【オフィシャルレポ】Tyrkouaz、初の自主対バン企画〈MULTI PLAY〉開催
【以下、オフィシャルレポート】
今年 8月にはSONICMANIA2024に新人ながら出演し、12月には自身初の全国流通盤アルバム『turquoise engine +』(読み:ターコイズ・エンジン・プラス)が全国のタワーレコードスタッフによるセレクション “タワレコメン”に選出され注目を浴びている中、Tyrkouazが自身初となる自主企画イベント「MULTI PLAY」を東京・代官山SPACE ODDで開催した。
同イベントは、Tyrkouazがリスペクトする同世代のバンド4組に声を掛けて実現した対バンイベントで 東京公演にはSATOHとTOROが、12月20日(金)の大阪Yogibo HOLY MOUNTAINには 板歯目、Bajaが出演。「FUJI ROCK FESTIVAL ’24」の「ROOKIE A GO-GO」、「SUMMER SONIC 2024」の「出れんの!?サマソニ!?」枠としてステージに立ち、そして会場を大いに沸かせた次世代の音楽シーンを担う最重要アーティストが一堂に会したのだ。当然ながら、新たなムーブメントの始まりを予感させる刺激的な夜となった。
イベントはメンバー全員が99年生まれの4人組バンドTOROからスタート。UKロックからの影響を色濃く感じさせる、骨太で重心低めのどっしりとしたサウンドでフロアを揺らした。ここ10数年、行儀のいいロックが国内では主流になっているが、このバンドの場合、ボーカルにいい具合に隠しきれない悪童感みたいなものがあってニヤリとさせられる。ちなみに、彼らももうすぐレコーディングが終わるという。音源の発表を楽しみに待ちたい。
続くSATOHは、Tyrkouazと同じく2人組ユニット。今日はサポートメンバーを入れて5人でのパフォーマンスとなった。まさかのELLEGARDEN「ジターバグ」のカバーで幕を開けたライブだが、コール&レスポンスを煽るも観客の声が小さく、「お客さん、恥ずかしいみたいだから照明消してください」と真っ暗ななかで再度コール&レスポンスを促し、「TOKYO FOREVER」へ。ボーカルLinna Figgは終始、フロアとつながろうと試みていて、それがいいグルーヴを生み出していた。ハイパーポップ的な要素を感じさせつつも、J-POPやロックを独自のレシピで調合していて、ひと言では言い表せない独自の世界観を展開していた。要注目のデュオだ。
特徴的な2組のパフォーマンスを経て登場したのは、この日の主催者Tyrkouaz。ドラムセットが前方上手側、ギターが下手側にセッティングされるというTyrkouazではすっかりおなじみのスタイル。これが視覚的にも楽しいのだ。フロアを見るとさっきよりも観客の数が増えていることに気付いた。
今年の夏、<SONICMANIA 2024>に出演して以降、Tyrkouazは徐々にその名を音楽シーンに知らしめつつある。まず、初の全国流通盤となるフルアルバム『turquoise engine +』をリリース。この作品は耳の肥えたスタッフが揃うタワーレコードがネクストブレイクが期待されると太鼓判を押す<タワレコメン>に選出され、さらに注目を集めている。ライブはそんなアルバムのオープニングナンバー「LOADING」で始まった。rent(Dr/Cho)が刻むビートが圧力のある音の面でフロアを快楽へと導き、souta(Vo/Gt)による過剰にディストーションがかかった特徴的でドラッギーなボーカルが耳をつんざく。さらに、soutaがエフェクト的にかき鳴らすギターも気持ちいい。ソニマニのオープニングでもフロアの心をガッチリ掴んだ「Windy Surf」がここでもオーディエンスの熱量を高める。
Tyrkouazの音楽を人にわかりやすく伝えるために使うフレーズは「人力ドラムンベース」だが、2人は徐々にロックバンドとしての骨太さも手に入れつつあるように見える。かといって、じゃあTyrkouazはロックバンドなのかと問われるとそうとも言い切れず、彼らは独自のブレンドで独自の世界を実現しようとしている。フロアを見ると、体を揺らして踊っている者もいれば、拳を突き上げてヘドバンをしている者もいれば、エアドラムを叩いている者もいる。どの楽しみ方も正解だ。これが新しい道を切り開こうしているバンドのライブ。皆、思い思いに楽しめばいいのだ。
短めのMCを挟み、「a byway tune」へと移る。歌メロはやさしいが、相変わらずサウンドは扇情的。それでも足らんとばかりにsoutaがお立ち台にあがって、フロアを煽る。
初っ端から全力疾走を続けてきた2人は、「Snow wave」でグッとテンポを落とす。爆音の中でつい見落としてしまいそうになるが、実は彼らの曲は歌メロもよかったりする。これがTyrkouazの隠れた強み。続く「Mellow Night Bass」でも、ジャパニーズロックからの影響を感じさせるメロウなメロディを聴かせた。新曲「Emit Light」は、Tyrkouazが得意とする中近東風メロディを駆使したパワフルな楽曲。今後、サビでフロアの大合唱が起こる様子が容易に思い浮かぶ。
さあ、エンディングが近づいてきた。「DEEP JUNGLE」ではsoutaがハンドマイクで再びお立ち台にあがり、もっともっとと貪欲にフロアを煽る。彼らが放つエネルギーにフロアも必死で食らいつく。音源では繊細かつプリミティブなビートが聴きどころではあるが、ここではTyrkouazの面としての強さで圧倒する。これはいい意味で2人の若さのなせる技。つまり、無軌道に突っ走る今のTyrkouazに出せない勢いだ。ラストの「Crush Core」でもそれは変わらない。<ソニマニ>での衝撃的なデビュー時にも話題となったこの曲でもエネルギーを大放出。ギターの不穏なカッティングからトライバルなジャングルビートと骨太なロックの融合へと展開していく様は圧巻で、いつも拳に力が入る。これは現在のTyrkouazが最も強さを発揮する瞬間だと思う。前述の<ソニマニ>での熱演の模様はYouTubeで公開されていて、すでに約10万回再生を記録している。この曲がもつエネルギーは画面越しにも伝わるのである。フロアを大いに沸かせた2人は、いったんステージをあとにする。
アンコールの拍手に迎えられた2人は、各地で高い評価を受けているアルバムについて話した。『turquoise engine +』はドラムンベースやゲーム音楽といった2人のルーツを詰め込んだ作品だが、自分たちの周りにドラムンベースをやっているバンドがいてそこから影響を受けたわけではなく、あくまでも2人の頭の中にあった妄想を具現化したものだという。それが全国流通盤という物となって全国のリスナーのもとに届いたことがうれしい、と話した。たどたどしくて、決して流暢だとはいえないMCではあったが、だからこそ彼らが胸に秘めている熱さ、人間味が伝わった。どんどん大きい景色を見ていきたいと意気込みを語る姿が頼もしかった。アンコールで響かせたのは「Future Grooves」。未来へと羽ばたく第一歩として鼓膜を震わせた重低音は、希望と歓喜に満ちていた。
この日のイベントはTyrkouazだけではなく、イベントとしてとてもいい内容だったと思う。3組のロックバンドによる対バンイベントであるのと同時に、クラブイベントとしても成立していた。ロック系でこういったクロスオーバーが起こることは近年あまりないように思う。自分も仕事でなければビールを片手にずっと踊っていたかった。Tyrkouaz が話していたように、TOROもSATOHも時代やシーンをぶっ飛ばしていくようなバンドだ。この世代の若者たちが音楽シーンの新たな潮流を作り出すのかと思うとワクワクする。貴重な場に居合わすことができた幸運に感謝したい。
(文 : 阿刀“DA”大志)
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