【ライヴ・レポート】ナリタジュンヤ、『wind e.p.』リリパ開催──盟友たちと祝った特別な夜

【ライヴ・レポート】ナリタジュンヤ、『wind e.p.』リリパ開催──盟友たちと祝った特別な夜

シンガー・ソングライターのナリタジュンヤが、自身初となるEP『wind e.p.』を2024年11月13日(水)にリリースした。これまでのアコースティックなサウンドと、1990年代UKロックの音像を感じさせる力強いバンド・サウンドのコントラストに心揺さぶれられる一枚だ。本作のリリース・パーティーが、12月2日(月)渋谷eggmanにて開催された。バンド・セットのナリタジュンヤに加え、兼ねてよりナリタと親交のある安次嶺希和子とUEBOがスペシャル・ゲストとして出演し、それぞれ持ち寄った個性がお互いを引き立て合う、特別な一夜となった。ここではそのリリース・パーティの模様をお届けする。

定刻を迎え、颯爽とステージに現れたのは安次嶺希和子。言葉ないままマイクを取り歌い出すやいなや、力強く艶やかな歌声で一気にオーディエンスの心を鷲掴みにしていく。身体をしならせ全身で歌い上げる姿は、安次嶺が音楽そのものになっているかのようだ。2曲目からはゲスト・キーボーディストとしてSWING-Oを迎え、並外れた表現力を持つ安次嶺の歌声にSWING-Oが応えていく。歌と鍵盤だけとは思えない贅沢な音楽空間だ。ラストは歌劇『カルメン』の名曲、“ハバネラ”をダンサブルなアレンジでカヴァーした“Prism of Habanera”。最後まで安次嶺の独創的な世界観を作り上げていた。

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続いてはUEBOのステージ。この日UEBOが身に纏っていたビビットな色合いが目をひく花柄のシャツは、4年前ナリタと知り合った頃によく着ていたものとのこと。UEBOなりの、茶目っ気ある粋な計らいがナリタとの親交の深さを感じさせた。バンド・セットでのUEBOは、“Juvenile”“ハッピーエンド”と、開放的なバンド・サウンドで会場の雰囲気を一気にお祝いムードに染め上げていく。自然と身体を揺らしていたオーディエンスの姿も印象的だった。途中、安次嶺希和子とのコラボ曲“Good Night”を披露し、この日ならではの特別なステージでパーティーに花を添えた。

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そしてトリを飾るのはこの日の主役、ナリタジュンヤだ。「今日は全員で盛り上がりましょう!」と声高らかに呼びかけ披露したのは、“Love, All You Need Is Love”。軽い足取りで散歩しているようなリズムに乗って、会場をひだまりのようなあたたかいムードで満たしていく。続く“Horizon”は丁寧な情景描写を見せるスローなナンバー。ナリタの甘く切ない歌声がより一層際立ち、沈みゆく夕日が浮かぶ情景に心洗われるような心地だ。

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郷愁感じるムードのまま、“Memories”へ。弾き語りをベースとした音数絞った編成で水彩画を描くように丁寧に音を重ね、観客も思わずじっと聴き入る。このとき、うららかな昼下がりにカーテンがそよぐ窓辺の情景が頭に浮かび、ハッとした。これは自分の記憶なのか、はたまた楽曲から浮かび上がったイメージなのか、わからない。わからないけれど、たまらなく懐かしいのだ。ナリタは誰もが“知っている”、もしくは“知っているかもしれない”と思わせるような記憶の断片を掬いあげる表現に非常に長けている。ナリタの楽曲に喚起され、リスナーそれぞれが自分の頭の奥に丸めて仕舞い込んだ記憶を広げなおしてみる。楽曲を通してナリタジュンヤと、または自分自身と対話するように。そのやりとりによって心のある一部が癒えた心地を覚えた。

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ここからナリタは「楽しい曲をやりますよ!」と、“Just Drive”でギアを上げていく。続く“Wind”では、“Memories”でカーテンを揺らした風とは少し異なる、小高い丘で全身を包み込むような爽やかな風を吹かせた。そう、今作の『wind e.p.』のタイトルにある通り、この日のステージでは実に様々な風が吹いていた。時に忘れかけていた記憶を運んできてくれて、時に優しく包みこみ、時に進路を正し背中を後押ししてくれる、風。

そしてこの日のハイライトのひとつとして挙げられるのは、先行シングル・カットもされた“Hometown”だろう。自身の音楽原体験となったoasisの影響を感じさせる、バンドの初期衝動的な喜びが表れた爽快なナンバーだ。この日のナリタバンドのサポートを務めたワタナベチヒロ(Dr.)、ヤノアツシ(Ba.)、そしてナリタ含めた4人のアンサンブルによって、音源よりも高い湿度と熱量を抱えたサウンドがリスナーのもとへまっすぐと届けられていた。そして「送る側、受け取る側を超えて、みなさんの心に共鳴するように歌うので、心をかっ開いて聴いてください!」と、熱量そのままに披露したのは“Silver Sunlight”。スペシャル・ゲストにNamae(TYINPETS)を迎え、壮大なバンド・サウンドでまばゆい光とともに本編を締め括った。

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ナリタはこの日のMCで、今作の『wind e.p.』に込めた想いをこう語った。「僕は理由もなく虚しかったり漠然とした不安に駆られたときに、音楽を聴くことで気持ちを代弁してもらって何度も救われてきたんです。見える景色が変わって、世界の素晴らしさや日常の尊さを確認することができて。今回の『wind e.p.』は、聴いてくれる皆さんの生活のなかでそういったものになれるように作りました。皆さんの心の中にあるものに触れるような曲をこれからも書き続けていきます。」と。この日、ナリタの言葉通りに何度も心の内側に彼の曲が入り込んできた。些細な心の機微を拾い上げるナリタの感受性とそれをアウトプットする表現力があってのことだが、聴き手とそういったやりとりができたのは、いま、ナリタ自身が外に向かって開けているからだろう。じわりと熱を帯びた銀色の光と心地よい風を味方に、ナリタジュンヤはこれからも歩みを続けていく。

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取材・文:石川幸穂
PHOTO:増田彩来

ライヴ情報

ナリタジュンヤ 1st EP “wind e.p.” Release Party
2024年12月2日(月)渋谷eggman
■出演
ナリタジュンヤ (Band Set)
UEBO (Band Set)
安次嶺希和子

フォトギャラリー

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インタビュー

ナリタジュンヤがはじめて語った、自身の「原点」──「Hometown」で描いた、生まれ育った街の情景
https://ototoy.jp/feature/2024082101

アーティスト情報

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