フードテックとは?現状の課題や今後の展望を解説

フードテックとは

フードテックは、「Food」と「Technology」を組み合わせた造語です。テクノロジーを活用した食品開発のことを指します。テクノロジーの進歩はめざましく、これまで人類はテクノロジーの力で不可能なことをいくつも可能にしてきました。昭和やそれ以前の時代と比べれば、我々の生活は格段に便利になったでしょう。
食品開発の分野においてもテクノロジーを活用しようという試みが増えてきました。これまでにはなかった新たな食材を作り出したり、調理の効率をアップさせたりすることが期待されています。
フードテックが上手く活用されるようになれば、我々の食生活も大きな変化を遂げるかもしれません。

フードテックが注目されている背景

世界全体では次のようなことが問題視されており、その解決手段としてフードテックが注目されています。

世界的な食糧不足

日本などの先進国に住んでいるとあまり実感はないかもしれませんが、世界全体では食糧不足が深刻化しています。発展途上国を中心に、世界人口は増加傾向にあり、2022年には80億人に達しました。人口が増えれば、それだけ食糧も多く必要になりますが、現状では全ての人に十分な食糧が行き渡っていません。
また、世界人口が60億人に達したのは1998年、70億人に達したのは2011年です。約12年ごとに約10億人増加していることになります。今後はペースは鈍る可能性はありますが、増加傾向は続くとの見方が強いです。いずれは100億人に達するでしょう。
そうなると、ますます食糧不足が深刻化することになります。
人口増加の他に、地球温暖化による影響も大きいです。気温の上昇により、農作物の生育に悪影響を与えているケースもあります。

フードロス

全ての人に十分な食糧が行き渡っていない状況の中で、食べられる食品が大量に廃棄されているのも現状です。フードロスと呼ばれており、主に先進国の飲食店や小売店などにおいて多い傾向にあります。
賞味期限や消費期限などが厳格に管理されており、一定の期限に達した食品は販売や使用をせずに一律廃棄されるという状況です。
食の安全のためには致し方ない面もありますが、仕入れ量や製造量を調整することで、フードロスを減らすことは十分可能です。ただ、事業者だけでは難しい面もあります。事業者側と消費者側の双方で、フードロスに対する意識を高め、対策に取り組んでいくことが求められるでしょう。
フードロスは、もったいないのはもちろんのこと、地球環境にも悪影響を及ぼします。食糧を生産するのに、地球環境に対して何かしらの負担をかけています。廃棄されればゴミになってしまうため、さらに負担をかけるでしょう。そのため、フードロスを減らすことがSDGsにもつながります。

人手不足

農作物や畜産物などを作る第一次産業の担い手が不足しています。特に先進国では都市部で第三次産業の仕事に就く人が多いため、農業などの第一次産業では人手不足が深刻な状態です。跡継ぎのいない農家も多いでしょう。
また、外食産業などにおいても人手不足が叫ばれています。必要な人材を確保できていない飲食店も少なくありません。

開発が進められているフードテックの具体例

次のようなものがフードテックの具体例として挙げられ、実際に開発が進められています。

人工肉・培養肉

人工肉というのは、大豆ミートやグルテンミートなど植物原料を使用して肉のような味や食感にしたもののことです。以前までは、植物原料特有の臭味が残るものでしたが、現在では、そのような違和感もほとんどない仕上がりになっています。そのため、肉料理などにも使用可能です。
人工肉なら、外見は本物の牛肉や豚肉にそっくりでも、実際には植物原料しか使用していません。そのため、宗教上の理由などでこれまで肉料理を食べられなかった人も、人工肉を使用した肉料理なら食べられるようになります。
培養肉というのは、牛や豚の幹細胞を培養して作る肉のことです。現状ではまだ開発段階で実用化には至っていません。しかし、培養肉が実用化されれば、畜産業の人手不足解消につながります。家畜を飼って育てるよりも環境負荷も抑えられるでしょう。

食用コオロギ

食糧不足の解決手段の1つとして、昆虫食を普及させる方法がありますが、食用コオロギはその代表的な例です。コオロギを粉末状のコオロギパウダーに加工し、それをもとにしてお菓子などを作ります。
コオロギはタンパク質が非常に豊富なのが特徴です。100gあたりのタンパク質量で比較すると、牛や豚、鶏などの3倍弱もあります。
また、家畜を育てるのと比べて、コオロギは生育が簡単なのもメリットです。家畜よりも短いサイクルで成長し、食べられる状態になるため、効率的な生産が可能です。必要なエサの量や、温室効果ガスの排出量も家畜より少ないため、地球環境への負担も抑えられるでしょう。コオロギが食糧不足の救世主になるかもしれません。
そして、「コオロギせんべい」や「コオロギチョコ」などが既に販売されています。現状ではまだ珍しいですが、今後は食用コオロギを使用した食品がありふれたものになるかもしれません。

調理ロボット

調理ロボットは食品工場で盛り付けや検品などを行うロボットです。そばを茹でたりポテトを揚げたりするロボットもあります。飲食店などでは、配膳ロボットを導入しているところも増えてきました。主にチェーン店の飲食店などでは、ロボットが料理を運んでくることがよくあるでしょう。
これまでは人が行っていた作業を、ロボットに置き換えていくという流れが進んでいます。人手不足の解消に役立つでしょう。

フードテックにおける現状の課題

フードテックが進めば、食に関するさまざまな問題を解決できますが、実用化を進めるには次のような課題があります。

コストが高い

フードテックには膨大な開発コストがかかります。そのため、以前から食糧問題は危惧されてきましたが、なかなか開発が進みませんでした。
また、既に開発が進んでいる人工肉や培養肉に関しても、製造コストがネックになります。イニシャルコストもランニングコストも高く、なかなか参入企業が増えないのが現状です。

データ収集やマーケティングが難しい

食品が製造されて消費者に届くまで多くの業者が関わっています。その一方で、フードテックの開発のためには詳細なデータが必要です。十分なデータを収集できないために、事業計画を立てるのが難しいという事情もあるでしょう。マーケティングが難しいために、参入を断念する企業も多いです。
また、フードテックによって製造される食糧は、サイズや等級などの標準化が統一化されていません。そのため、小売業者が扱いづらいのも普及が進まない原因の1つでしょう。

消費者に受け入れられない可能性

フードテックによって開発された食品が、消費者に受け入れられるとは限りません。特に食用コオロギに対しては拒絶感を示す人が多いです。コオロギの形が分からないように加工されていても、やはり昆虫を食べるのは受け入れがたいのかもしれません。本当に安全なのか疑問に感じている人もいるでしょう。

フードテックの今後の展望

フードテックは、課題を抱えつつも現状の食糧問題を解決できるものとして期待が寄せられています。今後も成長が続き市場規模が拡大していく公算が高いでしょう。世界の飲食量市場規模は、2030年には2015年の1.5倍になるものと見込まれています。フードテックなしでこの需要を満たすのは難しいです。
また、農林水産省は2020年にフードテック官民協議会を立ち上げています。現状では日本はフードテック分野への投資額が非常に少ないですが、その分だけ伸び代は大きいといえます。食の安全などからも、国内でのフードテックの需要が拡大する可能性も高いでしょう。

まとめ

世界的な食糧不足や、食に携わる業界での人手不足など、食にまつわる問題が深刻です。そのような中で、フードテックが問題解決の手段として注目されています。培養肉などの開発が進められており、人工肉や食用コオロギなどは既に実用化済みです。
コストの問題などもありますが、食糧危機への対策として期待が持てるでしょう。

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