最大で160万円補助の「子育てグリーン住宅支援事業」が求める高い省エネ住宅とは?
令和6年度補正予算案が閣議決定した。政府は予算案に、これまでより省エネ性能が高い住宅の普及を促すために、新築住宅で最大160万円の補助金を出す「子育てグリーン住宅支援事業」を盛り込んだ。住宅の取得やリフォームを検討している人には、要チェックの制度だろう。
【今週の住活トピック】
省エネ住宅の新築、住宅の省エネリフォームを支援する「子育てグリーン住宅支援事業」を創設/国土交通省
「子育てエコホーム支援事業」は2024年で終了
政府は、2050年カーボンニュートラル宣言以降、住宅の省エネ化を推進している。省エネ性の高い住宅に対して、「こどもみらい住宅支援事業」→「こどもエコすまい支援事業」→「子育てエコホーム支援事業」と毎年のように補助金を出す支援事業を実施してきた。
現在利用できる「子育てエコホーム支援事業」は原則として2024年末で終了する(予算上限に達した段階で終了。12月10日時点で新築は85%、リフォームは84%に到達)。その後継の支援事業となるのが、今回閣議決定した「子育てグリーン住宅支援事業」で、省エネ性のより高い新築やリフォームに手厚くなっているのが特徴だ。
最大160万円の補助は「GX志向型住宅」が対象
子育てグリーン住宅支援事業で最大補助額となるのは、「GX志向型住宅」だ。これは環境省が行う補助事業で、子育て世帯等に限定されず、「すべての世帯」が「新築住宅を建てたり買ったりした」場合に対象となる。
環境省のサイトによると、GX志向型住宅とは、ZEH(ゼッチ)水準を大きく上回る省エネ性能をもつ「脱炭素志向型住宅」とある。GXは、グリーントランスフォーメーションの略で、温室効果ガスを発生させる化石燃料から太陽光発電、風力発電などのクリーンエネルギー中心の社会への転換を目指すことなので、基本的に太陽光発電などの再生可能エネルギー設備も搭載する必要がある。
具体的には、次の[1]と[2]のすべての条件を満たすものとなる。
■GX志向型住宅(補助額160万円/戸)
[1]断熱等性能等級「6以上」
[2]一次エネルギー消費量の削減率
戸建住宅一般寒冷地等都市部狭小地等再エネ除く35%以上再エネ含む100%以上75%以上-共同住宅3階建以下4・5階建6階建以上再エネ除く35%以上再エネ含む75%以上50%以上-
これまで最も高い省エネ性能はZEH水準だったが、ZEH水準では、住宅性能表示基準に基づく「断熱等性能等級5」と「一次エネルギー消費量等級6」を満たすことが求められた。断熱等性能については、GX志向型では「断熱等性能等級6」と一段上がるので、より省エネ性能の高い断熱窓や断熱材、高効率な給湯器などが必要となる。
また、ZEH水準の「一次エネルギー消費量等級6」は、再生可能エネルギーを除いた基準一次エネルギー消費量から20%以上の削減が求められるもの。GX志向型では、まず、再エネを除いて35%以上の削減が求められるので、かなり上がることになる。なおかつ、太陽光発電等の再エネ設備を設置して所定の削減率を達成する必要がある。一般の一戸建ての場合は削減率100%以上となるので、完全なネット・ゼロ・エネルギーハウス(エネルギー収支がゼロ以下の住宅)ということになる。
ただし、都市部狭小地域の一戸建てと6階以上のマンションは、再エネ設備の設置が必須ではない。これは土地の狭い3階建ての一戸建てなどでは屋根が小さいこと、6階以上のマンションでは屋根の面積に対する住戸数が多いことなどから、効果的な太陽光設備による発電が難しいからだろう。
ZEH水準の新築住宅と既存住宅の省エネリフォームに補助
「子育てグリーン住宅支援事業」のその他の補助制度は、国土交通省の子育てエコホーム支援事業と類似している内容となっているが、新築で補助額が下がったり、省エネリフォームの条件が高まったりしている。
まず、新築住宅では、子育て世帯等(「子育て世帯」18歳未満の子どもがいる世帯、または「若者夫婦世帯」いずれかが39歳以下の夫婦世帯)に対象が限定され、建て替えを伴うか否かで補助額が異なる。
■住宅の新築(子育て世帯等が対象で、注文住宅・分譲住宅など)
長期優良住宅建替前住宅等の除却を行う場合100万円/戸上記以外の場合80万円/戸ZEH水準住宅建替前住宅等の除却を行う場合60万円/戸上記以外の場合40万円/戸※長期優良住宅は、省エネ性能ではZEH水準を満たし、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅のこと
次に、既存住宅のリフォームでは、省エネリフォームの工事を複数行う必要があり、2種か3種かで補助額の上限が変わる。なお、リフォーム工事の内容ごとに定められた補助額があり、実施した工事の補助額を加算していく形となる。必須工事と併せて行う、子育て対応改修やバリアフリー改修なども対象となる。
■既存住宅のリフォーム
メニュー補助要件補助額Sタイプ必須工事※3種の全てを実施上限:60万円/戸Aタイプ必須工事※3種のうち、いずれか2種を実施上限:40万円/戸※開口部の断熱改修、躯体の断熱改修、エコ住宅設備の設置
また、買取再販事業者が扱う住宅、いわゆるリノベーション住宅として販売されるものも対象になるので、売主の事業者に確認したい。
3省(国交省・環境省・経産省)連携でさらに対象が拡大
子育てエコホーム支援事業に引き続いて、「子育てグリーン住宅支援事業」でも3省連携の取り組みが継続する。なお、賃貸住宅に関する補助については、ここでは説明を省く。
まず、既存住宅の省エネリフォームでは、次の補助事業が利用できる。
●高断熱窓の設置(先進的窓リノベ2025事業:環境省) 最大200万円/戸(補助率1/2相当等)
●高効率給湯器の設置(給湯省エネ2025事業:経済産業省) 10万円/台、13万円/台、20万円/台(該当する給湯器による)
また、新築住宅では、「家庭用蓄電池」などを設置する場合の補助事業(DRに対応したリソース導入拡大支援事業(仮)経産省)との併用も予定されている。
注意点は、原則として、補正予算案の閣議決定日である2024年11月22日以降に工事に着手したものが対象で、住宅の施工や販売、リフォーム工事を行う事業者が所定の登録事業者であることが必要。また、記載したほかにも、細かい条件があるので、事業者によく確認してほしい。
なお、「子育てグリーン住宅支援事業」は、これからの国会で「予算案が成立する」ことが前提になる。まだ正式に決定しているわけではないが、すでに対象となる期間になっているので、新築住宅を建てる・買う、あるいは自宅や購入する中古住宅をリフォームする予定のある人は、しっかり情報を入手して、今のうちから検討しておくとよいだろう。
●関連サイト
国土交通省「省エネ住宅の新築、住宅の省エネリフォームを支援する「子育てグリーン住宅支援事業」を創設します」
国土交通省「子育てグリーン住宅支援事業について」
~まだ見ぬ暮らしをみつけよう~。 SUUMOジャーナルは、住まい・暮らしに関する記事&ニュースサイトです。家を買う・借りる・リフォームに関する最新トレンドや、生活を快適にするコツ、調査・ランキング情報、住まい実例、これからの暮らしのヒントなどをお届けします。
ウェブサイト: http://suumo.jp/journal/
TwitterID: suumo_journal
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。