モモコグミカンパニー、“唯一無二の本になったのでとても達成感があります”『コーヒーと失恋話』発売記念 記者会見レポート

モモコグミカンパニー、“唯一無二の本になったのでとても達成感があります”『コーヒーと失恋話』発売記念 記者会見レポート

モモコグミカンパニーの6冊目となる著書『コーヒーと失恋話』が2024年5月20日に全国書店にて発売された。発売当日に芳林堂書店高田馬場店にて、本人登壇のもと記者会見が行われ、刊行にあたっての思いが語られた。

本書は、オフィシャルWEBサイト「うたた寝のお時間」で連載されてきた「コーヒーと失恋話」に、同連載からインスピレーションを得た「恋愛」をテーマにした書き下ろし小説10編を加えた、モモコグミカンパニー(以下、モモコ)にとって初めての短編小説集。会場には多くのメディアの記者が取材に訪れ、注目度の高さが伺えた。会見は、発売元「株式会社SW」代表の西澤裕郎氏による司会進行のもと、代表質問をする形でスタートした。

『コーヒーと失恋話』を手に拍手で迎えられて登壇したモモコは、「私はグループ(BiSH)時代にエッセイを出したり、コロナ禍で『御伽の国のみくる』という小説を初めて書いたりしてきたんですけど、その頃は自分が6冊も本を出せると思っていなかったので、すごく嬉しいです。今回の本は、エッセイと小説の要素がどちらもあるので、唯一無二の本になったなと思っていて、とても達成感があります」と、発売日を迎えた心境を語った。タイトルについては、「純喫茶が大好きで、グループ時代にすごく忙しかったときに、憩いの場所として通っていたことがあって、ずっと純喫茶の本を出したいなと思っていたんです。連載を始めたのはコロナ禍だったんですけど、コロナではすごく失うものが多くて、失恋とかに限らず、今まであったものがなくなって1人に向き合う時間が増えたと思うんです。それと純喫茶で過ごす時間が私の中でリンクしたことから、『コーヒーと失恋話』というタイトルにしました」と理由が明かされた。WEB連載開始にあたっては、喫茶店のマスターに失恋話を訊こうと思っていたというが、「“プライベートなことなのであんまり話したくないです”というマスターもいて。それからは、生きづらい世の中をどうやって生き抜いてきたかみたいなマスターの知恵とか、お店をやっていてどんな景色を見てきたのかなっていうお話を訊いていました。本にするにあたっては、『コーヒーと失恋話』っていうタイトルの原点に立ち返って、失恋とか恋愛に関することを織り交ぜて短編小説を書かせていただきました」。

喫茶店の取材は、アポ取りからインタビュー・撮影まで自らこなしてホームページに掲載していたそうだ。「私はゼロからお話を作るのがすごく好きで、そこに喜びを感じるようなタイプなんですけど、グループ時代に始めたということもあって、それまでは結構用意されたお仕事しかやってこなかった中で、与えられた仕事よりも自分でより実感のあることをしたいっていう気持ちがありました。それと、インタビューを自分でやることによって、インタビュアーさんの気持ちも知りたいと思ったし、それを記事にすることもやったことがなかったことなので、未知の領域に足を踏み込むようなテーマで、全部自分でやらせていただきました」。

モモコグミカンパニー、“唯一無二の本になったのでとても達成感があります”『コーヒーと失恋話』発売記念 記者会見レポート

取材時に印象に残ってることとして、「グループ時代は与えられた仕事なので、“モモコグミカンパニーです”って言えばみんなが知ってくれているような、恵まれた環境でお仕事をさせていただいたんです。でも自分でゼロからアポ取りをすると、名前も変だし、「誰だよ?」って言われるんですよ(笑)。それが新鮮でしたね。その分むずかしいこともあって、お断りされるときは悲しかったです。1つのお店を取材しようと思ったら、最初は普通にお客さんとしてお店で過ごして、3回目ぐらいで取材を申し込むようにしていたので、それで断られたらショックでしたね。一筋縄ではいかないなって思いました」と、ゼロから行動して記事にする大変さをしみじみと振り返った。

そうしたお店の取材記事と併せて短編小説が綴られているのが本書の特徴だ。“背中を押すような小説が描きたいと思っていた”というモモコ。「ただ失恋といっても悲しいだけじゃなくて、私たちって誰かと一緒にいるときもあれば1人でいるときもあるけど、その中で悲しいことや失ってしまうことがあっても、結局1人で立ち直って明日も生きなきゃいけないじゃないですか?そういうときに、ポンと背中を押せるような小説を書こうって意識しました」。

喫茶店を特集した本は世の中にたくさん発売されているが、本書の読みどころについては、他にはない内容に自信を見せた。「マスターの人柄に迫って人間味を引き出す取材をするのがテーマだったので、ただ “ここのお店のプリンが美味しいですよ” とか、“この店の雰囲気はこうですよ” とかじゃなくて、人対人で話を訊いて、人として感じたことを記事にしてそこから小説を書くっていう本は、私は今まで見たことがないので、唯一無二の本になったなと思っています」。

短編小説については、「私は登場人物を考えるのが、小説を書く中で一番好きな作業なんですけど、10篇の失恋をテーマに掲げて書いた中で、それこそ十人十色と言いますか、主人公が全員かぶらないようにしたんです。境遇とか年齢、おじさんもいたり小学生もいたり、私が共感できるような子もいたりとか、普通のいろんな世代の方の背中を押せたらいいなと思うし、“自分ごと”のように読んでほしいなと思います」と語った。また、お気に入りの話として、「「10数えるうちに」っていうタイトルのお話があって、これはおじさん世代みたいな話で、初めてそういう主人公で書いてみたんです。最初は、全然気持ちがわからないから書けないかなと思ったんですけど、すごく想像力を働かせたり、マスターの話を思い出したりとかして書いたので、私的に男性の方はどうなんだろう?って、感想が気になるお話になってます」。

モモコグミカンパニー、“唯一無二の本になったのでとても達成感があります”『コーヒーと失恋話』発売記念 記者会見レポート

後半は、質疑応答が行われた。自らアポ取りをしたときに、モモコグミカンパニーを知ってる人の割合についての質問に対しては、「知らない人がほとんどでしたね。私が好きで行っていたお店、クラシックが流れてる老舗の名曲喫茶のような純喫茶があったんですけど、そこのマダムに取材のお話をさせていただいたときに、「モモコグミカンパニーという名前で音楽活動をしています」って言ったら、どういうジャンルの音楽をやっているのか訊かれたので、「パンクです」って答えたら、正反対すぎてそれが原因で断られたことはありますね(笑)。もちろん、それでそのお店が嫌いになるとかではなかったんですけど、やっぱり純喫茶ってすごく閉鎖的な空間で、そこがまたいいんですけど、入りづらいところもあるし、そこが結構難しいなと思ったことはたくさんあります」と、先ほども話にあった “一筋縄ではいかない” 所以を実感を込めて語った。記者の「クラシックが流れるお店なら(BiSHの)「“オーケストラ”を歌ってます」って言えばOKだったのでは」との提言に対しては、「そうですね(笑)。まあ、そもそも取材が駄目だったのかもしれないんですけどね」と、はにかみつつ回答した。

取材時に特に難しかったこととして、「すごく楽しいことでもあったんですけど、インタビュアーさんの気持ちがよくわかったっていうか。自分が“こういうことを話してほしい”と思っても、結局流れが変わってしまったり心を開いてもらえなかったり、話を持っていくのがすごく難しかったです。最初は、質問項目をすごく考えて話の流れを作っていこうって思って事前準備をしていたんですけど、途中でそれだとあんまりよくないなと思って、直接話して雑談の中で出てきたこととかを大切にして、自然の流れを意識するようにしたら、取材がしやすくなったなっていう感覚でした」。

こうした経験から、自分で喫茶店をやりたいと思ったのだろうか。「もともと興味はあったんですけど、マスターにそういう話をすると、“そういう人はできない”って言われました。喫茶店経営って夢がある感じがするけど、結構大変なんだよって。そこで現実を見せつけられた感じはあったので、やらなくていいかなと思いました(笑)」。

長編と短編小説の違いについての質問が飛ぶと、「短編小説の方がめっちゃ難しいと思いました。起承転結をその中でまとめてっていうことなので、読みやすくする、話の流れを考えるのが得意な人の方が短編小説を書きやすいのかなと思います。ただ、今回は1日1つお話を考えようみたいな感じで、結構ポンポンポンッて出てきて話に困ることがなく10篇ができました。長編にもまた挑戦したいなって思います」と作家としての今後についても触れていた。

フォトセッションを挟んで、会見の最後に改めて本書についてアピール。

「今日はみなさん集まっていただきありがとうございました。6冊目にして、一番長い期間、3年ぐらいかけて書いた本です。エッセイと小説という、自分の理想の本になったので、是非よろしくお願いします!」

今後、『コーヒーと失恋話』の発売記念イベント「うたたねお茶会」が、6月1日(土)2日(日)の2日間、東京・代官山 晴れたら空に豆まいて、6月9日(日)LOFT9 Shibuyaにて開催される。著者のモモコグミカンパニーが、『コーヒーと失恋話』の小説を朗読していくというもので、この日のためにモモコが焙煎したオリジナルコーヒーも用意され、特別なコーヒーを飲みながら朗読会を楽しむことができるスペシャルなお茶会となる。

PHOTO:星野耕作
取材・文:岡本貴之

モモコグミカンパニー、“唯一無二の本になったのでとても達成感があります”『コーヒーと失恋話』発売記念 記者会見レポート

書籍情報

『コーヒーと失恋話』
著者:モモコグミカンパニー
発売日:2024年5月20日(月)予定
価格:1,800円(税抜き)/1,980円(税込)
ISBN:978-4-909877-09-3 
発売元:株式会社SW
もくじ
Ⅰ アール座読書館「微熱のバレンタイン」
Ⅱ 物豆奇「三度目の星野源」
Ⅲ 邪宗門「アヤと麻弥」
Ⅳ 喫茶天文図舘「彼女の電話番号」
Ⅴ 新宿DUG「優雅な生活」
Ⅵ rompercicci「ブラックてるてる坊主」
Ⅶ mosha cafe「嘘じゃない、おまじない」
Ⅷ 霧ヶ峰 富士見台「10数えるうちに」
Ⅸ クラシック「散らない花びら」
Ⅹ 喫茶 うろひびこ「風の音を聴く」
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