9thアルバム『HAPPY』高橋優インタビュー「“身体も心も免疫力を上げようね”と思っています」
2年3ヶ月ぶりとなる9th Full Album 『HAPPY』をリリースしたシンガーソングライターの高橋優さん。
◆THE FIRST TAKE 「明日はきっといい日になる」
https://www.youtube.com/watch?v=uZ9Ue1I5gmA [リンク]
◆THE FIRST TAKE 「キセキ」
https://www.youtube.com/watch?v=Xb_0lUnanD0 [リンク]
「spotlight」(NHK夜ドラ『褒めるひと褒められるひと』主題歌)、「雪月風花」(NHK Eテレアニメ『ドッグシグナル』オープニングテーマ)、「キセキ」(TBS『news23』エンディングテーマ)、現下の喝采(日本テレビ『Oha!4 NEWS LIVE』テーマソング)他、「オープンワールド(秋田朝日放送『サタナビっ!』テーマソング)など多数のタイアップ曲を収録している本作。
▲高橋優 9th AL 『HAPPY』 初回限定版A
CDのみに収録のBONUS TRACKとして、2023年に発生した秋田県大雨災害の被災地に向けて制作された「はなうた-pray for Akita-」を初音源化。全12曲収録予定。初回限定盤Aには、自身初の47都道府県弾き語りツアー「ONE STROKE SHOW〜一顰一笑〜」茨城公演と2023年に行われた「ReLOVE & RePEACE ~ReUNION 特別編in沖縄~」の2本のライブ映像をBlu-ray(2枚組)に収めたものが付属となります。
本作へのこだわりや詩にこめる想いなど、高橋優さんにお話を伺いました。
――本作は多数のタイアップ曲が収録されており、新曲も追加とボリュームタップリの内容になっていますね。アルバムの中の楽曲の組み立て方はどの様に進めましたか?
とてもありがたいことに、タイアップがあってリリースしていた楽曲が6曲あって、アルバム制作にあたってあと5、6曲は追加したいねという話をスタッフたちとしていました。作る前の段階で、先に『HAPPY』というアルバムタイトルにしたいと提示させてもらいました。僕が主催している「秋田CARAVAN MUSIC FES 2024」というフェスでも「『HAPPY』というアルバムを作ります!」とMCで宣言もしていたので、“HAPPY”にまつわる曲を書いていこう流れでした。
――『HAPPY』というタイトルはずっとつけたいなと思っていたのですか?それともいきなり決まったのでしょうか。
2024年はなんとなく、例年よりHAPPYについて考える機会が多かったかもしれませんね。元旦から色々な事が起きて、「幸せですか?」と尋ねたら、多くの人が「幸せです」と即答出来ない状況にある気がしていて。スマホを見ながら不安になっている人とか意外と多かったり。僕はSNSをたくさん見る方では無いのですが、そんな僕なりにも空気的に感じるものは色々あって。
「幸せですか?」と聞かれたら、皆は何て答えるんだろうということは常々考えていたんですね。それとは別で、ライブをしている瞬間のすごく幸せな時間、リスナーの方々と会えて喋っている瞬間とか、僕にとっての絶対的なHAPPYがあって。多角的な視点でHAPPYについて考えてみたいなと思いました。
――「?」がつけば問いかけになりますし、シンプルでありながら深く考えられる言葉ですよね。
「高橋優が歌うHAPPY」と聞けば、ファンの方は「きっとそのままの意味では無く裏があるんだろうな」と思ってくれると思うんです。でも、割とパブリックイメージというか、高橋優の歌ちょっと聴いたことあります、くらいの方だと、「元気いっぱいの歌なんだろうな」と想像するかなと思うんです。そこに一石投じたい、じゃないですけれど、HAPPYという言葉の間口の広さをお見せしたいなと思いました。受け取り方はみんなそれぞれで良いのですが、「本当にHAPPYで最高!!」みたいなアルバムでは決してない。
15年目に突入するこのタイミングで、「明日はきっといい日になる」など明るい楽曲だけではなくて、こういう曲も歌っていますということを皆さんに知っていただける機会になればいいなという願いも込めています。
――ジャケットのアートワークも様々な受け取り方が出来そうです。
HAPPYだけではない”何か”を感じるデザインですよね。無機質に見えて、でも心のどこかに有機的なものを感じるぐらいが良いなと思って、デビュー当時から僕のアルバムアートワークを担当してくださっている箭内道彦さんチームに相談しました。このぬいぐるみ、どこかで売られているものではなくて、とあるスタッフのお母様が徹夜して作ってくれたんですよ。名前もあって、“ゆうたろう”って言います。
楽曲と一緒で、このデザインも色々な受け取り方をしていただいて自由なのですが、水に濡れている所は、僕の地元である秋田の大雨災害へのメッセージも個人的に入れています。水に濡れることが、どうしても幸せだけでは片付けられない何かを表現していて。濡れていて、破れている部分もあったりするのに「HAPPY」と書いてある。アルバムの楽曲の中に入れ込んだ想いのほんのちょっとのエッセンスでもジャケットに反映されれば良いなと思い、何回もディスカッションしました。
▲高橋優 9th AL 『HAPPY』 初回限定版B
――見る日によっても解釈が変わりそうな素敵なデザインだなあと思って拝見していました。それぞれの楽曲についてもお伺いしますが、一曲目の「明日から戦争が始まるみたいだ」もとても印象強い楽曲ですね。
部屋で別の曲を作っていて、煮詰まった時に、息抜きがてら何にも考えずにバーンって歌ってみようと思ってやっていたら、この曲の原型になるものが録れたんです。「明日から戦争が始まるみたいだ」という言葉を繰り返す曲にしたいなと思い、ノートに「明日から戦争が始まるみたいだ、じゃあどうしたらいいんだろう」とか、「明日から戦争が始まるみたいだ、うわ、やばい怖い」とか何でもいいからたくさん書いたんです。その中で、いいなと思ったものを実際の楽曲に入れています。全部入れたら15番くらいまで曲が続きそうなほど色々な言葉が出てきて。
タイトルには戦争って言葉がありますけど、曲の中に入れている言葉は割と皆の身近なものだらけで。とても悲しいことに戦争が日常になっている方が実際にいて、でも多くの人が「今日と同じ明日がある」って信じて疑わないじゃないですか。僕はあんまりそう信じていなくて。「明日はきっといい日になる」とか歌っているくせに、昨日まで普通に生活していた景色が一変した人をたくさん見てきたので。
――おっしゃるとおり、今日と同じ明日が来るなんて、何の確証もないですものね。
戦争じゃなくても、災害じゃなくても、個人単体で考えても、友達が急に亡くなってしまったとか。今日あるものが明日も全部あるとは限らないのに、今日という幸せの上に寝そべってしまう。嫌なことがあってむかついたりしても、むかつくことが出来る元気があるって恵まれている環境かもしれないよね。そしてそれが今日終わるかもしれない。不吉なことを言っている様で、そう思うと、今飲んでいるこのリンゴジュースも次いつ飲めるのかな?また飲みたいなって幸せを感じるんですよね。
――それこそコロナ禍も、最近は喉元過ぎれば…の状態になっているなと感じていて、コロナ禍が終息していくことはそれはもう喜ばしいことなんですけど、あの時すごく大変だったのになとたまに思い返すんです。
本当にあの一件は一体何だったのかということは、僕もずっと考えている時と考えないようにする時期があって。僕の周りでも命を落とした方だっていますし、僕も3年弱ライブが出来なかった。「大好きな人に会えなくなる」というのは本当に怖い出来事でしたよね。
僕はそういう時に、色々な感情を手繰り寄せて“根底”のことを考えるのですが、「つまりは元気でいればいいんだよね」ってことだと思うんです。「身体も心も免疫力を上げようね」と思っています。
SNSも本来は有益な情報を広めることが出来る便利ツールであって、便利に使えている人の日常は快適なはずなんですよ。でも、その快適さに縛られちゃうと話は変わってくると思う。コロナウィルスのことが怖いのに、コロナ禍で営業しているお店を攻撃してしまうって、全然違う方向に行っちゃっている。そういった時に根底の「元気でいればいいんだ」という考えに立ち帰れたら良いんじゃないかと僕は思っているんですけどね。
――本当にそうですよね。「明日から戦争が始まるみたいだ」を聴いて、月並みな表現になってしまいますが、 「また今度」と言った時に、その今度が来ないかもしれないから、今を大事にしたいと思いました。
本当にそうだと思います。家族がいて友達がいて、元気に生きている自分が当たり前だと思っている所があるじゃないですか。よく「いなくなって存在の大きさに気付く」ということがありますが、いなくなることを想像する力があるとまた変わりそうですよね。周りの人が「今日やけに“ありがとう”って言ってくるな」と思ったら、その人はいなくなることを想像したのかもしれない。「今ここにいてくれることが特別だと気付いた」なんて、告白しあうカップルがいたら可愛いですよね。
――「BRAVE TRAIN」も痺れるワード満載の楽曲となっていますね。
秋田県冬の大型観光キャンペーン「誰と行く?冬の秋田」テーマソングというタイアップの機会をいただいたのですが、この曲を書くきっかけになったのは、SNSで悩んでいる知り合いの子なんです。その方は表に出る仕事をしていて、テレビやラジオでした発言に対して悪く言われることが多くて落ち込んでいました。それで、これは僕の持論なのですが、本当に押し付けるんじゃなくて、僕の持論ですが、自分が新幹線に乗っていて、外からそれを見ている人が何となく自分を見て笑ってきたとするじゃないですか。SNSのコメントってそれくらいのものだと思うんですよ。こちらは目標に向かって進んでいますから。通り過ぎざまに誰かに笑われているということをいちいち気にする必要は無いはずなんです。
一方で新幹線が駅で停車している時に窓辺の近くまで来て、直接攻撃してきたり、指を刺して笑ってきたら、それは確かに恐ろしい。だけど、 同じ新幹線に乗って隣に座ってずっとあなたを誹謗中傷する人は逆にめちゃくちゃ珍しいと思う。
一生会うことがない、もしくはその時だけしか交わることのない人たちが、自分がどこかに進んでいる最中に何かを言ってきたとしても、進む方向は違うし、人生はバラバラですから。僕は人間関係ってほとんどそうだなと思うんですよ。
こんな話を落ち込んでいるその子に話したらえらい納得してくれたことがあって。
――すごく面白い例えですし、めちゃくちゃ分かります。
そんなに納得してもらえるんだったら、曲にもしても良いかなと思ったんです。その話を初めてしたのが多分3、4年前なんで、それくらいから一応構想があったのかもしれないですね。こういう時に自分がめんどくさい人間であって良かったなと思います。一つ一つのことに立ち止まって考えてしまいがちなんです。
――そのおかげで私たちも素晴らしい楽曲に出会えるわけですから、ありがたいです。その他、制作していて特に印象的だったことはありますか?
「HAPPY」というアルバムのタイトルにして最初に作ったのが「BRAVE TRAIN」だった気がしているのですが、「WINDING MIND」はこのアルバムの中核だと思っています。矛盾を受け入れる。矛盾を楽しめたら人は最強になれるという持論があって、例えばテレビのリモコンでスイッチ押したのにつかないとか、違うチャンネルがついちゃった時に 人がとっさに感じる感情って、不安とか恐怖なんですよ。人間関係も一緒で「こんな人だと思わなかった」とか。それを面白がれたら最強だなと。ちょとしたギャップやトラブルも受け入れて楽しめたら、この世の中で恐怖がすごく減ると思うんですよ。
なかなかそうなれないんですけどね。実際には思った通りのチャンネルがついてほしいし。でも考えとして、矛盾を恐れないでいこうぜという気持ちがある。そんな曲を僕が歌ったら説教くさくなると思ったので、何言っているか分からない曲にしちゃえ!と思って僕の母国語である、秋田弁で詩を書きました。
――優さんのおかげで秋田弁が広がっていきそうな、そんな魅力を感じる語感でした。
「秋田県人しか出ない」というポッドキャストがありまして、堀井美香さんがゲストを招いて秋田弁で楽しく語らう番組があるのですが、すごく幸せな気持ちになる番組です。僕が4人目のゲストなのですが、そこで存分に僕の秋田弁を出しています。僕の秋田弁はばあちゃん譲りなので、“ネイティブ秋田弁”を継承しているんですね。「WINDING MIND」はネイティブ秋田弁ソングなんですよ。どこで秋田弁の曲を出すのかということを毎回考えていて、秋田弁で歌うと特別な空気にもなりますし、2月からツアーを回らせていただきますが、そのセットリストでも良い場所にこの曲が来るんじゃないかと思います。
――ライブでもすごく盛り上がりそうです!
僕がさっき言った矛盾がどうのみたいな想いに気付く人はおそらく1000人聞いて1人もいない可能性があるのですが「ドンドンドン」って皆で楽しめたらそれが一番なので。バラードいっぱいのライブって、あんまりしたくなくて。疲れるじゃないですか。ドンドン楽しく歌うライブが僕は好きです。その中で、このアルバムでいう「キセキ」や「かくれんぼ」みたいに、出来るべくして出来たバラードたちが存在しているので、1曲1曲大事に、しっかり聴いてもらえるところにセットリストとして組んで届けたいなと思っています。
――15周年に突入しますが、今年もライブやフェスからラジオまで、たくさんの優さんの活動を拝見出来そうですね。
ずっとスタンスは変えずにやっていきたいですね。15年経ったから丸くなる、とか落ち着くそぶりは全くなく、すごく元気なので。朝ジョギングしていますし、玄米食べているし。40歳男性の中での免疫力数値みたいものを測ったら、僕ってすごく高いと思います。とにかく健康になってやろうと思っているので、ぜひ皆さんともたくさんお会いしたいです。
――健康一番ですよね。今日お話させていただいて、たくさんのパワーをいただきました!本当に素敵なお話をありがとうございました。
高橋優
2010年7月21日のメジャーデビュー以降、これまでに31枚のシングル(デジタルリリース)と8枚のアルバム、5枚の映像作品を発表してきた。2022年10月5日には8枚目のアルバム『ReLOVE&RePEACE』発売。また、2022年9月にはコロナ禍で休止していた地元・秋田の市町村を巡る主催フェス「秋田 CARAVAN MUSIC FES」を3年ぶりに再開。2022年北秋田市、2023年には潟上市を巡り、今年は9月21日-22日の2日間に亘り能代市・二ツ井町で開催。延べ16,000人を動員し、秋田のフェスとしてしっかりと定着している。2025年1月22日に9枚目となるアルバム『HAPPY』をリリース。
https://www.takahashiyu.com [リンク]
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