DEZERT、『絶対的オカルト週刊誌』リリース記念ライブのオフィシャルレポート到着

DEZERT、『絶対的オカルト週刊誌』リリース記念ライブのオフィシャルレポート到着

 DEZERTが、2024年9月23日に【Let’s Go Budokan?! -みんなで武道館へダイナマイ!!-】を東京・品川インターシティホールで開催した。

 本公演は、同月25日リリースの傑作音源集『絶対的オカルト週刊誌』の発売を記念して行なわれた、【心臓編】【脳みそ編】の2部制ワンマンライブ。アルバムの収録曲を全て披露し、さらに同内容のCDも付いてくるという、大盤振る舞いの内容となっていた。以下、両部のオフィシャルレポートをお届けする。

 タイトルにもある通り、本公演は約3ヶ月後に迫る日本武道館でのワンマン【DEZERT SPECIAL ONEMAN LIVE at NIPPON BUDOKAN「君の心臓を触る」】へ向けて、DEZERTとファンが改めて気持ちを高め合う、いわば決起集会のようなもの。さらに言えば、DEZERTがメジャーデビューと武道館ワンマンの開催を発表したのも、ちょうど一年前の9月23日であった。こういった状況から、かなり気合いの入ったライブが展開されるのではと予想していたが、幕が開いてみれば、そこには肩ひじ張らず自由奔放に音楽を楽しみ、13年のキャリアと共に積み重ねてきた一曲一曲を真摯に届けようとする、いつもの4人がいた。

 まずは、真昼間の14時からスタートした【心臓編】。SEはなく、気合いの入った歓声とメンバーコールに迎えられた4人は、白を基調としたパンキッシュな衣装で登場。普段とは違う雰囲気のメンバーに期待感の高まる中、「胃潰瘍とルソーの錯覚」「「絶蘭」」と、多様なDEZERTの楽曲の中でもドロドロとした質感の楽曲を立て続けに投下し、鮮烈なオープニングを飾った。オールバックで決めた千秋(Vo)は、マイクスタンドの前に仁王立ちし、獣のような鋭い視線でフロアを射抜く。

 ここで初披露の新曲「心臓に吠える」を投下。ヘヴィなリズムを繰り出し続けていたSORA(Dr)が、両手のスティックを投げ捨てて豪快に煽ると、フロアの熱量はさらに一段階上がる。真っ赤なライトに照らされながら、<鼓動が彷徨う眩しいステージで 性懲りなく叫んで 産み落とす僕の遺書は 今 痛いほどに此処で生きたいと叫んだ>と、思いをぶちまけるように咆哮する千秋。Miyako(G)とSacchan(B)の高ぶる感情をそのまま体現したような轟音も重なり、オーディエンスの心の奥を切なく掻き乱す。フロアでは、夢中でヘッドバンギングをしたり、力強く拳を突き上げたり、ただ真っすぐにステージを見つめていたりと、観客が思い思いのやり方で、この鮮烈な新曲を受け止めていた。最後に千秋が<似た鼓動が重なって 僕等を引き連れて吠えろ>と半ば絶叫するように放った言葉は、そんな彼らへ向けた切実な祈りのようにも感じられた。

 キュートで危険な雰囲気漂う「ミスターショットガンガール」で一体感を作り上げたあとは、雰囲気を一変させ、ミディアムバラードの名曲「「遭難」」を披露。Miyakoのエモーショナルなギターソロが、この曲の持つ切なさを最大まで増幅させる。Miyakoと千秋が二人で上手にしゃがみこみ、至近距離でアイコンタクトを交わしながら始めたのは、「蝶々」。千秋の「天使になろうぜ!」という煽りをきっかけに、観客が一斉に片手を高く掲げて飛び跳ねる。その美しい光景を見つめながら、<ありのまま生きたいのは誰だってそうなんだ>というフレーズを、自分の胸に手を当て、フロアを指さしながら歌う千秋。続く「遮光事実」でも、胸を強く叩き、フロアに手を伸ばす仕草を何度も繰り返していたのは、自身の思いが届いてほしいという強い気持ちの表れなのだろうか。

 ここで一旦暗転したのち、「Call of Rescue」へ。上半身の力を抜いてゆらゆらと不気味に揺れ動く千秋の白い衣装には、気づけば鮮やかな血糊がついて官能的な姿に。Miyakoの奏でる不穏なフレーズをきっかけに始まった「「誤解」」では、地を這うようなSacchanの低音と、爆音で殴るような迫力満点のSORAのドラムが完全に暗闇と化したフロアに響く。真っ赤なライトが薄暗いステージを照らすと、メンバーの影がステージ後方の赤い舞台幕に大きく映し出され、恐怖すら感じるヒリついた緊迫感が生まれていた。

 ここからライブは自由奔放なムードに。キックに合わせて拳を突き上げるフロアに、「ちょっとお上品すぎない? DEZERTは池袋BlackHole出身なんで、どす黒くて気合いの入った声が聴きてぇんだ」と煽るSORAは、手数の多いドラムソロを破竹の勢いで投下。千秋から“ベースソロじゃないベース”とリクエストされたSacchanは、ごく小さな音から華麗なスラップという斬新なプレイで翻弄。Miyakoは、千秋からマイクを奪い取り、「へんたーい、へんたーい」と自ら歌い出す。ギターソロでは激しいフレーズを掻き鳴らした後、Miyakoのミラー加工されたギターのボディで身だしなみを整える千秋を尻目に、なんと歯ギターまで披露し、観客の度肝を抜いた。

 そんなやりとりを繰り広げている間にフロアは左右に分かれ、ウォール・オブ・デスの準備も整ったところで、ようやく曲がスタート。疾走感と重厚感を兼ね備えたサウンドに合わせてぶつかり合うフロアは、先ほどSORAが指摘した“お上品”とは正反対に、ライブハウスと見紛うほどの熱気が渦巻く。盛り上がりがピークに達したところで、なぜか千秋が、二人羽織をするような体勢でSacchanの後ろからベースを弾き、元々セットリストにはなかった「包丁の正しい使い方~終息編~」のフレーズを演奏し始める。再びフロアの中心に道ができるが、未だ背後で楽しそうに弾き続けている千秋に、手持無沙汰なSacchanが「そろそろいいかな?」と問いかけ、笑いが起こる場面も。フロア前方はウォール・オブ・デス、後方はサークルモッシュという凶悪な空間を作り上げ、大いに暴れさせた後は、間髪入れずに「「秘密」」を投下。イントロで圧倒的な高揚感が高まる中、「この曲から始まったんだよなぁ、おい!」と千秋が叫ぶと、ドラムセットの前に全員が集結。メンバー同士で向き合いながら、お互いを煽り合うように激しく頭を振る。その熱が伝染するように観客も最高潮の盛り上がりを見せた。

 熱気を帯びたフロアへ、今の思いを素直に語り始める千秋。「前から言ってるけど、いつかCDもなくなると思う。それでも出すのは儲かるからじゃなくて、世話になってきたから。13年やってて、V系の文化を変えようと思ったり、ダイバーとか欲しがってた時期もある。でもお前たちが積み上げた文化もあるわけ。「「秘密」」でも、ある日誰かが座りだしてびっくりしたよ。でも今は勝手に座るでしょ。そうやって積み上げてきたフロアの文化を尊重したい。それと同じで先人たちの積み上げたCDを出そうと思う。最近あんまり難しいことは考えてなくて、要らん発言をやめておこうと思ってる。SNS時代、一言間違えたら終わりでしょ。だから中和させるために、とりあえず語尾にひまわり(の絵文字)つけてる(笑)。でもライブハウスでは素直で居られるし、かっこつけられるし、自分のこと好きになれるんだ。君たちにもそうなってほしいとずっと思ってる」

 赤裸々だからこそ胸を打つ言葉と共に感謝の気持ちを伝え、その思いを託すように、DEZERTが歌う最大級の愛の歌「ミザリィレインボウ」へ。ステージから放射線状に白い光の線が無数に放たれ、幻想的な光景を作り上げる中、一人ひとりに語り掛けるように、音に、歌に思いを乗せる。汚さも美しさも全てを優しい音楽で包み込み、大きな感動と共に第1部は幕を下ろした。

 2部の【脳みそ編】は、黒いスーツをメインにしたクラシカルなスタイルで登場。ジェントルマンのごとく片手を胸に当てて深々と千秋がお辞儀をすると、新曲「私の詩」で幕開け。「心臓に吠える」とは対照的に、こちらはすべての悲しみや痛みを癒してくれるような優しいバラードソング。Sacchanの繊細なピアノの旋律に、Miyakoのドラマティックなギター、SORAの温かみのあるドラムが重なり、今までのDEZERTにない包容力に溢れ、神聖さすら感じられる曲だ。曲の終わりに贈られた長い拍手が、一曲目から観客の心を強く揺さぶったことを物語っていた。

 「はじめようか、おい! 俺たち良い感じにできあがってんぞ!」と煽り、空気を一変させる千秋。1部ですでに熱烈なライブを繰り広げてきただけに、4人のリミッターはとうに外れているようだ。「脳みそくん。」でフロアにも火をつけると、観客は一斉に飛び跳ねて会場を大きく揺らす。ステージではメンバーが水を得た魚のごとく走り回り、咆哮。続く「バケモノ」でライブの勢いはさらに増していく。己の醜さや愚かさに向き合いながら闇を切り拓く、そんな力強さを感じるこの曲のラストでは、千秋が「新たな闇の中、歩いて行け! 歩いて行け!」と、日々を生きる観客へエールを送るように、そして自分に言い聞かせるように、歌詞を変えて繰り返し叫んでいたのが印象的だった。

 その後も、「「殺意」」「Sister」「大塚ヘッドロック」とアッパーなナンバーを投下し続け、繊細な幕開けとは裏腹にどこまでも熱量を高めていくDEZERT。狂ったようにステージ上で暴れ、踊り、獰猛に音を鳴らし続ける。中でも、フロントマンの千秋は本能のままに身体を動かし、スキップをしたり、踊りだしたり、パンチを繰り出したりと、奇想天外なステージングで観客を驚かせる。MCでは、そんな千秋が「楽しいですね」と開口一番に言い放ち、今回初めて立ったという会場について「気に入りました。好きです、品川インターシティホール!」とご満悦。観客とのやり取りで、lynch.のVo.葉月も同会場でソロライブを開催していたと知ると、「来月対バンします。本当に良くしてくれてる、かっけー先輩です」とリスペクトの意を表した。

 また、2016年にリリースした『完売音源集-暫定的オカルト週刊誌?-』にも新曲が2曲収録されていたことを振り返り、セットリストにはなかった「Ghost」を急遽披露することに。過去には“いつか武道館で無料配布する”と宣言していたこともあったほど大切にしてきた曲を届け、絶望に落ちる一歩手前で踏みとどまらせてくれるような、不思議な救済力を持ってフロアを優しく包み込んだ。

 余韻に浸る間もなく、SORAのエネルギッシュなカウントから「カメレオン」を投下。曲中に「笑えてる? 笑えてない君たちのために音楽があるんでしょ!」と千秋が叫ぶ。ダンサブルな「Thirsty?」を挟み、「「遺書。」」へ突入。2部の後半だというのに容赦ない攻めの展開にも全く動じず、“待ってました”と言わんばかりに頭を振り乱す観客たち。サビの大合唱ではすでに定番化したオクターブ上のハーモニーもしっかりと響いており、千秋も「一個いい? 確実に上手くなってる。自信持って。人生で上手くいかないことがあっても、遺書は上手く歌えてるから」と満足気に絶賛した。

 「「君の子宮を触る」」でラストスパートへ向けた盛り上がりがピークに達したあとは、Sacchanからベースを奪った千秋が、「包丁の正しい使い方~終息編~」のフレーズを鳴らしながらステージを降り、柵を一生懸命くぐり抜けてフロア中央にあるカメラ用スペースへ。360°観客に囲まれた状態で近くのファンとハイタッチをしたり、曲が終わった後も手を左右に大きく振りながらアカペラで歌い続けたりと、誰にも予想できない行動を繰り広げる千秋。最終的には「終わり方が全然わからぬ、助けてDEZERTのみなさま!」と救いを求め、3人の演奏の力を借りながら、このカオスな展開をなんとか着地させた。自由すぎる彼の行動も、このライブがひたすらに楽しいということの現れなのだろう。

 「武道館まであと何日だろう。あーあっという間だなぁ! もう数えるほどしかライブないんだよね。その中でlynch.、Sadie、MUCCとの対バンは、俺たちの心を先輩たちに浄化してもらうためにやろうと思ってる。そう、まだまだなんよ。俺ら生まれつきのスターじゃねぇから、ちょっとずつ夢が叶ってきてる実感があるの。そこに感謝してぇけど、社会とか大人にクソだって言ってるわけ。不甲斐ねぇと思う毎日だけど、曲を作ってあなたたちの前で演奏して、バカみたいなことやったり真面目なことしたりすると、マジで生きててよかったと思うかもしれない。死ねないと思ってる。すごい時間かかるけど、今思ってるよ、ありがとう。それを返さないといかん。そのためには、“このバンドを応援してきてよかった”ってさ、今ならちょっと胸張って言えると思うの。そのための武道館でいいと思ってるんだよ。“DEZERTってどんなバンド?”って聞かれたとき、“今度武道館やるんだよ”って言えるでしょ。もっとみんなが知ってる場所でライブやって、“DEZERTってすごいよね”ってみんなに知れ渡るくらい、そういうバンドになろうと決心してるので、これからもついてきてください」。

 DEZERTを代表して今の思いを全て伝えきった千秋は、手を高く掲げながら「生きてて良かったと思える日に出会えるように、何度もこの曲を僕たちは演奏します!」と決意表明し、「TODAY」へ。葛藤や苦悩を繰り返しながらも、今日の一歩を踏み出すため、そして誰かの居場所を作るために、愚直なまでに繰り返し届けてきた彼らのメッセージは、この日も力強く響き渡り、観客の胸に深く刻み込まれたはずだ。そして最後は、DEZERTの楽曲の中でも最高にハードな「「切断」」。最後の一音まで決して緩むことのなかった激しいヘッドバンギングの嵐は、3か月後、さらに大きな波となり、日本武道館を埋め尽くすだろう。

 怒りとエネルギーに満ちた破天荒なバンドから、不器用にもがきながら光を見出そうとする愛しいバンドへ。そして、すべての人に居場所と愛を与えてくれる包容力に満ちたバンドへと少しずつ変化していったDEZERT。13年かけて一歩一歩進んできた道のりは、日本武道館という一つの到達点に確かに繋がった。12月27日、その軌跡を一人でも多くの人に見届けてほしい。きっとDEZERTが、“生きててよかった夜”に連れて行ってくれるはずだから。

Text:南 明歩
Photos:冨田味我

◎公演情報
【Let’s Go Budokan?! -みんなで武道館へダイナマイ!!】
2024年9月23日(月・祝)東京・品川インターシティホール

<セットリスト>

-第1部:心臓編-
1.胃潰瘍とルソーの錯覚
2.「絶蘭」
3.心臓に吠える
4.ミスターショットガンガール
5.「遭難」
6.蝶々
7.遮光事実
8.Call of Rescue
9.「誤解」
10.「変態」
11.包丁の正しい使い方~終息編~
12.「秘密」
13.ミザリィレインボウ

-第2部:脳味噌編-
1.私の詩
2.脳みそくん。
3.バケモノ
4.「殺意」
5.Sister
6.大塚ヘッドロック
7.Ghost
8.カメレオン
9.Thirsty?
10.「遺書。」
11.「君の子宮を触る」
12.包丁の正しい使い方~終息編~
13.TODAY
14.「切断」

【DEZERT SPECIAL ONEMAN LIVE at NIPPON BUDOKAN「君の心臓を触る」】
2024年12月27日(金)東京・日本武道館

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