女性俳優らがアクション俳優からの“性暴力”被害を訴え 映画『1%er ワンパーセンター』公開延期・中止のきっかけが明らかに

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映画『1%er ワンパーセンター』の東京・新宿武蔵野館での2023年11月からの封切りに際し、同作主演・坂口拓氏からの“性暴力”被害を訴える抗議のメールが同館に送られていたことが、ガジェット通信独自の取材でわかった。

新宿武蔵野館での公開前に送られた“性暴力”被害を訴えるメール

映画『1%er ワンパーセンター』は、アクション俳優・アクション監督の坂口拓氏が主演、山口雄大監督がメガホンをとった映画。当初、2023年11月より東京・新宿武蔵野館から順次公開を予定していた。

抗議のメールは、女性俳優、坂口氏のアクションチームの元マネージャー、二人を支援する有志の映画業界人3名による連名で、2023年8月17日(木)に新宿武蔵野館宛に送付されたもの。メール内では、「強力な酒を飲ませたあとに性行為をせまるということを繰り返してきた」などと、坂口氏から複数回の“性暴力”を受けたという内容がつづられているほか、「トレーニングと称して坂口氏は不当な暴力をふるうことも繰り返してきました。動画での証拠も残っております」といったことが、一部抜粋証言として記載されている。

坂口氏については、映画監督の園子温氏が出演女優らに性加害をしたと2022年4月に報じられた問題で、“性加害につながったとされる飲み会”の主催者であったことが、坂口氏自身のYouTube動画(2024年3月現在は非公開)で明らかになっていた。また、坂口氏と所属事務所は、園・坂口両氏を告発した元女優と一時和解を試みていたが、話し合いを打ち切り、2022年5月6日付で週刊誌に対して訴訟を提起する旨を予告。その後、2022年12月に元女優は自死している。

女性俳優らはメールで、坂口氏らが一連の問題を公に解決しないまま映画を公開することについて、「重大な二次加害であると同時に、著しく人間の尊厳を脅かす行為」「加害者が簡単に復帰できてしまう前例をつくる行為」などと指摘。同作の上映中止と新宿武蔵野館の見解を求め、坂口氏の行為について詳細な説明を行うことも新宿武蔵野館に申し出ている。また、ガジェット通信の取材に対し、女性俳優らは、2024年3月現在まで同館からの返信がないことを明かした。

新宿武蔵野館は、2023年10月2日(水)付で「諸般の事情」により映画『1%er ワンパーセンター』の上映を中止することを公式ホームページなどで発表(2024年3月現在はページ削除)。同年10月6日(日)には、配給元のアルバトロス・フィルム/ニューセレクト株式会社が、「総合的な判断」により同作ロードショー公開の延期をプレスリリースで発表している。さらに、2023年11月10日(日)には、坂口氏の所属事務所で同映画製作元のWiiBER代表・太田誉志氏が、Xで公開延期について独自の見解を発表している。

ガジェット通信の取材に対し、女性俳優らを支援する映画業界関係者の一人は、坂口氏にかけられた“性暴力”疑惑とは無関係の俳優の名誉をSNS投稿によって棄損した疑いで、自身が都内警察署で任意の事情聴取を受けていたことを明かした。一方で、新宿武蔵野館に坂口氏からの“性暴力”を訴え出た女性俳優らに対しては、2024年3月現在まで、警察を含むいかなる第三者機関のヒアリング・調査も行われていないという。

こうした中、2023年12月上旬には、ガジェット通信に対して、『1% ワンパーセンター』宣伝会社の担当者から「坂口氏が自身にかけられた性加害関与疑惑もふくめて包み隠さずお話するので、インタビューしてほしい」との打診があった。記者はこれに対し、「女性俳優らが訴え出ている内容も含め、自由に質問させてほしい」「インタビューが坂口氏に不利な内容となっても記事の公開を拒否しない」との条件をつけて了承。しかし、坂口氏側は2週間あまり検討した結果、「今回は別の媒体にインタビューをお願いすることにした」と返答している。同担当者によれば、「坂口氏の説明のみを載せてほしい。独自の取材内容とともに掲載されたくない」と坂口氏の事務所が希望したため、ガジェット通信からの取材を見送ることにしたのだという。

ユーロスペースでの『1%er ワンパーセンター』公開も中止に

武蔵野館での公開中止、ロードショー延期を経て、『1%er ワンパーセンター』は2024年3月23日(土)から東京・ユーロスペースで公開されることが決定していた。しかし、映画公開発表の翌日となる3月2日(日)夜には、同館の公式X(旧Twitter)が“上映決定に関わりのないスタッフ”有志名義で、「当該作品の主演・坂口拓氏には園子温監督の性加害に加担した疑惑が報じられており、本人は無実を主張しているものの、未だ問題に決着がついていません。被害に遭った方々への二次加害などを考慮すると、お客様に説明がないままの上映は妥当でなく、スタッフからも延期または中止を求めております」と声明を発表。その後、北條誠人支配人の名義で、「『1%er』の上映を中止します。詳細は後日、お伝えします」とXにて発表。3日(月)夜には、ユーロスペースの北條支配人が再び同館公式Xにて、「『1%er ワンパーセンター』の上映中止について」と題した声明を発表。「判断を誤りました」「上映が二次加害を引き起こす可能性がある」「事実がはっきりしないままでの上映が今は許されないと考えた」などと説明した。

さらに同日、WiiBERの太田氏は、同社公式サイトにて声明を公開。「先般発表させていただきました映画『1%er ワンパーセンター』の公開に関してSNS上での様々なお声を目に、耳にしております。しかし、あまりにも実状と異なる声が多く、なによりも我々を信じてくれた方々にご迷惑がかかる状況を避けたく思っております」とはじめ、「我々も本作の劇場公開に対し非常に慎重に対応をしておりました。何度も劇場と配給会社とで議論を重ね、弊社所属俳優の性加害疑惑への潔白を証明してから、胸を張って劇場公開することが誠意であり、何よりも本作を楽しみにしていただいている皆様100%楽しんでいただくための唯一の方法であると信じておりました」「そして我々は、第三者として公的機関である警察の力も借りることで、その潔白を証明してまいりました。そのため、私自身も所属事務所社長として、本作主演俳優は性加害者ではないと結論づけ、その経緯や内容に関しても、劇場に報告させていただきました。加えて、その過程で、性被害にあった方が複数いるとおっしゃっていた方は、真偽も定かになっていないような情報を発信した事で名誉棄損等で刑事告訴され、現在書類送検中であるということも警察の調査で発覚しました」などと発表。「近日中に弊社所属俳優への疑惑が週刊誌に掲載されてからの度重なる劇場公開の中止と延期の経緯、および開示できる限りの調査内容など、今回の一連の経緯などもお伝えできればと考えております」と、今後の方針を明かしている。

WiiBERが発表した「本作主演俳優は性加害者ではないと結論づけ」た理由、「公的機関である警察の力」を借りたという調査の対象や内容、坂口氏からの“性暴力”被害を訴え出ている女性俳優らとの関係、園子温氏による性加害疑惑への関与の有無など、坂口氏とWiiBERによる説明が待たれる。

(執筆者: 藤本 洋輔)

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