北海道「ウポポイ」体験記:アイヌ文化の深い魅力と知識の旅

北海道白老町の「ウポポイ (民族共生象徴空間)」をご存知ですか?
ウポポイは、2020年にオープンした、アイヌ文化の復興・創造等のナショナルセンターです。

このたびプレスツアーに参加させていただき、敷地面積は東京ドーム2個分、ポロト湖のほとりの大自然に抱かれた施設で、アイヌ民族の文化や世界観を学んできました。

森に迷い込んだようないざないの回廊から、いざウポポイ!

ウポポイに到着し、まずはエントランスの「いざないの回廊」へ。コンクリートに影絵のように描かれた、北海道の自然と動物は、幻想的かつアイコニックです。

ぐるぐると迷路のような1本道を進むうちに、日常からウポポイの世界へと誘われていきます。

回廊を抜けると、土産店やレストランなどの飲食店ブース「歓迎の広場」に到着。ここは無料で利用可能です。スイーツカフェ「sweets café ななかまど イレンカ」では、プリンやアップルパイ、ソフトクリームなどを販売していました。名物のクンネチュㇷ゚(カップチーズケーキ)は、1個税込280円からと、価格もお手頃です。

ウポポイへ入場。広大な敷地をかわいい園内バスで移動しよう

ウポポイの入場料は以下となっています。
・大人(一般)税込1,200円
・高校生(一般)税込600円
・中学生以下無料
団体料金や、お得な年間パスポートもあります。

入場ゲートをくぐり、目に飛び込んでくるのは、ポロト湖を囲む自然の美しさ。空が青い! そして広い!

右側にあるのが「国立アイヌ民族博物館」。

国立民族共生公園」内には、さまざまな施設が点在しています。アイヌ民族の伝統芸能を上演する「体験交流ホール」や、弓矢体験をしたり、伝統料理を調理・試食食べたりできる「体験学習館」。

ほかにも、スタッフによる木彫、刺繍の実演を間近で見ることができたり、楽器のワークショップに参加できる「工房」や、復元された茅葺の家屋の中で、民族衣裳を着て写真撮影などができる「伝統的コタン」エリアなどがあります。

▲画像:(公財)アイヌ民族文化財団

施設が広いので、移動には園内バスを利用しました。タイヤがいっぱいついた、かわいい小さなバスに乗り、陽気なムックリ(口琴)の音色をBGMにのんびり景色を楽しめます。

伝統的コタンでアイヌ民族の集落に迷い込んだ気分を味わう

まずは、ウポポイの入口から一番奥にある、伝統的コタン(集落)というアイヌ民族の伝統的な生活空間を体感できるエリアに向かいました。

チセ(家屋)が並び、1本の木をくりぬいた丸木舟や、子熊を飼育するためのプ(檻)などもあり、まるで、アイヌ民族の集落に迷い込んだよう。

室内の見学のほか、アイヌ民族の暮らしや文化について解説するプログラムがあります。一番奥のポンチセでは、衣裳体験「アミㇷ゚」を実施していました。美しい刺繍が施された衣裳は、サイズや柄もさまざま。気に入ったアイヌの装束を纏って記念写真を撮りました。

スタッフ手作り、アイヌ民族のスープ「オハウ」でヒンナ体験

お昼ご飯は「体験学習館」で、アイヌ民族の食文化を体験。

伝統料理であるチェㇷ゚オハウ、塩鮭を寒風で干したあとチセの囲炉裏で燻製したサッチェㇷ゚(干し魚)、シソ科の植物ナギナタコウジュを干して煎じたエント茶を飲みました。

オハウは、アイヌ民族の伝統料理で、魚や野菜を煮込んで作る汁物です。オハウは汁物の意味。今回食したオハウには鮭と山菜、野菜が入っていて、昆布だしをベースに塩と油だけで味付けされたシンプルなスープは、素材そのもののおいしさがしっかり伝わり、想像以上に美味しかったです。

そして、魚の干物サッチェㇷ゚。冬に塩鮭を塩抜きし、寒風にさらして干した後、チセの中の囲炉裏の火と煙でいぶした鮭は、塩辛いけれど旨みとコクがあり、酒の肴にぴったりです。エント茶はハーブティーのような香りの良い飲みやすいお茶でした。チェㇷ゚オハウ、サッチェㇷ゚、エント茶はいずれも施設内でスタッフが手作りしているそう。貴重な食体験ができ大満足です。

アイヌ語を話して、舞踊を見て、弓矢を射て、五感でアイヌ文化を学ぶ

「体験交流ホール」では、重要無形民俗文化財指定の「アイヌ古式舞踊」やムックリ(口琴)の演奏など、伝統芸能を上演します。

半円型のホールで、ユネスコ無形文化遺産にも登録されているアイヌ民族の伝統芸能をじっくり鑑賞できます。唸るように歌い、踊る。実際に体験しないとわからない、荘厳な舞踊に圧倒されました。

ほかにも、弓矢で的を射るプログラム「アㇰシノッ」や、インスタレーションアートでアイヌ語の言葉の発音や意味を体験しながら楽しむ「イタㇰ トマリ」など、読む・見るという受け身な学習だけではなく、体を動かす、言葉にするなど、自発的に遊びの延長で学べます。

工房では、ものづくりの様々な技法について実演と展示を行っています。展示は、鮭の皮で作った靴や、特大の木彫りのくま、アイヌ文様の彫り込まれたトレイなど、興味深いものばかり。

また、製作風景を観覧することができ、実演者との対話も楽しめます。この日はチㇷ゚という、丸木舟船の模型を制作している方からお話を伺うことができました。

楽器演奏体験「はじめてのムックリ」では、アイヌ民族の伝統楽器ムックリ(口琴)の持ち方と鳴らし方、3種類の音の変え方を紹介します。専門の講師から直接指導を受けて、ムックリの独特な音色とリズムを体感し、ムックリをお土産に持ち帰ることができます。参加費は税込1,000円ですが、ムックリを持参の場合は無料になります。

他にも、木彫りのワークショップも開催されており、これらの体験を通じてアイヌ民族の芸術性に触れることが可能です。子供から大人まで楽しめる工夫が随所に見られ、教育的な価値も非常に高いと感じました。

アイヌ文化の理解を深める、国立アイヌ民族博物館

▲画像:(公財)アイヌ民族文化財団

「国立アイヌ民族博物館」では、アイヌ民族の歴史や文化を詳細に学ぶことができます。館内は、修学旅行生とおぼしき制服姿の人たちや、外国人の団体など、多様な人たちで賑わっていました。

展示は多岐に渡り、「私たちのことば」「私たちの世界」「私たちのくらし」「私たちの歴史」「私たちのしごと」「私たちの交流」の6つのテーマに分かれ、言語や生活用品、伝統工芸品から音楽まで、アイヌ民族の生活全般にわたるものが所狭しと並んでいました。

祭具や、衣服などの展示はもちろんのこと、直感的に文化を伝える、ジオラマや、アニメーション、罠の仕組みがわかる探究展示などもありました。わかりやすいなと思ったのが、アイヌ(人間)とカムイ(いわゆる神)の関係を説明するアニメーション。アイヌ民族の精神世界を感じ取ることができます。

樺太アイヌのクマの霊送り儀礼(ヒグマの姿を借りて人間の世界にやってきたカムイを一定期間大切にもてなした後、見送りの宴を行って神々の世界に帰す)での、祭礼のために飾りつけた小熊の再現は、かわいらしく、だからこそ、自然の厳しさや命の大切さがヒシヒシと伝わります。

展示を見たり、感じたりすることで、よりアイヌ文化の理解が深まり、身近に感じることができました。1階にはミュージアムショップも併設されており、お土産にぴったりなお菓子や、工芸品などのグッズも豊富でしたよ。

学んで楽しむ、盛りだくさんの自然と一体化した施設

ウポポイは、自然環境と一体化したアイヌ民族の文化体験を提供しています。
ポロト湖の周辺で景色と空気を味わって、伝統的コタンを散策するだけでも、開放感とともにアイヌ文化を感じることができます。

さらにライトにもディープにも文化を学べる施設が点在し、訪れた人それぞれの知的好奇心のニーズに応えてくれます。

夕方からはチキサニ広場で、イルミネーションのライトアップが実施され、北海道の自然と動物をモチーフにしたオブジェが、影のように浮かび上がる、幻想的な光景を満喫できました。(2024年度は1月13日で終了)

関連リンク

ウポポイ(民族共生象徴空間)公式サイト

(執筆者: 大木奈ハル子)

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