【SusHi Tech Tokyo 2024】進化を遂げる資源回収。最新マシンで自動仕分け、ポイント付与も
ポリエチレンテレフタレート(PET)を素材とするペットボトルは、いまや立派な資源である。
粉砕して新たなペットボトルを作る水平リサイクルもいいが、繊維に加工して衣類を作る手段もある。PETボトルリサイクル推進協議会によると、回収されたペットボトルは食品用トレイやパウチ、卵のパックなど、さまざまな製品として再生されていることがわかる。
消費者はそれを知っているから、ゴミ箱に入れる前にペットボトルを洗浄してラベルを剥がし、キャップを取っている。しかし、そこまで手間をかけたことに対して、多少なりとも報酬があってもいいのではないだろうか?と筆者は思う。
「仕分け」と「粉砕」ができるペットボトル回収機
一般家庭では、100円ショップなどで買える足踏み式のペットボトル圧縮器が使われることも多い。圧縮され、資源ごみとして回収されたペットボトルは回収工場に運ばれ、透明か色付きかに分けられ粉砕される。こうした仕分けは作業員が目視と手作業で行っている。缶や瓶が混ざっていることもあるそうだが、当然それも作業員の手で排除される。
消費者がペットボトルをゴミ箱に入れる段階でこの「仕分け」と「粉砕」ができたとしたら、作業工程の大幅なショートカットになるのではないだろうか。
ecocentreのPlastichero AI Robotは、それを1台で可能にする回収機だ。名称に「AI」とあるとおり、AI技術が活用されている。ペットボトル以外の缶や瓶となどが入れられると、Plastichero AI Robotが検出。ペットボトルの色による仕分けも同様だ。ペットボトルは圧縮工程を省いて即座に粉砕される。これにより、資源化の過程で大幅なコストカットが見込める仕組みだ。
ペットボトルがキャッシュレス決済ポイントに
筆者がecocentreのブースでいろいろと話を聞く中で、“コカ・コーラ”の話で盛り上がった。
米アトランタのThe Coca‑Cola Companyも日本コカ・コーラ社も、現在は「再生ペットボトル100%」の方向性で一致している。ラベルレスの取り組みも進められ、今や「ペットボトルは再生品が当たり前」という状況だ。言い換えれば、再生品ではないペットボトルは使わないということだ。メーカー側が厳格な姿勢を示すようになった今、消費者側も「ペットボトルは資源」であることを改めて認識する必要がある。しかし、リサイクル意識を無理に押しつけると消費者に敬遠されかねない。それを回避しながら消費者に動機付けするため、Plastichero AI Robotにはなんとキャッシュレス決済のポイント還元設計も施されている。
PayPay、au PAY、d払いなどの各種バーコード決済、交通系ICカード、WAON、nanaco、QUICKPayなどのFelicaタッチ決済のポイント還元に対応しているのだ。つまり、やや下世話な表現をすると「ペットボトルをリサイクルに出せば出すほどお金で還元される」のだ。今までポイ捨てしていたような人でも、これを知ったら行動が変わるのではないだろうか。専用アプリでリサイクル貢献度やポイントを確認・利用
Plastichero AI Robot自体がIoT機器なので、具体的な回収量や累計重量、作動状況、CO2削減量なども管制システムがモニタリングしてくれる。利用者はPlasticheroアプリで「自分がどれだけ資源回収に貢献したのか」を実感できる仕組みになっているのも、ひとつの楽しみにつながる。
韓国語版アプリでは、稼いだPHT (Plastichero)メインネットコインやPTH-ERC20トークンを簡単に貯蓄できるとのこと。貯めたコインは、アプリを経由して提携企業のギフト券や商品と交換可能だ。
こうして誰もがペットボトルを資源に回す習慣をが確立されれば、CO2の大幅削減にも直結する。コカ・コーラの日本公式サイトを見ると、「100%リサイクルPETボトルは、1本あたりCO2排出量を約60%削減」するとある。6割のCO2排出削減は、絶大な量と言っていいだろう。メーカーの努力により、店頭に並ぶペットボトル飲料のすべてが再生品という状況が実現しようとしている。
リサイクル全体で最後のハードルである「出す側の負担軽減」と「資源化までの工程削減」も、Plastichero AI Robotのような回収機の登場で乗り越えられる日も近いようだ。
日本では農協の施設に設置する構想も
ブースで聞いた話では、日本全国の農協施設にPlastichero AI Robotを設置する構想があるという。
大都市圏外や地方都市の住民にとって、農協施設は極めて身近な存在だ。筆者は静岡住まいだが、農家ではない母も何かにつけて近くの農協の施設へ足を運び、直売の野菜を買ってくる。最近では農協に加入しない農家が増えたと聞くが、それでも筆者の身の回りでは、農協は地域住民に大きな影響力を発揮しているという肌感がある。どこに設置したら日本人の生活に浸透するか、新しいものを普及させるためにecocentreがよく研究していることがうかがえる。
21世紀も20年以上が経った今、だれもがCO2削減やペットボトルの100%再生といった環境保護事業に無関心ではいられないはずだ。こうした事業に多くの人や企業が本気で取り組んだとしたら、その影響は大きなものになるだろう。
ポイ捨て防止にも貢献?
パンデミック以前の話だが、筆者はインドネシアのゴミ問題について取材したことがある。海岸に打ち上げられた無数のプラスチックゴミ、特にペットボトルが目立つ光景は今もはっきり思い出すことができる。当時はこのゴミを前に、市民ボランティアが奮闘していた。しかし、ペットボトル回収が手軽な副収入になることが広く認識され、なおかつそれを実現するIoT機器が身近に設置されたら、ボランティアの出番はなくなる可能性がある。それに代わって、ポイ捨てされたペットボトルを探し回る業者が現れるかもしれない。
ペットボトルの仕分けから粉砕、ポイント付与まで実施できるPlastichero AI Robotの出現と普及により、ゴミ回収やリサイクル業界にも変革が起こりそうだ。いずれは我々の生活を下支えするインフラストラクチャーとなるのだろうか。
参照:
Plastichero
ecocentre
ecocentre(PDF資料)
(文・澤田 真一)
ウェブサイト: https://techable.jp/
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