AIとのチャットでネガティブ思考脱却を目指すアプリ「Feeling Great」リリース|著名精神科医のBurns博士「研究の集大成」
アメリカの国立精神衛生研究所がまとめたデータによると、2021年にはアメリカの成人人口の約23%にあたる5780万人が精神疾患を抱えて生活していた。しかし、メンタルヘルスケアへのアクセスは容易ではない。42%のアメリカ人にとって、高額な費用と保険適用範囲の狭さがハードルとなっている。
また、実際に治療を受けられるのが1週間以上先になる、クリニックまで車で1時間以上かかるといった物理的な問題も。
著名な精神科医David Burns博士が起業&アプリリリース
こうした問題を解決するメンタルヘルス専門アプリが、8月8日にリリースされた「Feeling Great」だ。うつ病や不安症に対処する同アプリは、世界的に著名な精神科医にしてベストセラー作家のDavid Burns博士が中心となって開発したもの。
アプリリリース同日に、David Burns博士、Matt Pierce氏、Jeremy Karmel氏と共同でのFeeling Great Corporation設立および800万ドルの資金調達も発表された。
Burns博士はベストセラーとなった『Feeling Good』(『いやな気分よ、さようなら』星和書店)、その続編『Feeling Great』(日本語訳未)で知られる著名な精神科医。重度のうつ病や不安症の患者と4万時間以上のセラピーを行った実績を有する博士の著書は世界中で700万部販売、ポッドキャストは800万回ダウンロードを誇る。
著書『Feeling Great』と同じ名を付けたアプリについて、博士は「私の精神医学と認知行動療法の生涯の研究の集大成であり、何十年もの研究で実証された技術を人々に直接届けます」とコメントした。
AIとのチャットでネガティブ思考を脱却
「ネガティブな感情を素早く軽減し、喜びと自尊心を高める」と謳う同アプリ。博士が独自に生み出したT.E.A.M. (Testing, Empathy, Assessment of Resistance and Methods) アプローチに基づき、自然言語によるインタラクティブなやり取りでAIがユーザーをガイドする。
使い方は簡単で、基本的にはAIとのチャットを進めていくだけだ。たとえば「自分は悪い親なんじゃないか」と打ち明けると、「ネガティブな感情は常にコアバリューの裏返し。子供を大切に思っていることが分かりますよ」、「典型的なゼロヒャク思考ですね」といった客観的な指摘がなされる。
悲しみや落ち込み、不安、罪悪感、劣等感などの種類別に分かれた感情がどれくらい強いのか、バーをスライドさせて数値で把握するのだが、たとえば最初に「80%」とした悲しみがアプリ使用後には「10%」まで改善されるといった効果を主張している。
同アプリの有効性について、スタンフォード大学の研究チームが第三者レビューを行った。これによると、ユーザーは「7種の深刻な感情」(抑うつ、不安、罪悪感あるいは恥辱、劣等感、孤独、絶望、怒り)を55から60%も削減できたと報告したとのことだ。
現在、App StoreおよびGoogle Playで入手可能で、対象年齢はそれぞれ17歳以上、18歳以上となっている。また、言語は英語のみで日本語を含め多言語は未対応。
アメリカの「メンタルヘルス・クライシス」解消をめざす
今回のシードラウンドは、Learn CapitalおよびTitleTownTechが主導したもので、Lux Venturesを含む5社のVCが追加参加。調達資金はアプリの開発継続と品質改善に使われる予定だ。
Learn Capitalの設立者兼マネージングパートナーであるRob Hutter氏は、「毎年アメリカの成人の5人に1人がメンタルヘルスに問題を抱える時代でありながら、セラピー費用が高額過ぎて多くの人が利用できずにいる」と現状の問題を指摘。
TitleTownTechのJill Enos氏も、「便利で費用対効果が高く、結果が出せるメンタルヘルスツールに対する需要はこれまでになく高まっており、AIを搭載したFeeling Greatは、そのニーズに強力に応える」とアプリの有効性を強調した。
Burns博士は、「当社の目標は、効果的なメンタルヘルスケアをより手軽に利用できるようにすることです」とコメント。「単に気分が良くなる(feeling good)だけでなく、最高の気分(feeling great)になってほしい」と語った。
参考元:
Newswire | Press Release
Feeling Great
(文・五条むい)
ウェブサイト: https://techable.jp/
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