なぜネパール人経営のインドカレー店は急増した? その謎と真実に迫ったノンフィクション
今やいたるところで見かけるようになった、ネパール人が経営するインドカレー屋さん。ランチは甘いバターチキンカレーにふわふわの大きなナンがお決まりで、中には日替わりカレーが用意されていたり、「ごまナン」や「チョコナン」なんて変わり種を選べたりするお店もあります。でも、どこに行ってもだいたい同じメニューが並んでいるのはなぜなのでしょうか。そういえば、あまり深く考えたことがなかったかも……! 巷で「インネパ」とも呼ばれるこれらのお店の謎を追うとともに、その裏にある真実に迫った一冊が、室橋裕和さんの新著『カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」』です。
現在、日本にはなんと4000軒~5000軒ものネパール人が営むカレー屋さんがあるといいます。外国人でも比較的手を出しやすい商売が飲食であり、ネパールから来日した人は日本のインド料理店で8~10年ほど働き、それから独立するのが一般的だそうです。彼らは「いかに日本で稼ぐか」「いかに日本で成功するか」との思いから、斬新なアレンジを加えるのではなく、雇われて修行していた店を模倣するという形を取ることが多いのだとか。こうして、「ひとつの店から暖簾分け的にどんどん枝分かれしていって、同じような店が日本全国に増殖していった」(同書より)というのが大まかな流れとしてあるようです。
この手のお店が急増したのは2010年頃。ではその前はどうだったのでしょうか。同書では、日本のインネパブームの「原点」といえる料理やレストランを探るべく、東京だけでなく名古屋や北海道などにも足を運んで取材をしています。そうして当時の経営関係者などから話を聞き、その経緯を追う中で見えてきたのが”インネパの闇”ともいうべき部分です。
「稼げそうだからと日本に来ては、この国の社会制度もよくわからないまま、むやみやたらにコックとその家族が増えていく。そこにやっぱり歪みが出てきてしまう」(同書より)
そうした不満と不安を抱えたカレー屋ファミリーは多いといいます。給料面や待遇面で搾取されるコックが出てきたり、夫婦ともにあまりの忙しさから子どものケアができず、学校からドロップアウトしたりグレたりする子どもが出てきたり……。現在日本におよそ15万人ものネパール人が暮らしている中で、「そろそろ国なり自治体なりがしっかり対応すべき時期に差し掛かっているのかもしれない」(同書より)と室橋さんは記します。
丁寧な取材のもと、ネパール人が営むインドカレー屋さんの真実に迫ったノンフィクション。移民ならではの苦労や悲哀、したたかさといったスパイシーな部分も描いた一冊、皆さんはどのように読むでしょうか。
[文・鷺ノ宮やよい]
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