「ランキング大好き」は国民性?江戸庶民が熱中したランキングとは?
テレビ番組や雑誌、ネット記事など、「格付け」や「ランキング」を題材にしたものは多く、現代の人々の関心も高い。これは江戸時代も同じで、大名や武士の身分には格付けがあり、一方で庶民はこの格付けを遊びとして楽しんでいた。江戸時代の人々も相撲の番付のように、料亭や遊女、朝晩のおかず、神社仏閣や温泉など、あらゆるものをランキングしていたのだ。
■格付けが大好きだった江戸の人々
『江戸の格付事情』(安藤優一郎監、エムディエヌコーポレーション刊)では、200年余の平和が続いた徳川の世に存在したさまざまな序列や制度、将軍・大名・侍から町人・遊女まで、江戸を生きる人々を支えたシステム「格付」の基礎知識と格付けをテーマに江戸の社会を読み解くことで、格差社会の表と裏を紹介する。
江戸時代には「見立番付」と呼ばれる刷り物が流行した。そもそも番付とは、力士の順位を1枚の紙で表した物。この番付にさまざまなテーマを当てはめるという遊びが見立番付だ。文化・文政年間(1804~30年)になると、江戸で見立番付が爆発的なブームとなった。これは出版事業が盛んになり、1枚仕立ててお手軽だったことがある。そして、江戸のほか、もともと出版物が大量発行されていた京都や大坂、名古屋や金沢といった地域で見立番付は話題になっていった。
見立番付の中には料理茶屋や高級遊女など、庶民にとって高値のテーマも多かったが、身近な題材も少なくなかった。たとえば、江戸は大量の白米を少しのおかずで食べるという食習慣があったこともあり、「日々徳用倹約料理角力取組」なる「おかず番付」だ。東西を精進方(野菜)と魚類方に分けてランキングしている。
魚類方でトップテンに3品もランクインしているイワシは、安価で庶民の味方だった。一番人気が、イワシを丸のまま干した「めざし」で、2位は貝のむき身と切り干し大根の煮物。現代では高級で人気のあるマグロだが、江戸時代では人気がなく、安い魚の代表格だった。今では脂ののった大トロが人気だが、その脂が不人気の原因だったのだという。マグロも当時の番付にランクインはしているが、生ではなく「みそ汁」として入っていた。
一方、精進は「八杯豆腐」が第1位。拍子切りにした豆腐を醤油と酒と水で煮て、最後に大根おろしを上に置いた料理。煮る汁が醤油1、酒1、水6で合計8杯になることから八杯豆腐と呼ばれるようになったという。現在でも豆腐料理は人気だが、江戸時代でもレシピ集『豆腐百珍』がベストセラーになるほど人気で身近な食材だった。
日本人はランキングが好きな国民であり、そうした国民気質は江戸時代からもう始まっていたのだ。ランキングや格付けで江戸時代の社会や文化を見ることで、江戸時代の人や暮らしを身近に感じることができるはずだ。
(T・N/新刊JP編集部)
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