室内干しニーズの高まりを受けて、住まいからバルコニーが消える? 若者世代の住まいの選び方とは

住環境研究所は、セキスイハイムの間取り図面を約20万件保有(2025年1月時点)し、データベース化しているが、そのデータを活用して、2018年度から2022年度に着工した2階建て(二世帯等除く)について、間取りの変化や現状を調査した。その結果、和室やバルコニーを採用する事例が顕著に減少しているという。そこで、バルコニーに注目して、詳しく見ていきたい。
【今週の住活トピック】
「間取り実態調査―減るバルコニー・消える和室、間取りの新トレンド―」を発表/住環境研究所
イマドキの若者世代は「バルコニーなし」を選ぶ?
分析結果によると、バルコニーを採用しない2階建て住宅の割合が、2018年度の10.8%から2022年度の30.6%と5年間で3倍近くに増加している(グラフ①のバルコニー採用率推移)。2018年度には「バルコニーあり」がほぼ9割だったことを考えると、近年急速に変化していることが分かる。
中でも「バルコニーなし」は、施主の年齢が30歳未満(37.9%)や30歳台(33.3%)で多い(グラフ②の施主年齢別の採用率)。同社の別調査では、バルコニーを設置している住宅でも30歳未満では「バルコニーに洗濯物を干す」のは47.5%にとどまっているという。バルコニーを“洗濯物を干す場”にしているのは、30歳未満では少ないということのようだ。

※バルコニーにはベランダを含みます
バルコニー採用率①と施主年齢別の採用率②(出典:住環境研究所「間取り実態調査」)
室内干しにするのは、外干しのデメリット回避のほかに効率化の理由も
ではなぜ、バルコニーに洗濯物を干さないのだろう?これについては、千趣会が実施した【調査レポート】「令和の共働き世帯の洗濯事情」に関する調査を見ていこう。
ベルメゾン会員の共働き世帯では、「室内干し」をしている世帯は全体の72.1%、うち49.5%が「常時室内干し」をしている。また、その理由として、「ゲリラ豪雨や花粉などの季節的な影響を受けたくない」が最も多く、次いで「天気に左右されたくない」が挙がった。特に共働きであれば、雨が降ってきたらすぐに取り込むといったことができず、外干しのデメリットを強く感じるのだろう。ほかにも、「時間の制約を受けたくない」「時短、効率化」といった、生活上の効率化を重視する理由も多いことが分かる。

部屋干しをしている理由 (出典:千趣会「令和の共働き世帯の洗濯事情」に関する調査)
ランドリールーム付きの間取りに注目!
さて、住環境研究所の研究員は、バルコニーを採用しない住宅が増えている背景を「共働き家庭の増加に伴い、夜間洗濯や乾燥機の利用が増えたことが挙げられる」とコメントしている。ほかに、若い世代には、洗濯したものをバルコニーまで運んで干し、乾いたら室内に取り込むといった“作業動線の長さ”も気になるのだろう。
そこで、注目されるのが、「ランドリールーム」だ。千趣会の調査でも、室内干しをしている場所は、実際には「リビング」が1位だが、理想は「ランドリールーム」が1位という結果もあった。
住環境研究所では、洗面脱衣室の横に、外光が取り込める「ランドリールーム」を設ける間取りを例示している。洗濯機がある空間で、洗う→干す→しまうがまとめてできるので、かなり効率的だ。広さにもよるが、ここでアイロンがけをしたり、家族それぞれの収納を置いて、そこにしまったものを各自が自室に持っていったりといった、さまざまな使い方が考えられる。

「ランドリールーム」を設けた間取り例(出典:住環境研究所「間取り実態調査」)
近年は、共働きや単身者の増加が指摘されている。住宅内での暮らし方が変われば、住宅に求めるニーズも変わる。住環境研究所の調査では、和室の採用率が大きく下がっているのに対して、畳コーナーには一定の採用率が維持されているという結果もあった。これからは、従来の間取りにとらわれない、フレキシブルな間取りが増えていくだろう。
●関連サイト
住環境研究所:減るバルコニー・消える和室、間取りの新トレンド―間取り実態調査―
千趣会:【調査レポート】「令和の共働き世帯の洗濯事情」に関する調査

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