小規模エステサロンの生存戦略|経営力を鍛えて成功する方法

経営に悩む小規模エステティックサロンのオーナーを支援する草野由美子氏は、経営コンサルタントであり、エステティックサロン経営学院の学院長として活躍している。自身もかつてサロンを経営した経験があり、そこで直面した多くの課題を克服する中で得た知識と経験を、現在の活動に活かしている。今回は、小規模サロンの現状や課題、それらを解決するための具体的な支援の手法について、草野氏の考えを詳しく伺った。

「サロン経営」を深く学ぶために

「たとえ1店舗でも経営者は経営者。だから経営の勉強はした方がいいですよ」。これは、私がサロン運営をしていた頃に、7店舗を展開するサロンの女性経営者からいただいたアドバイスです。この一言に背中を押され、さっそく経営の基礎を学び始めました。同時期に、人材育成のOJTの仕組みづくりなども習得し、それを活かして小規模サロンの経営に悩むオーナー向けのコンサルタント活動をスタートさせたのです。

さらに、マーケティングやマネジメント、経営を体系的に学ぶため、コンサルタント塾に入塾。ところが、それは士業の方々が学ぶ塾で、専門用語が頻繁に飛び交い、素地のない私には理解が追いつきませんでした。業界が異なると言葉もこれほど違うのか、と強く実感したのです。この経験をきっかけに、エステティシャンがエステティシャン向けに経営やマネジメントなどをわかりやすい言葉でお伝えする場を作ろうと決意し、JESMA 日本エステティックサロン経営学院を開校するに至りました。

学院では、3つのステップで学びを深めます。第1ステップでは、個人サロンの経営を成り立たせるためのサロン運営の基礎知識を6カ月間で学びます。次に第2ステップでは、スタッフ採用の準備、望む人材を採用するための仕組みづくり、そして人材育成のためのOJTの基本を6カ月間で習得します。最後の第3ステップでは、複数店舗を展開するための経営スキルと責任者養成について12ヶ月間で学ぶというスタイルです。一人経営を続ける場合には第1ステップで終了することも可能で、オーナーの経営スタイルに合わせた柔軟な学びを提供しています。

サロンならではの強みを最大限に引き出す

学院での講座はすべてオンライン形式で提供されており、全国どこにいてもエステティックサロンの経営について学ぶことができます。小規模サロンの中には、技術は特別優れていなくとも商売や情報発信に長けて売上を伸ばしているサロンがある一方で、技術やキャリアが豊富でも情報発信力が弱く、集客に苦戦しているケースも少なくありません。本来、エステティックサロンの経営には、技術や知識といった提供する商品・サービス力と集客や財務管理などの運営力の両輪が必要不可欠です。そのため、サロンオーナーには、サロン経営の基本や自分の個性や能力を活かした自分らしいサロン運営を、学院の講座を通じて習得してほしいと考えています。

エステティックは人の外面、内面、精神面のケア(三面美容)を実践するものです。外面的な皮膚トラブルの「対症療法」に関しては医療美容が優れていますが、エステティックの「外面的ケア」とは目的が大きく異なります。エステティックサロンの「外面的ケア」では、肌質に合った化粧品を用いて、心地の良いエステティックマッサージの施術とともに、心を落ち着かせる音楽や香りを提供することで、自律神経を整えていきます。ストレスが原因で引き起こされている肌トラブルは、自律神経が整いストレスが軽減されることで内面から鎮まる効果が期待できることや、リフレッシュして気分よくお帰りいただくことが大きな成果といえます。

現代では、メンタルヘルスに不調を抱える人が増えています。サロンに継続して通うことで、メンタル不調の緩和や予防も期待できるでしょう。この「継続して」の仕組みを保つためにも重要なのが、経営を中心とした学びです。オーナー自身がサロン経営の学びを深め、適切な施術を提供し続ければ、サロン経営は着実に成長していくと考えています。

エステティック業界の未来と社会的役割

エステティック業界では、「エステティックサロン認証制度」(経済産業省指導)があるほか、業界の健全な発展を目指す基準として「エステティックJIS」の策定も進んでいます。将来的には、これらの認証を取得したサロンが増え、業界全体の信頼性や質がさらに高まることが期待されているのです。

私の目標は、全国各地のサロンが企業と提携し、福利厚生の一環としてエステティックサービスを提供できる体制を整えること。特に、地方の企業と認証を受けているエステティックサロンとの契約を推進し、社員が会社の補助を受けて比較的安価で気軽にエステティックサービスを受けられる仕組みを作りたいと考えています。

さらに、健康や美容、メンタルヘルスに関する自治体主催のセミナーなどで、地域のサロンオーナーが講師を務めることができれば、エステティックが持つ社会的な役割や効果を広めることにつながり、エステティック業界の信頼と認知度も拡がるでしょう。特に、企業で働く社員が福利厚生を活用してサロンに通うようになれば、地方の小さなサロンも集客に困らずに、経営も安定するのではないでしょうか。サロンで施術を受けた社員たちはリフレッシュし、翌日の仕事の効率も向上することが期待できます。これは、昨今注目される「健康経営」の実現にもつながる方法だと考えています。

エステティックは、美容だけでなく、健康で美しく、幸せに生きていくための知識と方法です。この価値をさらに広めることが、私たちの大きな使命と感じています。

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