建築費高騰のいま、注文住宅を建てた人の実態は?注文住宅で平屋が増加中!

建築費高騰のいま、注文住宅を建てた人の実態は?注文住宅で平屋が増加中!

リクルートの『SUUMOリサーチセンター』が注文住宅の「建築者」(過去1年以内に注文住宅を建築した人)と「検討者」(今後2年以内に注文住宅の建築を検討している人)に調査を実施した。調査結果の中でも、「平屋」に関する結果に注目して見ていこう。

【今週の住活トピック】
「2024年 注文住宅動向・トレンド調査」を発表/リクルート

注文住宅の約8割がフルオーダー、2割がセミオーダー

リクルートが2024年7~8月に実施した調査結果によると、注文住宅を建築した人(新築・建て替え含む)の建築費用の全国平均は3415万円、土地代の全国平均は2331万円で、いずれも増加傾向が続いている。なかでも、首都圏では、建築費用の平均が3943万円、土地代の平均が3148万円で、首都圏以外よりも上昇幅が大きいという。

注目したいのは、「フルオーダー」か「セミオーダー」かで、建築費用が異なることだ。「フルオーダー」とは、注文住宅の特徴でもある自由設計のこと。つまり、ゼロから住宅の設計をプランニングすることだ。一方、「セミオーダー」とは、あらかじめ決まったパターンの中から選んでプラニングすること。

建築費用を見ると、「フルオーダー」が平均3515万円であるのに対して、「セミオーダー」は平均2984万円と500万円以上の開きがある。なお、土地代についてはあまり差が見られなかった。

また、「フルオーダー」で建てたのは81.3%、「セミオーダー」で建てたのは18.7%だった。セミオーダーで建てた人の属性では、年収600万円未満の割合(24.0%)が高くなっている。

土地代を除く建築費用(オーダータイプ別)(出典:リクルート「2024年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

土地代を除く建築費用(オーダータイプ別)(出典:リクルート「2024年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

ちなみに、耐震性や耐久性、省エネルギー性などの建物の基本性能に関することは、セミオーダーとフルオーダーで大きな差は見られないが、設計の自由度や外観デザインなどでは、フルオーダーのほうが重視する比率が高かったという。

平屋建てを選ぶ比率が年々増加。その実態とは?

さて、平屋についての項目を見ていこう。

注文住宅を建築した人の建物の階数は、最多が「2階建て」の70.3%だが、「平屋建て」が年々増加して、2024年は22.1%になった。ただし、平屋建ては九州と沖縄(47.1%)・北関東(39.3%)で多く、首都圏や近畿圏では10%前後で横ばいだという。これは、広い土地を確保しやすいエリアなら、平屋でも十分な床面積があることと関係がありそうだ。

新居の階数(出典:リクルート「2024年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

新居の階数(出典:リクルート「2024年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

平屋建てを建てた人が2020年より大きく増加したのは、20代(16.1%→24.6%)と60代以上(18.9%→34.9%)だ。60代以上で増加しているのは、「平屋建てを選んだ理由」の最多が「老後も暮らしやすいと思ったから」(66.8%)だったことに関係があるだろう。20代での増加は、「家事がしやすいから」(36.1%)「家族とつながりやすいから」(19.9%)といった理由が関係しているのかもしれない。

なお、3位の「地震などの災害に強い」というのは、建物は高いほど揺れの影響を大きく受けるが、平屋なら2階部分がないだけ軽くなり、低くなるので、揺れの影響が小さくなる。さらに、建物の形状が四角形などシンプルになる点も、耐震性を確保しやすいことにつながるといった背景がある。

平屋建てを選んだ理由(平屋建て建築者)(出典:リクルート「2024年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

平屋建てを選んだ理由(平屋建て建築者)(出典:リクルート「2024年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

想像したよりも「建築費が抑えられるから」という理由は11.6%と少ない印象を受けた。実際に「平屋建て」の建築費用を見ると、全国平均で3034万円。「2階建て」の3524万円と比べると、490万円ほどの開きになる。これは、1500万円未満の割合が、2階建ての6.0%に対して平屋建ては15.3%になるなど、低価格帯の割合が大きいことなどによるようだ。

低価格で平屋が建てられるのは、建物の延べ床面積10坪(約33平方メートル)未満が6.2%、10坪~20坪(約66平方メートル)が5.3%と、コンパクトな平屋が比較的多いことも関係しているのだろう。

平屋建ての建築費用(土地代を除く)と延べ床面積(出典:リクルート「2024年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

平屋建ての建築費用(土地代を除く)と延べ床面積(出典:リクルート「2024年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

平屋の延べ床面積の全国平均は43坪(約142平方メートル)だが、その内訳を見ると、30坪(約99平方メートル)未満の割合が36.4%である一方、50坪(約165平方メートル)以上の割合も22.2%あり、コンパクトか、かなり広いかの二極化しているというのが実態のようだ。

「平屋回帰」が2023年の住まいのトレンドワードだった

さて、SUUMOリサーチセンターが発表した、2023年のトレンド予測のキーワードは「平屋回帰」だった。(ちなみに、2024年のトレンドワードは「断熱新時代」)。

SUUMOリサーチセンター研究員の笠松美香さんによると、「自身の変化に合わせてその都度、最適な住まいを選ぶ『都度最適』」の時代になるからだという。つまり、かつては生涯住む前提で部屋数や収納が多い一戸建てを選んでいたが、今は単身や夫婦二人世帯、ひとり親世帯、高齢者世帯など世帯が多様化し、家族の状況の変化も激しくなり、生涯の暮らしを想定することが難しくなっている。これが「都度最適」な住まい選びにつながり、平屋が選ばれる時代になるということだった。

2024年の調査結果で、平屋を選ぶ人が少しずつ増えていることについて、笠松さんに聞いた。
「国土交通省の着工統計を見ても、平屋化が進んでいることがうかがえます。近年は、モノの収納場所としての住宅の役割も小さくなっています。電子書籍やコンテンツのサブスク、フリマアプリなどの活用で、モノを持たなくなっているからです。さらに、平屋は一筆書きのような生活動線となり、目が届きやすくモノの管理がしやすくなること、高齢になっても最低限の動きで生活できることなど、合理的な面もあります。また、最近のキャンプなどのアウトドアブームが追い風となって、家を屋外空間である庭やデッキとうまく調和させた自然体な暮らしに憧れを持ち、平屋を選ぶ人も増えていると感じています。」

住まい選びの常識は崩れつつある。最初はマンション、最後に一戸建て神話は消え、マンションより低額な一戸建てを最初に買う人も増えている。同様に、一戸建ては2階建てという常識も、都心部の狭小3階建てや高齢者が住む平屋、コンパクトな平屋など、さまざまな住まいが選ばれるように変わっている。暮らし方はそれぞれなので、多様な住まい選びをするのが今の常識なのだろう。

●関連サイト
リクルート「2024年注文住宅動向・トレンド調査」

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