【ライヴレポート】真心ブラザーズ、オールタイムベストな選曲で魅せた35年の愛とユーモア

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【ライヴレポート】真心ブラザーズ、オールタイムベストな選曲で魅せた35年の愛とユーモア

真心ブラザーズが、〈デビュー35周年記念公演『古稀1/2』〉を2024年9月21日(土)東京・EX THEATER ROPPONGI、9月23日(月・祝)大阪・なんばHatchで開催。35年間の集大成となる選曲による愛とユーモアに満ち溢れたライヴで、集まったファンと共に“古稀1/2”を祝い、至福の時間を過ごした。このレポートでは、東京公演の模様をお届けする。

この日のライヴは、前売りでソールドアウトとなっていたものの、座席レイアウト変更により当日券を若干数販売する盛況ぶり。ニューアルバム『SQUEEZE and RELEASE』の「デビュー35周年記念盤」も会場で販売され、多くの人が手にしていた。

開演間際、影アナでYO-KING(Vo.Gt)と桜井秀俊(Gt. Vo)が登場。オールタイムベストなセットリストなることを告知して、ライヴへの期待感がさらに高まる中、定刻の17:30になり会場暗転。クラシカルなBGMが大きくなり幕が左右に開くと、アコースティックギターを手にしたYO-KING、桜井の姿が。それぞれピンスポットを浴びながら、ストロークするYO-KINGと単音のフレーズで寄り添う桜井。歌い出したのは、1989年9月1日にリリースされたデビュー曲「うみ」だ。オリジナルよりも心なしかゆっくりと、ギターを弾き歌うYO-KING。〈君と僕とのうみさ〉サビで2人のハーモニーが重なった瞬間、不覚にも涙腺崩壊してしまった。途中、鍵盤奏者・オヤイズカナルがさりげなくピアノを加え、感動的なオープニングを演出した。

【ライヴレポート】真心ブラザーズ、オールタイムベストな選曲で魅せた35年の愛とユーモア

ステージにバンドメンバーが上がり、桜井が「1、2、3、4!」とカウントを取って始まったのは、「空にまいあがれ」。今回のバンドは、真心の2人とはCRAZY BUFFALOESとして度々ライヴをおこなっているサンコンJr.(Dr/ ウルフルズ)、グレートマエカワ(Ba/ フラワーカンパニーズ )、さらに長年レコーディングやステージを共にしている盟友・うつみようこ(Vo)、そして今回初参加のオヤイズカナル(Key)による6人編成だ。さらに桜井がカウントを取って、「花のランランパワー」へ。YO-KINGのブルースハープを先頭に、グレートがステップを踏みながら繰り出すベースラインが軽快に曲をリードして、客席は総立ちとなった。

「あらためまして、真心ブラザーズです!」(YO-KING)「ようこそいらっしゃいました!」(桜井)

9月1日を以ってデビュー35周年を迎えたことを報告すると、客席からは大きな拍手が贈られた。「テレビ番組の「勝ち抜きフォーク合戦」にたまたま出たら、そのまま35年続くというまさかの事態」と回想する桜井。10週勝ち抜いた記念に「うみ」をシングルで出すことになったという。その後2ndシングル「うまくは言えないけど」をリリースして、翌1990年3月に1stアルバム『ねじれの位置』を発表。「そのままズルズルと続けて…」(YO-KING)「ズルズルって(笑)。まあそういう側面もあるけど」(桜井)と笑わせつつ、「目の前のことを楽しくやっていたら35年経っていた」と、“大学36年生目”の2人の軽妙なトークで振り返った。桜井曰くこの日のライヴは “三段重ねの幕の内弁当”みたいな内容とのことで、35年間の集大成を見せる上で、休憩を挟んで行われることが告げられた。

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ライヴを再開すると、YO-KINGがセミアコを爪弾きハープを吹いて「素晴らしきこの世界」が始まった。序盤の弾き語りから展開が変わり一斉にバンドが加わると、煌々とした照明のもと、バンド一丸となる激しい演奏が繰り広げられ、会場を熱くした。すかさず始まった「スピード」では、ヘヴィなサウンドに加わる鍵盤の音色が不穏なムードに拍車をかけると、グレートのベース、桜井のギターリフを合図に、サンコンJr.と向かい合っていたYO-KINGが振り返って曲が加速。〈オレに正しい天気予報を教えろ〉と無茶な言い分をシャウトするYO-KING。「素晴らしきこの世界」から「スピード」へと、真心の世界観が変わっていくきっかけとなった2曲で、一気呵成に駆け抜けた。幻想的なギターから、桜井が「スイート・フォーク・ミュージック」でリード・ヴォーカルを取る。淡々とした演奏が徐々に熱量を上げていく、息の合ったアンサンブルを聴かせた。

【ライヴレポート】真心ブラザーズ、オールタイムベストな選曲で魅せた35年の愛とユーモア

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ここでバンドのメンバー紹介。サンコンJr.は、前日にウルフルズがLINE CUBE SHIBUYAで行ったライヴで、サポートを務めた桜井と2日連続のワンマンライヴのステージとなる。YO-KINGも観に行ったそうで、桜井のメンバー紹介時に「どか〜ん」を一部披露して盛り上がっていたことを報告。フラカンも35周年の同期となるグレート、先輩にあたるうつみの紹介に続きオヤイズカナルを「まさに音楽をやるために生まれてきた男」と、そのプレイを絶賛。もうすぐ35歳になるそうで、YO-KINGは「一緒じゃん、真心と!古稀1/2じゃん」と喜びつつ、オヤイズが所属するバンド・木(KI)、DOGADOGA(ドガ)、YO-KINGソロでツアーを回った際に知り合ったことが参加のきっかけだったことを明かした。尚、同じく木(KI)のメンバー大橋 哲はニューアルバムで全曲ベースを弾いている。「古い友だち、新しい人たちと出会いながら、ガンガン音楽をやっていこうと思うので、今後ともよろしくお願いします!」(桜井)。

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桜井がギターをかき鳴らすと、「どか~ん」が飛び出した。総立ちの客席は全身で応えて大盛り上がり。続いて桜井がストラトでスライドバーを滑らせて、「JUMP」へ。イントロのサックスによるフレーズをオヤイズがキーボードで弾いて、桜井のスライドギターと掛け合うのが新鮮だ。緩やかに動きながら歌うYO-KINGがセンターでハープソロを吹くと、桜井が「紹介します、YO-KING!」とコールしてドッと湧いた。炸裂するうつみのヴォーカルから「拝啓、ジョン・レノン」が始まると、会場が文字通り大きく揺れるほどの熱気に包まれた。白熱した歌と演奏を飛び交うライティングがさらに煽る。落ちサビで音が止まり照らされた客席はクラップでいっぱいに。うつみがYO-KINGとビートルズの曲名で掛け合うヴォーカルでエキサイティングに曲を終わらせると、そのままサンコンJr.のフィルインから「愛」へ突入。ライヴアンセムの連発に興奮が止まらない。バンドのグルーヴも濃密なファンクサウンドに乗せて歌うYO-KING。桜井は身をよじらせながらエモーショナルにソロを披露。間奏ではサンコンJr.の豪快なタム回しからグレートのベースソロへとリレーして大喝采。観客はサビで大きく手を振りながら歌って一体となった。

10分間ほどのインターバルを挟んで、第2部は「サティスファクション」からスタート。サンコンJr.が叩くビートに、オヤイズが弾くクラヴィネットの音がファンキーに乗っかって曲が始まった。ブレイクで桜井が「オン・ドラムス、サンコンJr.!」と紹介して、ブレイクビーツ的なプレイにさらに盛り上がる。1999年発表のヒップ・ホップチューンは2024年の今も最高にクールだ。YO-KINGがゆらゆらと舞いながら歌い、コーラスパートでオーディエンスは頭上に両手を掲げてクラップして盛り立てる。続いて「突風」へと、アルバム『GOOD TIMES』と同じ曲順で披露。緊張感のある曲の空気感と歌詞は、今の時代になおさら刺さる。

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曲間で「素晴らしいバンド、いかがでしょうか?すごいグルーヴ!」と興奮気味に呼びかけるYO-KING。バンドに向けて大きな拍手が沸き起こった。2部は1996年以降の曲を取り上げて行くということで、次に披露されたのは『Eテレ0655』のオープニング曲となった「朝が来た!」。ボブ・マーリー「Soul Captives」に「だんご3兄弟」などの作詞で知られる佐藤雅彦が日本語詞を付けたカバーだ。軽やかにレゲエタッチな演奏が心地良い。お得意のフォーキーでポップな曲ながら初期とはまた違った味わいのある「情熱と衝動」から、「別れの歌三部作」の1曲として発表された「この愛は始まってもいない」へ。胸を締め付ける切ないラブソングがしっとりと広がっていく。曲の最後にはYO-KINGがメランコリックなギターソロを聴かせた。

「いやあ、楽しい。まさか35年前の俺の才能がここまで開花するとはね(笑)。みなさんのおかげです!開花しました!開花宣言!」と自画自賛するYO-KINGに拍手喝采。「桜井さんもまあまあ開花しています!」と相方も称賛して、アニメ「宇宙兄弟」主題歌としてリリースされた「消えない絵」へ。疾走するように、派手なリズムと豪快なキーボードが活躍して、伸びやかな歌声を聴かせるYO-KINGと後半で歌い継ぐ桜井。明るく楽しいポップスから一転したのは、「人間はもう終わりだ!」。真っ赤に染まるステージから送るハードなサウンドによる強烈なメッセージは、時代ごとに真心が社会の空気を敏感に取り込んできた証明だ。YO-KINGのギターリフから「一触即発」へ。対照的にブルーの照明が冷たさとスリルを感じさせた。キメを強調したソリッドな演奏が熱い。「明日はどっちだ!」では、桜井とグレートが向きあって8ビートを鳴らす。〈うるせえな 負けねえぞ 明日はどっちだ 君はどこにいる〉とロングトーンでシャウトするYO-KING。緩やかなヴォーカリストのイメージもあるが、こういう無骨な曲にこそスピリットが感じられてグッと感情移入できる。

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「どうもありがとう、35周年!これからもよろしくお願いします!「All I want to say to you」!」と曲紹介するYO-KINGに桜井が「is I love you!」と歌詞のフレーズで応えて、「All I want to say to you」へ。大きく弾むようなサウンドのポップスに会場中を揺らすと、続けて「ENDLESS SUMMER NUDE」へと突入。「サマーヌード」のリアレンジとして発表されて以来、真心ブラザーズの歴史に大きくそびえたつ名曲中の名曲だ。リズミカルにグルーヴするバンドの演奏も極上。間奏で流麗なソロを聴かせたオヤイズのピアノと、グレートのベース、桜井のギター、3つの楽器の音がユニゾンフレーズで1つになってYO-KINGに繋ぎ〈そうさ僕ら今〉と歌い出した場面は、最高のカタルシスを感じてゾクゾクさせられた。うつみのソウルフルな歌声が響き渡り曲が終わると、桜井がステージ前に出てファンキーなイントロを弾いて、真心のソウル・ナンバーでもとびきりハッピーな「EVERYBODY SINGIN’ LOVE SONG」へ。「どうもありがとう!Come on!Come on!Come on!」と客席を煽りながら歌うYO-KING。間奏のハープソロでは再び桜井が「オン・ハーモニカ!YO-KING!」とコールして盛り立てる。2番に入るとなんと桜井がリードヴォーカルを取り、「(男・桜井が歌う)EVERYBODY SINGIN’ LOVE SONG」状態に。思わぬサプライズに「うぉぉ~!」とどよめきの大歓声が沸き起こる。さらにステージ中央でギターソロをキメると爆発的な盛り上がりに。客席が明るくなりブレイクしてコール&レスポンスを繰り返すYO-KINGとオーディエンス。多幸感とはこのことか。とにかくとてつもない盛り上がりですごすぎる。ソウルフルなYO-KINGの歌、桜井の熱いギターと歌、バンドのタイトな演奏で、クライマックスに相応しいこの日一番の名演、最高のパフォーマンスとなった。「どうもありがとう東京ー!35年ありがとうー!」とYO-KINGが曲中で感謝を示して、メンバーはステージを降りた。

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アンコールに応えたメンバーたちは全員お揃いの記念Tシャツ姿で登場。YO-KINGは、「めちゃめちゃ楽しいライヴになりました、ありがとうございます!」とあらためてお客さんに感謝した。また、グレートのフラカンが2度目の武道館ワンマンライヴを2025年9月20日(土)に開催することに触れて、「絶対応援しちゃうよ」(YO-KING)「親戚の子が甲子園に出るようなもんだからね。みんなで応援に行きましょう!」(桜井)と、同期バンドへ熱いエールを送った。最後は、「これからを見据えて、新曲で終わるっていう強気なね(笑)」(YO-KING)「またタイトルが最高なんですよ」(桜井)と、この日発売された19thアルバム『SQUEEZE and RELEASE』からの新曲「オレは音楽」を紹介して演奏開始。ベース、ギター、ドラムが順番に加わり、スタジオ音源には入っていないキーボードが加わると、〈オレは音楽 音楽そのもの〉〈だから サイコー ホントに スゲー〉と、冴えわたるYO-KING節をファンク・サウンドに込めて、興奮冷めやらぬ中、ライヴを締めくくった。「35周年、ありがとうございました!これからもよろしくお願いします!」(YO-KING)。ラストをユーモア溢れる、尚且つ尖った新曲で終わらせたところに、常に今を楽しく生きる真心ブラザーズのカッコよさが感じられた。35周年、今の真心ブラザーズが〈だから サイコー ホントに スゲー〉と思えた最高のアニバーサリー・ライヴだった。

取材・文:岡本貴之
PHOTO:鈴木友莉

ライヴ情報

〈真心ブラザーズ デビュー35周年記念公演『古稀1/2』〉
2024年9月21日(土)東京・EX THEATER ROPPONGI
1.うみ
2.空にまいあがれ
3.花のランランパワー
4.素晴らしきこの世界
5.スピード
6.スイート・フォーク・ミュージック
7.どか〜ん
8.JUMP
9.拝啓、ジョン・レノン
10.愛
11.サティスファクション
12.突風
13.朝が来た!
14.情熱と衝動
15.この愛は始まってもいない
16.消えない絵
17.人間はもう終わりだ!
18.一触即発
19.明日はどっちだ!
20.All I want to say to you
21.ENDLESS SUMMER NUDE
22.EVERYBODY SINGIN’ LOVE SONG
EN1. オレは音楽

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