動物の交通事故もゼロへ! 「日産アニマラートプロジェクト」が奄美大島で始動

交通事故は人身に限らず動物にも起こりうるもの。身近な動物のイヌやネコを始め、様々な動物たちがロードキルの被害に遭っている。国内におけるロードキルは増加傾向にあり、そんな状況を改善できないかと日産自動車がプロジェクトを始動した。
ロードキルをゼロに! 第1弾ターゲットはアマミノクロウサギ

今回発表された「日産アニマラートプロジェクト」は、日産自動車、奄美市、環境省、岡山理科大学、T.M.WORKS の7団体が連携して行う取り組み。プロジェクトの第1弾として、鹿児島県奄美大島と徳之島のみに生息するアマミノクロウサギの保護を目指す。アマミノクロウサギは、絶滅危惧IB類(近い将来に絶滅の危険性が高い種)に指定されている野生動物だ。
奄美大島といえば、昨年マングースの根絶宣言をしたばかり。マングースは、1979年にハブ対策として人為的に島に放たれた外来種で、農作物への被害や島内に生息する固有種生物にも影響を与えていた。2005年から対策が始まり、マングースの個体数減少に伴ってアマミノクロウサギも生息域を回復。約2万頭を数えるまでになり、民家の近くなどにも姿を現すようになっている。だが、そんな朗報の一方で、アマミノクロウサギのロードキルが多発。世界自然遺産に登録された2021年には62件、翌2022年は107件、2023年は過去最多の147件になってしまった。
島内では、チラシや看板など様々な形でドライバーに向けてロードキルへの注意喚起が行われている。しかしアマミノクロウサギは、全長50センチほどで全身は黒褐色、とても気付きにくい外見だ。夜間となれば尚更、ヒトの注意だけでは限界があるかもしれない。そこで期待されるのが、このアニマラートといえる。
実用化が期待される日産の「アニマラート」とは?
電気自動車が近づいてくると「キーン」という金属音のような高い音が聞こえてくる。ヒトに車の接近を知らせるあの音。その音が動物にも届いたなら、接触事故が減らせるかもしれないというのがアニマラートの発想だ。

ヒトに聞こえる音と動物に聞こえる音には周波数の違いがあるという。今回はアマミノクロウサギに届く有効な高周波音を割り出し、装置から発することで効果をみる実証実験。アマミノクロウサギの出現が確認されている場所での事前テストでは忌避効果が確認できる結果が得られているという。また、こうした音には慣れが生じてしまうのでランダムや50ものパターンを用意するといった工夫もされている。

昨年の12月からは装置を搭載した日産サクラによる走行実験が始まった。まだデータ収集の段階ではあるものの、実用化に期待が高まる。アマミノクロウサギだけでなく、希少な野生動物のロードキルは後を絶たない悲しい現実がある。ドライバーの意識改革ももちろんのこと、動物全般にこの画期的なアニマラートが働くことを期待してやまない。
日産自動車はこれまでにも猫バンバンプロジェクト(駐車中の車のエンジンルームなどに入り込んだネコを発進前に逃がすためにボンネットなどを叩くこと。思わぬ事故を防ぐ)や、動物の災害救助にも積極的に携わり、人だけでなく動物の命も守ろうとする取り組みに力を入れている。野生動物の交通事故ゼロへ! 今プロジェクトの続報に刮目だ。

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