藤岡みなみ|家庭を平和にする注意喚起DIY【思い立ったがDIY吉日】vol.95
文筆家・ラジオパーソナリティの藤岡みなみさんが、モノづくりに対してのあれこれをつづるコラム連載!題字ももちろん本人。かわいくも愉快な世界観に、思わず引き込まれちゃいます。今回は、ラベルについて!
藤岡みなみ
文筆家。暮らしの中の異文化をテーマにした『パンダのうんこはいい匂い』(左右社)が発売中。
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家庭を平和にする注意喚起DIY
▲我が家はラベルだらけ。
知らぬ間に自宅がDIYされていく。
私の怠慢のせいである。
印刷機の電源をつけっぱなしにしていることを、以前から夫に注意されていた。
するとある日、印刷機本体に手作りのラベルが貼られているのを見つけた。
▲3連続で貼られたラベル。
ひい、ごめんなさい。
面と向かって注意してくるときの夫はとても穏やかなのだ。
「ごめんね、もしできれば、電源オフにしてもらえると助かるかも」。
そんな調子なので、ラベルの勢いとは大きなギャップがあり驚いた。
おそらくラベルが本音に違いない。
最近このラベルがどんどん増えている。
フライパンの持ち手には「使い終わったらシンクに重ねないで」、食洗機には「食器を入れすぎると開けた時に落ちてくる」と日本語と中国語で書いてある。
何度言っても同じことを繰り返す私や両親に呆れ、夫はラベルを量産しているのだ。
そしてついに注意喚起DIYはネクストステージを迎えた。
▲突如設置された謎のスピーカー。
ある日、トイレの片隅に人感センサー付きスピーカーが置かれた。
用を足そうとすると人影に反応して音声が再生される。夫は事前に子どもの声を録音していた。
「トイレの後は手を洗いましょう」。
たしかに義父と子どもはいつもこのことを注意されている。
私も毎回言わなければいけないのは嫌だなぁと思っていた。
「トイレの後は手を洗いましょう」。
深夜に目覚めてトイレに行くときも、ふいに子どもの声が流れてきてぎょっとする。
音声になったことで注意喚起に臨場感が増した。
無視できず、身体に飛び込んでくる。
ここまでするか?とも思うけれど、日常における夫のストレスは計り知れない。
年齢も性格もばらばらな人間が一緒に暮らすということは、決してたやすいことではないのだろう。
常に誰かがどこかで我慢している。
我慢をするのは常にきちんとしているほう、よく気がつくほうの人だ。
しかし注意される側も悪気があってそうしているのではなく、長年の生き方の癖が自然と出てしまっている。
ぶつかって言い合いをするよりもDIYで解決するほうがたしかに平和だ。
DIYは平和をもたらす。
ラベルが好きなだけ疑惑
▲日用品のストレージ。
我慢の限界で制作に走ったということももちろんあるが、夫はもともとラベルが好きなのかもしれない。
先日、洗面所の棚のリニューアルを自慢された。
これは便利でありがたい。
引っ越してきてからかなり経つのにいまだに整理ができておらず、これまではアイテムが雑然と置かれていた。
棚のサイズを測り、ちょうどいいボックスを準備。
ヵ
そしてご丁寧に日本語・中国語・英語の3ヵ国語表記のラベルで仕分けられている。
ここまでくると、ラベル貼りは彼の趣味と言っていい。
ラベルがよく見えるよう、各段にライトも設置されていた。
▲扉を開けると自動で点灯する。
ラベル命だ。ラベルにスポットライトを当てている。
当然他の部屋でも、衣装ケースや薬箱など、分類できるものにはたいていラベルが付いている。
なにか家の中をうろうろしているなと思ったら、ラベルを貼れる場所を探しているのだ。
本当にラベルが好きなんだなぁ。
そうか。私はひらめいた。
これまで注意書きが増えるたびに申し訳ない気持ちになっていたが、ラベルが趣味の人だと考えると、そこまで気にしなくてもいいのかもしれない。
なあんだ。
反省しなくなった私はきっとまた夫のストレスを増やす。
そしてどんどんラベルが増えていく。
いつの日か目覚めたら、私自身にラベルが貼られているかもしれない。
それでも仕方ない。これも家庭内平和のためである。
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