「拳で稼ぐ。僕の格闘家としての美学です」 総合格闘家・『拳聖』平本蓮

「拳で稼ぐ。僕の格闘家としての美学です」 総合格闘家・『拳聖』平本蓮
「打撃の天才」がMMAでも開花と言ってよいだろう。

かつて「拳聖」と呼ばれた空手家がいました。その人物をモデルに漫画『喧嘩稼業』(木多康昭著)では、里見賢治という空手家を登場させました。10代で天才と言われたものの、空手王と言われた山本陸に敗れ失意の元、中国にわたり自分の空手(玉拳)を完成させ帰国。そして里見賢治の闘いが始まる――。漫画は現在休載中。里見は「拳聖」と言われていました。

平本蓮選手も小学生からキックを学び、10代でゴンナパー、ゲーオという強豪を撃破。天才と言われました。が、MMAでは苦いデビュー戦を経験。渡米後、剛毅會空手に出会い、平本選手独特の拳術が開花しつつあります。「濃く強い線を引くには敗北が必要なんだよ」(里見賢治)。里見賢治と平本蓮選手に「天才性」「敗北からの勝利」という共通項があるように思います。

7月28日の超RIZINは「国内最高の試合」と評価されています。朝倉未来vs平本蓮。試合は圧勝であり完敗でした。コロナ禍という厳しい状況の中、日本の総合格闘技界をけん引してきた朝倉未来選手。その朝倉選手は平本選手に一発もパンチを当てる事なく、1Rでマットに沈められました。これほどまでに実力差があったのか――。

今、「言葉を持つ格闘家」平本選手は何を思うのか。取材先に現れた平本選手は「ごぶさたしています」と笑顔で迎えてくれました。約4年前のRIZINデビュー戦のインタビューよりも「圧」を感じました。

 

●「距離感を見つけた。その感覚の鋭さが自分の武器。キックだろうがMMAだろうが関係ない」

――デビュー戦の取材をさせて頂いて以来なので、今日はいろいろ答え合わせをしたいと思っています。ご結婚もされて7月28日、超RIZIN3も経て、色んなことがありました。

平本選手 実際、経験してみると、次にやりたいことの欲求が大きくなって、振り返ることはないかもしれません。コナー・マクレガーと邂逅したのも信じられないです。だから朝倉未来戦が終わって、この勝利を噛み締めていたい気持ちもありますけど、そこで喜んじゃうと怖いなって思う自分もいます。ここで満足するわけがないし。

――今回、「国内最高の一戦」と言われていましたけど、プロの専門家の事前予想では朝倉選手勝利が多かったように思います。戦績(3勝3敗)を根拠にしている人もいましたが、3勝3敗の中身や平本選手の成長率、過去の実績と修羅場くぐった数を推し量っているのかなと疑問でした。

平本選手 いろいろ言ってくるヤツいますけど、僕はデビューしてほとんどメインで、そんなヤツいるのかよって思いますよ。(戦績は)誇らしいです。前は嚙みついたりしていたんですけど、シカトっすね。試合前もイライラするから結果予想とか見ないんですよ。黙らせてやろうと思ってトレーニングを常に続けてそのスタイルでいこうと思っています。

――そのなかで石渡伸太郎さん(元総合格闘家)ら数人(中村倫也選手、吉成名高選手など)が「平本選手勝利」って言っていました。石渡さんは平本選手のパンチを「ハンマー」と言っていました。

平本選手 嬉しいですね。自分を信じてくれた人たちが報われるって言い方も変ですけど。

――石渡さんもさんざん「接待ナントカ」とかディスられていましたからね。聞いておきたかったんですが4年前にインタビューしたときに「キックボクサーの打撃との危険な距離感がある」みたいなお話をされていたんですけど、もうちょっと説明していただけますか?

平本選手 総合格闘技で、自分の得意な距離感を見つけてきた感じはあります。その感覚の鋭さが自分の武器なんです。キックだろうがMMAだろうが。適応能力です。キックの技術というよりは格闘技に対しての適応能力に僕は自信があったんで。だからレスリング力にも組み技にも自信がついてきて、今のスタイルができるようになった。まだまだ研究中なんですけど。

――YouTubeでオーソからの左のミドルとか、ストレートの打ち方を一般の人に向けて解説していましたが分かりやすかったですね。

平本選手 ありがたいですね。今はさらに技術が上がってきて、ステージが変わっていきますよ。3ヶ月単位、1ヶ月単位で変わっていくし、今回の試合の作戦も最終的にあの作戦になったのが2週間前ぐらいです。相手も朝倉未来になりきってキックボクサーを呼んで。組み技もレベルの高い人たちを呼んで。そこをかいくぐって打撃を当てていく。朝倉未来よりもレベルが高いキックボクサーと、朝倉未来に寄ったスタイルのスパーリングを徹底的にやりました。絶対に俺のほうがこの試合に賭けていた。トレーニング、ケア、食事、睡眠、格闘技のためにここまでやったことなかったんで。『ウサギとカメ』じゃないですけど、そのあいだにできることをとにかく詰めてめちゃくちゃやりました。だから3ヶ月なんて一瞬でしたね。

――試合を振り返りますと、初めは距離を測って、右ミドルが来て、1回ステップ踏んで前に踏み込みました。

平本選手 とにかく組ませない遠い距離でというのを思っていました。スピードに自信があったんで。1Rから何度か踏み込んで当てて調整した感じですね。「あと一歩近づけたほうがいいな」とか。2回ぐらい試してみて、やっと朝倉未来が距離外し始めたんで、「これ、もうやっちゃっていいな」って。

――「距離外し始めた」と言えば朝倉選手のローが空ぶった時、距離が合っていないのかと思いました。

平本選手 蹴りが外れると距離がバグるんですよ。で、またリセットしようと相手の動きを集中して見るようになるんで、そのときにしっかり反応してくれてたんで。

――朝倉選手は詰めると、サークリングしないでまっすぐ下がりません?

平本選手 そうですね、下がって右フック。コーナー際とか自分が下がって左斜め後ろにラインを作ってそこから角度作ってタックルに入るとか。あとJTTも普通に練習風景とか、「このコーチがこういうふうにアドバイスしてくれた」とかYouTubeとかで言っちゃっていたんですよ。例えばビリーとエリーは打撃で角度を作らせてレスリングやったり、けっこう細かく練習してるんだなっていうのを再認識しました。

 

●「朝倉未来選手の本来の荒々しさがなくなっていた」

平本選手 試合がないときにそういう練習やるのは分かるんですけど、試合前にそれをやると丁寧になりすぎちゃって、朝倉未来の荒々しいケンカ強さみたいなのが、削がれると思うんです。たぶん朝倉未来は自分のほうが幅が広いから、細かく作戦立ててこなかったと思うんですよ。実際ナメられていた部分もあると思うし。でも僕の場合、倒すパターンは3パターンぐらいしかないですからね。それを細かく決めて作っていたので。朝倉未来はもっと自分の持っている技術に自信持って、多分いつも通り調整してきたほうが、もしかしたら……わかんないです(苦笑)。JTTのメンバーもみんな「過去最強だ」って言っていましたけど、そりゃ基礎的なことやっていれば能力は確実に上がるけど俺の試合で全部使えるのかっていったら、また難しい問題だと思うんで。

それで言うとYA-MANと怪物くん(鈴木博昭選手)の試合しかり。ストライカー同士の試合でグラップリングでやる時点で負けなんですよね。怪物くんテイクダウン行っていたじゃないですか。俺もYA-MANとやるとき、テイクダウンに行く練習なんてしなかったんですよ。あくまで打撃で打ち勝ってからその先にテイクダウンするっていうか上を取る。これがストライカーの本来あるべき姿だと思うんですけど、ストライカー同士の対決で最初からテイクダウンを選択したほうが絶対に弱いんですよ。

――以前、朝倉選手にインタビューしたとき、「一番キーになった試合だった」のはRIZINデビュー戦の日沖戦って答えていました。平本さんがおっしゃったように野性味があったと思うんですよ。前に詰めてって最後プレッシャーかけて。

試合の分析が緻密。

平本選手 (最後は)左ハイキックか何かですよね。最初、朝倉未来がポンポンKOで倒していた時期の映像を観るとめっちゃ打撃ヘタなんですよ。不格好というか。僕はシャープな打撃が好きなんですけど、朝倉未来は汚い打撃で(笑)。でもあ・れ・が強いんですよ。

――あの打撃はMMAファイター同士だから通じた、と。

平本選手 これが上のレベルになってくると、あんなの餌食っすよ。

――今回、露呈してしまった?

平本選手 アレが良さだったんじゃないかな。YouTuberになっていろんなキックボクサーと絡み始めてから急にきれいに戦うようになったりして、あの荒々しくて強い感じがなくなった。

――平本選手は幼少の頃からずっと格闘技やっていて、いわゆる天心選手らと過ごしてきた「格闘エリート」です。それを分かっているのか、いないのか。よく「SNSの口撃だけ」みたいなこと言われますけど、平本選手はホントに純粋に格闘技に人生を捧げていて、格闘技が好きなことが伝わってきますけどね。

平本選手 ネットの口撃とか僕は顔出して言っていますからね。ネットの陰口じゃなくて、俺として公言していますからね。おまえら俺と同じ立場だと思ってんのかよって感じですけど。勘違いも甚だしい(笑)。たかがパンピーのツイートと俺のツイート一緒にしてんじゃねえよって思いますよ。いいですよ、そういう奴に試合見てもらわなくても(笑)。

 

●「朝倉未来戦に勝ってから全員に優しくなれました。鈴木千裕以外(笑)」

――今回の朝倉戦は『THE MATCH』と並ぶ頂上決戦という意味でひとつ区切りがついたと思うのですけど、もしかしたらここで少しJMMA熱が下がるのかな、みたいなことは考えてたりするんですか?

平本選手 天心と武尊みたいな接戦だと、「世紀の一戦が終わった」みたいになっちゃいますよね。僕はこの試合、絶対に最高のフィニッシュ、圧倒的な勝利をしたかったんです。そしたらただの俺の圧勝で終わったじゃないですか。

――そうでした。

平本選手 だからあんまり世紀の一戦という感覚もなく、もう次に上がるっていう感じっすね。

――あの一方的な、一発も貰わないで……初めのストレートで終わっていましたよね。

平本選手 そうですね、効いたんでチャンスだと思って。

――最後に朝倉選手がダメ元で右フック出すじゃないですか。それに合わせますよね、それで決まったって解説が言っていたんですけど、その前に終わっていましたよね。

平本選手 そうですね。あれで効いてクリンチに来たところに5~6発入れて。最後のカウンターとかじゃないですね。

――テイクは1回も来なかったです。

平本選手 来させないように距離感の設定でしたから。みんな、何で行かないんだって言ってましたけど、行けるなら来てましたからね、絶対にさせないような距離感だったんです。

――朝倉選手は予想以上にプレッシャーかかっていたんですね。

平本選手 プレッシャーかけられた自信はあります。

――左ストレートのときのステップって、あれ右のスイッチのフェイント、入れてます?

平本選手 入れてないです。

――何パターンかできるってことですね。

平本選手 はい、そのなかのひとつです。

――すごい武器を手に入れましたね。

平本選手 そうですね、ホントに練習しました。

――専門家たちの勝利予想で「3勝3敗」ってずっと言っているのですけど、その前に新生K-1で修羅場くぐっているじゃないですか。まして、ゲーオ、ゴンナパー戦を「江戸時代の決闘場に行くぐらいのつもりだった」と表現していた。それを19歳とか20歳で経験していることはデカいと思うんですよ。この修羅場をくぐった体験をなぜ専門家は無視するのか――。

平本選手 圧倒的にデカいし、アマチュアでもたくさん試合してきて、その基盤があるので、今のMMAの感覚は総合格闘家としてかなりつかんだんじゃないかなっていう感じで。デビュー当初から茨の道ではあったかもしれないですけど。文句言うヤツはいっぱいいますけどね、じゃあ同じことやってみろよって。

――そうですね、そこを無視して「3勝3敗」にこだわっているから。

平本選手 それはシンプルにヤキモチですよ。そういうのも朝倉未来に勝ってから全員に優しくできるようになりました。

今後、この選手を中心にJMMAは回っていくのか。それとも――。

――『人にやさしく』(平本選手の好きな「ブルーハーツ」)ですか。

平本選手 ホントに。いま誰にもイライラしないです。鈴木千裕ぐらいですかね、イライラするのは腹黒いと思いますよ、笑顔が物語っていますよ。ぺットボトルのことは、じゃあ格闘技観んなよと思いますけどね。

 

●「朝倉未来が大金を稼いだのは尊敬でしかない。でも俺は格闘技で稼ぎたい」

――朝倉未来選手には引退しないでほしいとおっしゃってましたけど、次にやりたい選手のイメージはあるんですか?

平本選手 タイトルが絡む試合っていうのはもちろんあるし、シンプルに稼ぎたいんで。いいお金になるんだったら誰でもやります。朝倉が金に走ったどうのって言われてますけど、金に走るのは人間として当たり前ですよ。じゃあ、サラリーマンで一生昇格しない仕事を美学持ってやれるの?っていう話で。そんなヤツ一人もいないじゃないですか。

格闘技で稼いでのし上がるって、カッコいいじゃないですか。朝倉未来の場合はサイドビジネスがあまりにも跳ねて、そこでお金を稼いでいくの早かったじゃないですか。言ってしまえば「格闘家上がっちゃう」と思うんですよね。

そう考えたときに、朝倉未来との試合の話をもらって、やりますってなって。自分も結局はお金です。ファイトマネーで稼ぐ。これが一番のモチベーションになりますからね。それはこれからも変わらないです。それは美学で、おまえらが飯食わせてくれるわけでも国が保証してくれるわけでもないし、こんなクソみたいな場所に住んでいて、金ないと不安じゃないですか。

だから稼ぐために闘うのが当たり前で。美学で強さを求めてやるんだったらオリンピック行けよって話です。プロなんで稼いでなんぼです。朝倉未来がやっている事業ってそのへんのタレントができるような仕事でもある。ただそれは朝倉未来というカリスマ性があってのビジネスです。それは俺にはできないし、鈴木千裕なんて当たり前にできないですよね。

――うーん。難しそうですかね。

平本選手 そういうヤツらが金に走ってどうのとか、おまえら金持ってから言えよっていう話です。朝倉未来が大金を稼いだことは尊敬でしかないし、上にあがった人間じゃないですか。俺が格闘技に疲れて他の仕事やるとなったら、周りでいつも支えてくれる人間のサポートに回れば生活はできると思うんです。でも俺は格闘技で稼ぎたいんですよ。やっぱり自分は拳、ファイトマネーで稼ぐ。これほどカッコいいものはない。世界じゅう探して今回のファイトマネーぐらいもらっているヤツいるのかよっていったら、UFCの王者クラスより全然高いんですよ。それは誇らしいし、これからもそのスタイルは変わらない。

UFCは目指します。でも拳だけじゃないじゃないですか、たとえばUFCを観ればわかるけど、人気のない選手はどんどんリリースされていく。だからメイウェザーも「モチベーションはベルトでもないし勝利でもない、金だ」って言っていて、とにかく金のためにハードワークする。これしかないんですよ。いくら朝倉未来との試合っていっても。バイト代ぐらいじゃ試合しないですから。このこだわりとこのプライドを持ってファイトマネーを稼いでいきたいなと思っています。そのへんはすごく意識しました。入るお金って副業とかいろいろあると思いますけど、それを朝倉未来は試合前に出来るはすごいです。僕は1回そのモードになっちゃったら練習とケアと食事と睡眠とすべてにこだわって、24時間全部格闘技の生活しますから。勝ちたいし勝って稼いでいきたいから。これからも今回みたいな試合が続いていくわけじゃないですか。となると副業は無理だし。かといって鈴木千裕みたいにファンを置き去りにするというか、勝手にわめいて騒いで文句言って、そんなんじゃファンもついて来ないじゃないですか。

――マイクパフォーマンス観ても鈴木選手らしいというか……。

平本選手 そうなんです。ファン置き去りなんですよね。あいつがいつどこでマイク持っても、全く観たことのないアニメの第70話みたいですよ。ではなくて、初めて観た人をどうやって自分に惹きつけるか、それを考えるだけでぜんぜん変わってくると思う。これがスター性なのかな、と。

――朝倉選手にはそういった人間力をすごく感じますよね。

平本選手 そうですそうです。やっぱりあれだけ人に慕われて、BREAKING DOWNも格闘技業界ではいろいろ言われていますけど、あれで格闘技を知る人間がいまたくさんYouTubeに流れてきて、貢献してると思うんですよ。入口なんてどこでもいいじゃないですか。あれで格闘技のイメージが悪くなるとかどうのとか、朝倉未来とかBREAKING DOWNに文句言ってるヤツって、そっちにお金持っていかれて自分は稼げなくなって、その不満を言ってるだけでしょう。言いたいことはわかるんです。もし自分がその立場だったら同じことしか出来ない。自分が稼げていない不満をそっちに持ってくなよって思うんです。格闘技界ってお金にならないから古事記みたいなのが多いんでしょうがないですけど。

――ジム経営だけだときつそうです。

平本選手 俺がジム作ったらおまえら文句言っている選手にバイト代払ってやろうかって感じですね。BREAKING DOWNに出ているヤツいっぱいいるじゃないですか。あいつら一人一人は調子に乗っているんですけど、ただあれを抱えてみんなに色んなきっかけを与えてあげてる朝倉未来は親分的な感じとしては立派じゃないですか。俺だったら気が爆発して、「おまえら全員出てけ!」ってなりますから、あんなヤツら(笑)。あれはすごいと思うんですよ、ホントに。コミュ力高いし。すごいっすよ、あんなのまとめてるの。俺だったら血管切れますよ(笑)。

「俺だったら血管切れます」

 

●「自分の信じた仲間、コーチを持つべきです」

平本選手 僕は事実と、出していい情報しか出してないんで、どう思われようが事実だから、絶対このあと手のひら返しがくる、それを待ってるときのドキドキ感めっちゃ楽しいんですよ。で、案の定そうなって。今回の試合も楽しかったですけどね。

――反応がですか?

平本選手 試合終わりの格闘家たちの嫉妬の反応が。バイトでも与えてあげようかなと思うんですけどね、カバン持ちとか。

――先ほども仰っていましたが、ジムを開かれるんですよね。

平本選手 だからジムの清掃員で雇ってあげたいですね(笑)。

――ジムと言えば、前にYouTubeで技術動画上げていたじゃないですか。最近のジムについても言及していましたよね。

平本選手 アイルランドとかアメリカとか行って思うんですけど、日本の打撃を教える技術っていうのはレベルが高いですね。ボクシング大国というか。空手が根強いのか、日本のトレーナーのレベルっていうのは高い人が非常にいるなっていう印象です。アイルランドとかめちゃくちゃなトレーナーもいましたからね、大丈夫かこいつ?っていう。仕事が欲しいトレーナーは、海外を放浪して自分からいろんなジムに行くんですよ。で、色んな選手のミットを持って、反応よかったら雇ってもらえる、みたいな。だからよっぽどの名トレーナーってその国から出られるわけがないんですよ。(JTTの)ビリーとエリーがどうのとか言ってきた時点で、こいつは仕事欲しい連中だなって速攻わかりましたから。いいトレーナーなんていくら積んでもアメリカから来られないですからね。

――ああ、なるほど。パッキャオとフレディ・ローチとか、メイウェザー・ジュニアとシニアとか、タイソンとダマトとか、か。そして堀口恭司選手とマイク・ブラウンとか……。

平本選手 そうなんです。

――堀口恭司選手と天心選手のYouTubeで、「日本の総合がちょっと遅れてるのはチームで戦ってないって堀口選手がおっしゃってて、天心選手も「そうなんですよ!」って言っていたんですけど、その実感はありますか?

平本選手 チームはもちろんあります。あと人の熱量の問題じゃないですかね。チームでやっても弱い人間もいるし。チームでやって強い人間もいれば、ひとりでやって強い人間もいれば、ひとりでやって弱い人間もいるので。人、それぞれの個性ではあると思うんですけど。トップどころに行ったら研究がどうのってなってきますけど、「ビリーとエリーとかが必要以上にこれを研究してきた」とか言ってましたけど、何もなかった。

だから自分の信じたチーム、自分の持つべき仲間ですよね。アイルランド行って思いっきり前十字ケガしちゃったんで、早めに帰国したんですけど、動けないときも、これアイルランドで朝倉戦のキャンプ張るよりも日本に戻って信頼してる大塚さんとか岩崎先生とガッチリ組んで、山田崇太郎さんにフィジカルトレーニング教わって、自分の信じてきた人たちと勝つために……環境は自分で作るものだなと思ったんです。

自分を奮い立たせてやれば絶対に世界に挑戦できるっていうのは思って。そのへんは海外に行って一番気づきましたね。そういうことをJTTはやりたかったのかなと思うんですけど、まだいい戦績ではないじゃないですか、ヒロヤとかも。ビリーとエリーはコミュニケーションにどうしても時間がかかるって、それアウトじゃね? いまやること?みたいな。

――うーん。みなさん頑張っているから、プロの格闘家は全員尊敬してるんですけど。

平本選手 自分の信じたチームとともにやっていくのも大事だけど、絶対に満足しちゃダメですよね。今回だって文句なしで練習上がって、完璧だって思いましたけど、やっぱりどこかで不安があったり。その不安が自分を繊細にして奮い立たせてくれるとか、相手をナメずにできるというか。

――魔裟斗さんが「拳は熱く、心は冷静に」みたいなことを言っていましたけど、試合前はそんな感じですか?

平本選手 ホントそうです。

 

●「試合前は不思議な感じ。仕事にしに行く感じで集中していました」

――試合前はすごくいい顔してらっしゃいましたよね。

平本選手 不思議な感覚ですね、仕事しに行く感じというか。何か集中していましたね。

――朝倉選手はYA-MAN戦のときとは違って気合いが入った顔してるんですけど、力んでいるのかなっていう気がしたんですよ。平本選手と見比べて、顔に出るんだなと思いながら。

平本選手 朝倉信者は朝倉未来の表情ばっかり気にしすぎて、未来顔占い界隈って言われていましたから(笑)。

――あれはあれでしょうがないと思うんですよね。昭和の有名なジャーナリスト大宅壮一の「(男の)顔は履歴書である」って言葉があってあれは当たっていますよ。

平本選手 そうですね。顔つきとか自信がついてきているなって自分の写真を見返してて思うんですけど、大人になってきたなって。

「顔つきが変わってきたと自分でも思います」

 

●「PRIDEの遺志を受け継いだRIZINという大会で自分のPRIDEを表現していきたい」

――ところで、今後なのですが世界を見ても、「UFCとその他」になっちゃってますよね。

平本選手 そうですね。

――ただRIZINは特別枠だと思うんですけど、ONEもベラトールも含めて。あと行くとこはUFCしかないっていうのが世界のMMA界の現実かも知れませんが、今後はどうでしょう。

平本選手 UFC至上主義ではありますけど、J-MMAで4万8000人で会場を埋めて、熱狂を作れた誇りはありますね。PRIDEの遺志を受け継いだRIZINという大会で、「自分のPRIDE」を表現していきたいなっていうのがありました。でも自分たちはやっぱりRIZINでやっているんで、PRIDEを超えたいっていうのがあります。じゃあUFCは実際に世界で一番盛り上がれるのかって、また違う話になるかもしれないですけど。それでもこのRIZINの箱でこれだけ熱狂させられる、その自信と誇りはありますね。

――UFC側が朝倉海選手を採ったのは実力とSNSのフォロワー数も見ていますよね。

平本選手 はい。自分のSNSもとんでもなくさせる自信あります。

――誰かが久保優太選手を和製ミルコ・クロコップって言ってましたけど、平本選手のほうがそうだなと思いますけどね。

平本選手 いや、僕はミルコというよりコナー・マクレガーで(笑)。

――失礼しました。久保優太選手の戦い方とか気になりますか? K-1のストライカーからMMA。

平本選手 「(K-1出身の)俺たち強いでしょ」っていうのはありますね。でも自分が久保優太と戦うとなっても脅威とは全く思わないですけどね。

――同じフェザー級として。

平本選手 はい。久保優太はぜんぜん相手じゃないなと思います。YA-MANのほうが手ごわいかな。

――YA-MAN選手、倒れなかったですね。以前このサイトでインタビューした時「この男の試合にハズレ無し」というキャッチフレーズを付けたほどでした。

平本選手 仮に、YA-MANと久保優太やったら、久保優太キツいんじゃないかなと思うんですけどね。

――どうですか、YA-MAN選手のにじほさんのクダリ。

平本選手 あ。あれ面白くないからやめたほうがいいですよ(笑)。

――そう言う人、多いですね(苦笑)。

平本選手 せっかくあんな素晴らしい大会が終わったあとに、いつまであのネタ引っ張るのか。あれキャバ嬢の売名にしかなってないじゃないですか。あれで結ばれることは100パーないわけだし、結ばれるわけないからああいうふうにしているわけじゃないですか。ホントに結ばれるんだったらあのキャバ嬢も協力しないですからね。

――でも、あの選手も境遇で苦労しています。

平本選手 あいつは1回シメたと思うと何回もやるんですよ。「底辺からやって来ました!」みたいなマイク。一時期毎回やっていたじゃないですか。

――そうですね。なんであんなに仲悪いんですか?

平本選手 いや、仲悪くないですよ。向こうが勝手に思ってるだけです。

――なんか因縁あるのかなと思ってました。

平本選手 僕は勝ったんで因縁はないです、勝ったんでもう許してます(笑)。

――では平本選手が次RIZINでどういう景色をファンに見せてくれるか、ですね。

平本選手 もう無敵ですよ。鈴木千裕をKOして失神してるところを「大丈夫か?」って起こしてあげたいですね。「寝てたけど覚えてるか?」って。

――打ち合いには自信持っている、と。

平本選手 はい。前に鈴木千裕とやった時と今は全然違います。あいつを沈めるイメージを毎日、あの試合終わってからずっと考えています。あいつを沈めたいですね。

――ところで入場曲。僕は『TRAIN-TRAIN』が好きなんですけど、どうでしょうか。

平本選手 あれはもう学生時代のなんで(苦笑)。

――ブルハはもうやめたんですか?

平本選手 あんまり気合い入らないんですよね、いい歌だなと思って逆にしんみりしちゃうんですよ。ブルーハーツは元気なときよりも元気ないときに聴きたいですね。

――今日は答え合わせができました、ありがとうございます。

平本選手 ありがとうございました。あ。妻です(と紹介される)。

(※取材時は榊原社長の記者会見を見る前。掲載は見てからになります。@久田将義 写真@菊池茂夫)

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TABLOとは アメリカが生んだ、偉大な古典ミステリーの大家レイモンド・チャンドラー作品の主人公フィリップ・マーロウの有名なセリフがあります。 「強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない」 人が生きていく上で、「優しさ」こそ最も大切なものであることを端的に表現した言葉です。優しさとは「人を思いやる気持ち」であり「想像力を働かせること」です。弱者の立場に立つ想像力。 「人に優しく」 これは報道する側にも言えることだと思います。 現在、ヘイトニュース、ヘイト発言、フェイクニュースがネットの普及に従い、増大しており、報道関係者の間では深刻な問題となっています。そこには「人に優しく」という考えが存在していません。 なぜ、ヘイト(差別)ニュースがはびこるのか。「相手はどういう感情を抱くのか」という想像力の欠如がなせる業です。ヘイトによって、人は人に憎悪し、戦争が起き、傷ましい結果をもたらし、人類は反省し、「差別をしてはならない」ということを学んだはずです。 しかし、またもヘイトニュースがはびこる世の中になっています。人種差別だけではありません、LGBT差別、女性差別、職業差別等々、依然としてなくなっていないのだな、ということは心ある人ならネットの言論にはびこっていることに気づいているはずです。本サイトはこのヘイトに対して徹頭徹尾、対峙するものです。

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