【調査レポート】燃料電池市場、2028年までに2兆5千億円規模に成長か
地球温暖化対策とSDGsの観点から、クリーンエネルギーへの注目が高まる中、燃料電池市場が大きな成長を見せている。
グローバル調査会社Technavioは燃料電池市場の動向に関する最新レポートにて、世界の燃料電池市場は2024年から2028年の4年間で、約252億6000万米ドルの規模に達し、年平均成長率は30.57%に上るとの予測を発表した。
欧州が市場の36%を占める結果に
燃料電池とは、水素と酸素の化学反応により電気を生み出す次世代のクリーンエネルギー技術だ。化石燃料に頼らない発電が可能であり、二酸化炭素の排出がないことから、脱炭素社会の実現に向けた有力な選択肢として注目を集めている。Technavioのレポートでは、燃料電池を「PEMFC」「PAFC」「SOFC」などのタイプ別に分析。特に自動車や定置型発電に用いられるPEMFC型の市場が拡大すると指摘した。また、輸送用、定置用、ポータブル機器用の3つの用途別に市場を調査。輸送用が最も大きな割合を占めるとしている。
地域別では、欧州が市場の36%を占め、最も高い成長が見込まれる。次いで北米、アジア太平洋、中東・アフリカ、南米の順となる。主要国としては、米国、日本、ドイツ、英国、中国が挙げられた。
燃料電池市場における課題
燃料電池市場の拡大には、いくつかの課題も存在する。まず、高い生産コストは大きな障壁だ。水素を製造するための電気分解はエネルギーを大量に消費するため高コストであり、加えて水素ステーションの建設・維持にも多額の費用がかかる。複雑な材料や規模の経済の低さなども、市場成長を阻む要因となっている。
このほか、技術的な進歩も、燃料電池の大量普及には欠かせない。燃料電池の種類や耐久性の向上が求められる。従来の電源との価格の差をなくすことも目標のひとつだ。
再生可能エネルギー源としての水素の利用は拡大傾向にあるが、利用可能性とアクセシビリティには依然として懸念がある。さらに、供給の安定の確保は、消費者の信頼を得るための鍵となる。
燃料電池市場における日本企業への期待
Technavioのレポートでは、富士電機、ホンダ、京セラ、三菱重工業、パナソニック、東芝などが取り上げられており、市場における日本企業への熱視線が感じられた。高い技術力と品質管理能力で知られる日本企業はこの分野をリードしていくことが期待されている。
すでに具体的に動いている企業もある。スイスに本社を置く日立エナジーは今月、世界的な電力需要の拡大に対応するため、2027年までに45億ドルを投資し、変圧器の製造能力を大幅に増強する計画を明らかにした。変圧器は、再生可能エネルギーの統合や輸送機関の電化など、エネルギーシステムの脱炭素化に不可欠なコンポーネントだ。
脱炭素社会の実現に向けた政府の取り組み
各国の政府や企業は、脱炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーや水素利用に積極的に投資を行っている。日本でも、2050年カーボンニュートラルの目標達成に向け、グリーン成長戦略が策定され、水素関連技術に8000億円の投資が予定されている。企業だけでなく政府も注目する燃料電池がつくるクリーンな未来に期待大だ。
参考・引用元:
PR Newswire
Technavio
日立エナジー
経済産業省「水素基本戦略」
(文・嘉島亜麻実)
ウェブサイト: https://techable.jp/
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。