著者が小学校でおこなった特別授業を書籍化! 言語学が楽しくわかりやすく学べる一冊

著者が小学校でおこなった特別授業を書籍化! 言語学が楽しくわかりやすく学べる一冊

 私たちが毎日使っている日本語。たいへん身近な存在ではありますが、言語学自体について学ぶ機会はなかなかないものです。それを子どもにもわかりやすく教えてくれるのが、「音声学」を専門とする言語学者の川原繁人氏が著した『なぜ、おかしの名前はパピプペポが多いのか? 言語学者、小学生の質問に本気で答える』です。

 同書は川原氏の母校でもある和光小学校でおこなった特別授業を書籍化したもの。小学生から寄せられる素朴な疑問の数々と川原氏とのやりとりは、学校の授業をのぞくかのような感覚で楽しく読み進められます。

 まずは「濁点って何だろう?」というところから始まり、音声学の基礎を学んだ子どもたち。次は半濁音である「゜」について考えます。そこで出てくるのが、同書のタイトルにもなっている「なぜおかしの商品名にはよくパとかピが付けられているのか?」という問題。「パピコ」「ポッキー」「チョコパイ」「アポロ」……言われてみるとたしかにそうですね!

 川原氏は「ぱ行」は外来語に使われるため、「外国っぽさ」を出したい商品名に「ぱぴぷぺぽ」が入った名前が付けられているのではないかとの考えを述べます。さらに、「ぱ行」は「かわいらしい」という感覚を喚起すること、赤ちゃんが発音しやすい音であることにも触れ、小さな子どもが食べるおかしの名前に「ぱ行」の音を入れるのは理にかなっていると解説します。

 この分析はその後、「プリキュア」の話題の際にも登場。川原氏が2019年までの歴代プリキュア全員の名前を調べたところ、「ぱ行」に代表される「両唇音(上下の唇を接触、または接近させることで発する音)」で始まる名前のキャラが多いことに気づいたそうです。ピーチ、パイン、マカロン、フラミンゴなどなど、その数は全体の名前のなんと半数を占めるほど。主に小さな子どもが視聴するプリキュアでは「子どもたちが発音しやすい音を選んで名前をつけているっていう考え方もできるよね」(同書より)と川原氏は話します。

 ここで、キャラの名前だけではなく『Go!プリンセスプリキュア』や『魔法つかいプリキュア!』のようにタイトルも両唇音で始まるものがあることに気づいた子どもたち。「素晴らしい! プリキュアの名前分析はいろんなところで発表してきたけど、それを指摘してもらったのは初めてだよ」(同書より)と感嘆。言語学者の川原氏にとっても新たな発見となったようです。

 ほかにも、「ポケモンのピィとグラードン、なんでグラードンのほうが強そうなの?」「日本は『にほん』と呼べばいいの? 『にっぽん』と呼べばいいの?」「原始人はどうやって会話していたの?」など、子どもたちの純粋ながらも核心を突くような鋭い質問をもとに、言語学に関する話が次々に展開されます。同じ年ごろの小学生はもちろん、大人にとっても知的好奇心をそそられる同書。親子で一緒に読むもよし、自身の教養を深めるべく読むもよしな一冊です。

[文・鷺ノ宮やよい]

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