ソフィア・コッポラ監督最新作『プリシラ』に見る、女性の選択の背景にあるもの


 
ソフィア・コッポラが監督を務めた映画『プリシラ』(原題 Priscilla)の予告編が公開された。

『プリシラ』はエルヴィス・プレスリーの元妻プリシラ・プレスリーの回想録「私のエルヴィス」を基にソフィア・コッポラが映画化した『Priscilla』(原題)がとして4月12日(金)より公開決定。
本作はエルヴィス・プレスリーと恋に落ちた14歳の少女プリシラがたどる波乱の日々をプリシラの視点から繊細に描かれている。
プリシラを演じるのは「パシフィック・リム:アップライジング」のケイリー・スピーニー。彼女は第80回ヴェネツィア国際映画祭で最優秀女優賞を獲得。エルヴィスを演じたのは「Saltburn」のジェイコブ・エロルディ。
14歳のプリシラは、世界が憧れるスーパースターのエルヴィス(当時24歳)と出会い、恋に落ちる。やがて彼女は両親の反対を押し切り、高校生にして大邸宅グレースランドで一緒に暮らし始める。
プリシラが外で働くことを極度に嫌がるが、自身はツアーや撮影で自宅を離れることも多いエルヴィス。そこには望んだものを全て手に入れたような姿に世界中から羨望の眼差しを受けながらも、『ヴァージン・スーサイズ』にも通じる「籠の中の鳥」とされた女性の姿がある。

アイデンティティが確立されていない中での恋愛、経済的自立がない生活。本作を映画化したソフィアは、自由意志での選択に見える若い女性の背景にそびえ立つ社会構造とその問題を冷静に描いているようにも思える。

 

 
それはファッションにも反映され、厳格な両親のもとで肌を露出しないグッドガール風のプリシラが、エルヴィスからの要望を受け、ラグジュアリーで身体のラインを浮き彫りにしたドレスへ、自分の人生を生きたいと願うようになってからは機能的なパンツルックへ移り変わっていく。
 
公開されたポスタービジュアルは、プリシラとエルヴィスの結婚式でのワンシーン。プリシラのウェディングドレスは、衣装担当のステイシー・バタットがシャネルとともに制作。コッポラは「ドレスのお披露目の日はとても興奮しました。すべてハンドメイドのレースで、最高にゴージャスです。これに身を包んだケイリーには目を奪われました」と述べる。またエルヴィスのタキシードはヴァレンティノとコラボした1着。バタットは「目を見張るような出来栄えで、2つの老舗高級メゾンと仕事ができてとても光栄です」と語っている。
 

音楽を担うのは、監督作ではお馴染みのフランス出身のバンド、Phoenix。60~70年代のエッセンスを彼らのサウンドに落とし込み、スタイリッシュな音楽を創作。加えてソフィアによる当時の空気を醸し出すセレクション――プリシラのテーマとして流れる「ヴィーナス」や、「ベイビー・アイ・ラヴ・ユー」「オールウェイズ・ラヴ・ユー」など――が、シーンをエモーショナルに物語る。そして大邸宅グレースランドに足を踏み入れた瞬間のプリシラの多幸感とリンクする、砂糖菓子のような配色の大邸宅や精巧な調度品などの美術、あるいは光を効果的に取り入れた映像が、音楽とともに、細部まで神経の行き届いたノスタルジックで美しい世界観を創り上げた。
 
『SOMEWHERE』(10)でベネチア国際映画祭金獅子賞、『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』(17)でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞するなど常に高く評価される彼女だが、本作はその最高傑作との声も高く、北米では、オスカー受賞作や話題作を次々と手掛けるA24が配給、多くの女性観客を魅了して『ロスト・イン・トランスレーション』、『マリー・アントワネット』に次ぐ大ヒットを記録した。

 

『プリシラ』
4月12日(金)TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー

https://gaga.ne.jp/priscilla/
監督・脚本:ソフィア・コッポラ『ロスト・イン・トランスレーション』『マリー・アントワネット』
出演:ケイリー・スピーニー『パシフィック・リム: アップライジング』
ジェイコブ・エロルディ「ユーフォリア/EUPHORIA」シリーズ
配給:ギャガ
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