼグラーさん:最高!(笑)いい耳ですね!

──ありがとうございます(笑)

通訳・大倉さん:ウサダさん、以前にこのウサ耳でいらしたのっていつでしたっけ?

──ユアン・マクレガーさんとお会いしたときかな……。『プーと大人になった僕』(2018年)の時だと思います。
https://getnews.jp/archives/2078679

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レイチェル:えっ! 『プーと大人になった僕』も良く知ってますよ。実は『白雪姫』でも(『プー』のときと)同じ方がカメラオペレーターをしてくださってるんです。ジェイソン(Jason Ewart)さんという方なのですが、とても素敵な方です。

──わぁ……ご縁を感じます!

レイチェル:本当ね!(笑)

──予告を拝見させていただいて、まず本当にびっくりしたのが、レイチェルさんの持つ素晴らしい、そのギフトとも言える歌声と表現力でした。普段、声帯のコンディションを維持するために気を付けていらっしゃることはありますか?

レイチェル:素晴らしい質問! よく言うんだけど、私はミュージカルに取り組んでいるときはいつも“尼さんのような暮らし”をしてるの。あまり外出しないし、カフェインや乳製品も摂らないの。

声帯って、すごくデリケートな筋肉なんです。痛めちゃうと元に戻すのがとても難しいから、とにかく休ませることが大事! 休みの日なんか本当に何も話さない。

他にはね……ネブライザー(吸入器)とスチーマーでしっかりと喉を潤して、リコリスの根のお茶を飲むの。本当に効くのよ。
あと、あまり知られていないのが、マシュマロ! これ、声にすごく良いの、本当。喉にちょっと“なんか”残ったりしてる時に、不要なものを吸いとってくれるんです。

映画のセットのときは大変よ! セットは大抵、暑かったり寒かったり極端な温度変化があるから、喉のコンディションを維持するためにかなり気を遣うの。

以前、スピルバーグ監督に言われたことがあるの。「僕は人の魂の“窓”は、その人の目だ、と思うんだけど、レイチェルの心の窓は目と声だね」って。私、今でもそのことをすごく大事に思っています。

通訳さん:マスクもするの?

レイチェル:もちろん! この前、ブロードウェイで舞台やってたんだけど、地下鉄移動の時は混雑しているから必ずマスクしてました。体調崩しちゃうと声を取り戻すのは本当に大変なので……。

──やはりその素晴らしい声帯をケアする事にも、ものすごく気を遣われてたんですね。その成果もあってでしょうか、スクリーンやスピーカー全体から表現されるものの“圧”も素晴らしかったです。レイチェルさんがキャラクターの感情を表現する際に気を配られているポイントを教えてください。

レイチェル:私は常に「今、何を撮られているのか」ってことをすごく考えてたかな。
大きなスクリーンに自分の顔がアップになったりするわけだから、その時に映画のキャラクターとして皆さんに伝わるようにしたいな、って。

今回、マンディ・ウォーカー(Mandy Walker)さんという『エルヴィス』や『ムーラン』の実写版を担当された方が撮影を担当してくださったのですが、今までのお仕事の中でもすごく撮影監督に恵まれているな、と思います。

だからこそ、私は彼女に「どんな風に光が当たってる?」とか「どのくらいの画角なの」「私の目がどんな風に映ってる?」って先に全部聞くようにしていました。その中で、できるだけ信憑性のある演技をしたいから。

私たちは、白雪姫の世界のようにウサギさんがドアを開けてくれるようなマジカルな場所に実際に住んではいません。だけど、映画の中の世界が本当に存在していると皆さんに思ってもらう必要がある。そのためには、やっぱり心から演じることが大切だと思ってます。

私が本当にラッキーだったと思うのは、私の最初の“言語”──第一言語がミュージックであったことです。

そして、マンディさんや先にも名前が出たジェイソンさん、フォーカスオペレーターのオリさんたちといった信頼できる撮影部の協力があってこと、私は役や歌に集中できたと思っています。

──「言語が音楽」ってすごい説得力です。先ほどマジカルな場所、とおっしゃられてましたが、レイチェルさんが『白雪姫』の世界で「友達になりたい動物は?」って聞かれたら、まず何を思い浮かべますか?

レイチェル:えー。どうしよう……!バニーちゃんが目の前にもいるんだけど、私たちの映画に出てくるカメが大好きなんです。甲羅から出てくる小さなカメさん。……あ、でもやっぱりウサギの方が好きですよ!(笑)カメもすごく好きなんだけど。

──カメ可愛いですよね! 僕もカメ、大好きです(笑)。レイチェルさんが本作のストーリーで強く魅力を感じた部分を教えてください。

レイチェル:この伝統的な作品が今の世代に向けて、さらに表現拡張された部分を本当に気に入りました。もちろんオリジナルはとても美しいです! その素晴らしさのままキャラクターを広げて、新しいキャラクターや音楽を追加しているのが嬉しかったですね。

あと技術面もすごいですよね。ウサダさんもご存じの通り、ディズニーはアニメーションの表現において最先端であり続けました。新しい技術ですべての新しいキャラクターや動物たちが実際の生き物として画面に登場するすごさを持っています。

新しい世代に向けて、1937年公開のアニメーション版『白雪姫』の要素、オマージュをたくさん携えたまま90年後の今に伝えられるというのはとても光栄です。

──レイチェルさんが白雪姫で本当によかったと思ってます。今日は本当にありがとうございました。

レイチェル:ありがとうございます!

『白雪姫』
2025年3月20日(木・祝)全国劇場にて公開
原題:SNOW WHITE
監督:マーク・ウェブ 
音楽:パセク&ポール
キャスト:レイチェル・ゼグラー/ガル・ガドット

プレミアム吹替版声優:吉柳咲良/河野純喜(JO1)/月城かなと/諏訪部順一/大塚明夫/津田篤宏(ダイアン)/平川大輔/

小島よしお/浪川大輔/日野聡/井上和彦/中井和哉
オリジナル・サウンドトラック:ウォルト・ディズニー・レコード
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c) 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

『白雪姫』ストーリー
かつて心優しい王と王妃が暮らす王国があった。ふたりの間に生まれた愛らしい娘は、雪の降る日に生まれたことから“白雪姫”と名付けられ、両親の愛を一身に受けて成長した。

この王国ではいつも太陽の光が降り注ぎ、人々は土地を耕し、その実りをみなで分け合った。雪のように純粋で美しい心をもつ白雪姫もまた、人々を愛し、両親や人々から愛された。しかし、そんなある日、妃が病でこの世を去ってしまう。

それと入れ替わるように王国に美しい女がやってきた。すべてを吸い寄せるような美しさを持つ彼女は魔法の使い手でもあった。王は彼女に魅了され、結婚。しかし、その後、女は本性を表し、見た目の美しさと権力に執着する邪悪な女王になり、白雪姫や人々の暮らしは一変する。女王から嘘を吹き込まれた王は、戦のために王国を後にし、戻ってくることはなかった。

いつしか周囲は闇に包まれ、人々から希望が消えようとしていた。女王は、誰に対しても真実を語る魔法の鏡に向かって「世界で一番美しいのは誰?」と問う。鏡は答える。「それはあなたです」

女王によって召使になってしまった白雪姫は幸福だった日々を忘れて、孤独な日々を過ごすようになり、人々もまた彼女のことを忘れつつあった。そんなある日、彼女は城に忍び込んだ青年ジョナサンに出会ったことをきっかけに、忘れかけていた自分自身を取り戻していく。いつも人々のことを気にかけ、楽しみや幸福を分け合った心優しい本来の白雪姫を。

その時から女王の問いかけに対して、魔法の鏡の答えが変わる。鏡は答える。世界で一番美しいのは、誰よりも心が美しい若い娘だと。彼女の“本当の美しさ”に嫉妬した女王は、白雪姫の命を狙う。

しかし、女王の手下は白雪姫の優しさに心を打たれ、彼女を深い森へと逃し、白雪姫は動物たちに導かれ、不思議な森で7人のこびとたちに出会う。彼らとの幸福な時間が過ぎていくが、白雪姫が生きていると知った女王は魔法で老婆に変身し、白雪姫を自身の手で葬ることを決める。手にしたのは口にすると永遠の眠りにつく毒リンゴ。

誰よりも美しい心をもつ白雪姫の前に、ついに老婆が出現し……

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オサダコウジ

慢性的に予備校生の出で立ち。 写真撮影、被写体(スチル・動画)、取材などできる限りなんでも体張る系。 アビリティ「防水グッズを持って水をかけられるのが好き」 「寒い場所で耐える」「怖い場所で驚かされる」 好きなもの: 料理、昔ゲームの音、手作りアニメ、昭和、木の実、卵

TwitterID: wosa

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