藤岡みなみ|タカアシガニを注文してみた【思い立ったがDIY吉日】vol.85
文筆家・ラジオパーソナリティの藤岡みなみさんが、モノづくりに対してのあれこれをつづるコラム連載!題字ももちろん本人。かわいくも愉快な世界観には、思わず引き込まれちゃいます。今回は、タカアシガニについて!
藤岡みなみ
文筆家。暮らしの中の異文化をテーマにした『パンダのうんこはいい匂い』(左右社)が発売中。
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タカアシガニを注文してみた
▲タカアシガニと向き合う週末。
タカアシガニがやってきた。
解体して食べるまでの試行錯誤の道のりで、「タカアシガニとの対峙はDIYだ!」と強く思った。
そんなわけで今回は初めてのタカアシガニ体験について書きたい。
タカアシガニは世界最大のカニである。
水族館によくいて、見るたびに「脚長ーい」「でかーい」と言わずにはいられないあのカニだ。
深さ200メートルから300メートルの深海にすんでいて、大きいものでは重さ20キロほどにもなる。
静岡県の沼津あたりでは名物としてタカアシガニを提供するレストランもあるのだと聞いていた。
友人数名と連れ立って沼津でタカアシガニを食べるのが長年の夢だったが、バタバタと過ごすうち叶えられずにいた。
そこで、タカアシガニのほうからこちらに来てもらうことにした。
漁業協同組合に電話をし、「1万円くらいのタカアシガニを着払いで送ってください」と告げた。
すると先方は「一人で食べないですよね?みんなで食べてくださいね」と念を押しつつもすみやかに送ってくれることになった。
なにしろ大きいのだ。
はるばる深海からやってくるカニがちゃんと食べてもらえるのか、間違っても残されたりしないかどうか、心配してくださっている。
そしてやってきたタカアシガニ
▲タカアシガニがのりきるまな板なんてない。
週末、タカアシガニが届いた。
大きな発泡スチロールの箱の中で氷漬けにされているが、生きている。
注意書きにあった通り真水を注ぐと目がニョキッと立ち上がった。
ごごご、ごめん。
おそるおそる箱から取り出してみると、折りたたまれていた脚がシャキンと伸びて全長1メートルほどになった。
タカアシガニの中では小さいほうかもしれないが、私のカニ感覚からするとかなり巨大だ。
生きた魚を買ってきてさばいたことはある。
でも、こんなに大きな生き物が生きたまま届いて、しかもそのあと食べるなんてことは経験したことがない。
そう思うと少し怖くもあった。
弱ったカニを抱いてしばしの記念撮影タイムのあと、心を決めてカニをまな板の上に置いた。
うちで一番大きいまな板だけど当然のりきらない。
これなんか見たことある。カニ料理店の看板だ。
事前に調べた通り、まずは中央の袴の部分を外す。
すると、謎の水が大量に溢れ出て台所がカニ汁まみれになった。
ひるむな。
そう自分に言い聞かせながら甲羅と本体の間に包丁を入れていく。
それにしても、機械のような体のつくりが面白い。
「解体」という言葉がよく似合う。
甲羅を外すとこれまでの人生で食べたカニ味噌の総量よりちょっと多いぐらいの量のカニ味噌が出てきた。
これはたしかに「みんなで食べてください」だ。
▲蒸したてホカホカ。鍋は二つに分けました。
脚も一本一本外し、大きな鍋で蒸す。
15分後、蓋を開けるとさっきより鮮やかな赤色になったカニが現れた。
分解した状態の一本を見ても「脚が長いなぁ」と思う。
関節で折って身を取り出し、キッチンに立ったまま味見をする。
うまい!
実はタカアシガニはあまりおいしくないと言われているらしい。
薄味とか、大味とか、水っぽいとか、ちょっと検索するとタカアシガニの悪口がたくさん出てくる。
その前情報を目にしてハードルが下がっていたこともあってか、かなりおいしく感じた。
味噌も苦みがコクになっていておいしい。
ラーメンの汁一杯分ほどの量があるので、数日に分けて食べた。
朝起きてちょっとカニ味噌。
寝る前にちょっとカニ味噌。
いままでにないカニ味噌ライフを送った。
▲ちゃんとおいしいタカアシガニ。特にカニ味噌。
甲羅が立派でまだ捨てられない。
ちょうど顔の大きさくらいあって、お面にぴったりだ。
観察の楽しみがあり、解体も興味深く、味もおいしい。
残った甲羅は工作に使えそう。エンターテインメント性が高すぎる。
ありがとうタカアシガニ。
パーティにもおすすめ、タカアシガニ。
次は甲羅で「巨大カニグラタン」を作ってみたいかもしれない。
▲タカアシガニ仮面参上!カニの服がなくてエビ。
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