インドの水不足を救う?現地スタートアップDigital Paani、廃水・下水処理のIoTシステム構築へ尽力
インドでは、昨今の急速な経済成長と人口増加、そして気候変動に伴う異常気象により、水不足が深刻化している。人口の8割が地下水を飲み水として利用しているなか、地下水面がほとんどの地域で低下しており、人々の命にかかわる問題として対策が急がれている。
また地下水には有毒元素が含まれている可能性が確認されており、多くの国民が飲料水へ十分にアクセスできないというデータも。安全な水を得られない地域が多くあるなか、廃水を処理して再利用すれば都市の水需要の65%を満たせるというが、残念ながらインドでは下水処理施設の約75%が機能していないという。
こうした状況を変え、水道事業の未来を築こうと取り組んでいるのが、インドの水質管理スタートアップDigital Paaniだ。天然資源を保護し、清潔な水が豊富な都市を構築するために、下水処理を再設計するIoTプラットフォームを構築している。
廃水・下水処理施設向けの管理プラットフォームを展開
Digital Paaniは2020年に父親であるRajesh Jain氏とその娘であるMansi Jain氏(CEO)が設立したスタートアップだ。
同社の設立者は、下水処理施設が毎月設備の運営・保守にお金を費やしているにもかかわらず、機能不全に陥っている状況を鑑みて、何百人もの工場所有者や研究者などの専門家にインタビューを実施した。
その結果、どの施設も水資産を適切に管理し、技術的問題を解決するためのデータ、専門知識、インセンティブが不足している低スキルのオペレーターによって現場が運営・管理されていることが判明。
こうした「現場のオペレーターの質」が原因で、施設の所有者は生産量をほとんど得ることなく、罰金や操業停止のリスクに直面しているのだという。
そこでDigital Paaniは、廃水処理施設や下水処理施設の管理・運用を最適化するIoTプラットフォームを展開。同プラットフォームを通じて、下水運営をリアルタイムで管理するために必要な専門知識を、熟練度の低い現場のオペレーターに提供している。
センサーとアルゴリズムで問題を検出・診断
Digital Paaniのプラットフォームの核となるのは、施設内のあらゆる問題を予防・解決する方法について、運用チームへ段階的に指示し、トレーニングする管理ソフトウェアだ。
同ソフトウェアは、生物学的プロセスの健全性を監視する独自センサーを含む「センサーネットワーク」と、施設の問題を包括的に診断する「75以上のアルゴリズム」を活用。これらを用いて施設の問題を検出・診断し、適切な指示を送信する。
これらの指示はビデオベースのトレーニングモジュールにリンクされており、指示を実行するための十分な準備が整っているかを確認できる。タスクが時間通りに完了しない場合、一連の電話・電子メールベースのアラートを通じて業務階層全体にエスカレーションされる仕組みだ。
さらに、Digital Paaniのプラットフォームは施設内の主要機器を自動化することが可能。施設に関する包括的なレポートを提供して、必要に応じて改修を提案したり、各施設の長期にわたるメンテナンス履歴を管理したりすることで、施設のライフサイクル全体を管理する。
また、施設を24時間365日監視し、運用チームと直接調整して、作業が正しく時間通りに行われていることを確認する「集中制御ユニット」もある。
この新しい運用スタイルは優れた成果を上げており、機能不全に陥った施設を改善へと導き、施設の運用コストを最大41%削減することに成功したという。
2023年11月に120万ドルを調達
2023年12月、Digital Paaniが120万ドルを調達したとの報道があった。主な出資者は、Elementl Excelerator、Enzia Ventureなどで、インド大手のUrban Ladderの創業者や、インドユニコーンのDelhiveryの共同創業者も出資に加わっているという。
Digital Paaniは調達した資金をもとに、より多くのインドの汚水処理施設へ同社のテクノロジーを提供し、さらなる販売チャネルを開拓してインドの水問題解決に挑む構えだ。
インド国内の水資源の増減は、農業に大きく依存する同国のGDP成長率にも影響を及ぼすという指摘もある。同社のプラットフォーム構築とその普及に期待が高まる。
参考・引用元:Digital Paani 公式サイト
国際航業株式会社 気候変動政策ブログ
(文・Takasugi)
ウェブサイト: https://techable.jp/
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