細胞間コミュニケーションを研究するMoleculent|機能生物学や疾患の理解に進歩をもたらす
今年6月11日、スウェーデンを拠点に人の組織内における細胞間コミュニケーションに関する技術を研究するMoleculent AB(以下、Moleculent)が、2,600万ドルの資金調達が申し込み超過により終了したと発表した。この資金調達はARCH Venture Partners(ARCH)とEir Venturesが共同で主導し、既存の投資家も参加している。
このプロジェクトを機にARCHのPatrick Weiss氏がMoleculentの会長に就任し、ARCHのSean Kendall氏とEir VenturesのMagnus Persson氏も取締役会に加わった。
細胞間の相互作用を検知・観察するプラットフォーム
Moleculentは、人の生物学の分子基盤に関する新たな知見を活用した、先進技術対応製品を開発することを使命としている企業。同社は、科学者が臨床組織内で直接細胞間コミュニケーションをマッピングする機能生物学プラットフォームを開発している。
この新しいアプローチにより科学者は、健康な細胞がどのように機能し、病気の細胞がどのように異なるのかを複雑ネットワークレベルで観察できる。
例えば、腫瘍内の細胞間コミュニケーションについて明らかにすることは、薬物反応に関与するシグナル伝達経路や分子メカニズムの実用的な理解に寄与する。多くの異なる受容体とリガンド間の細胞間相互作用を組織の文脈で研究することで、より包括的な視点を科学者に提供し、細胞間のコミュニケーションや疾患経路の解読が可能になるのだ。
機能生物学におけるパラダイムシフト
Moleculentの機能生物学プラットフォームの技術は、生物学的システムの理解にパラダイムシフトをもたらす。
Moleculentの共同創設者兼CEOであるOlle Ericsson博士は「DNA、RNAおよびタンパク質発現の解析では、細胞がどのように協力しているかを直接測定することはできない。組織内の細胞間コミュニケーションネットワークを理解することは、機能生物学や人疾患の理解に大きな進歩をもたらす可能性がある」と述べている。
Weiss氏も、「空間マッピング技術は、隣り合う細胞同士の関わり合いに関する理解を一変させた。次のフロンティアは、個々の細胞ネットワーク間の重要なコミュニケーションを測定することだ」と述べた。
業界のベテラン企業・先進企業との協力により研究が加速
Moleculentは、ライフサイエンスツールの開発とグローバルな商業化において専門知識を持つ、以下のような業界のベテラン企業チームによって率いられている。
・Halo Genomics(Agilentに買収)
・Vanadis Diagnostics(Perkin Elmerに買収)
・Spatial Transcriptomics(10x Genomicsに買収)
また、画期的なライフサイエンスおよびテクノロジー企業の創設と投資を行うARCHや、斬新な治療法を開発する優れた起業家を擁する民間企業に投資するライフサイエンスのベンチャーキャピタルファンドEir Venturesとも提携。生物学システムの理解をさらに深めるための有効なプラットフォームを、科学コミュニティに提供していく。
参考・引用元:
Moleculent AB
Business Wire
(文・せな)
ウェブサイト: https://techable.jp/
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