UFOロードムービー『宇宙探索編集部』コン監督インタビュー「マニアックで現実社会では上手く生きていけていない人が、どうやって社会と分かり合うか」
アジアの映画祭・映画賞で話題をさらいまくった中国発の胸アツ映画『宇宙探索編集部』が、10月13日㈮より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開される。主人公は廃刊寸前のUFO雑誌[宇宙探索]の編集長。人に何を言われようと宇宙人の存在を信じて進み続ける編集長と仲間たちの、爆笑と感動のUFOロードムービーです。
本作の監督を務め、中国映画界で大きな注目を集めている若き才能コン・ダーシャンさんに作品へのこだわりなどお話を伺いました!
――本作大変楽しく拝見させていただきました!監督はもともとSFに詳しくなかったということですね。また、映画のモチーフとなった実在のUFO雑誌「飛碟探索」も世代的にご存じ無かったかと思うのですが。
そうなんです、UFO雑誌「飛碟探索」が発刊されていた時に僕は生まれていなくて。なので、雑誌や雑誌社に興味があるというよりは、80年代、90年代という時代にすごく興味がありました。その時代は中国でUFOブームが起こっていたわけですが、そうなるとどういう人たちがこの雑誌を作っていたのか、そこではどんなモノづくりがされていたのか、そういったことに興味があったんです。
今は何かの“オタク”であることが当たり前の世の中ですが、この雑誌「飛碟探索」であったり、映画『宇宙探索編集部』のタン編集長にとっては生きづらい世の中だったと考えられます。そういうことを想像しながら映画にしようと思いました。
――周りから見たらちょっと可笑しな人に見えても、とにかく真剣に一つのこと=UFOを追い求めていく姿が素敵だなと思ったのですが、監督はそんな姿に共感出来ましたか?
この映画が中国で公開されてから、「この映画は“理想主義”、一人の人物が夢を追い求めた映画なんですね?」と言われることもありましたが、「いえ、違います」と否定していました。私が描きたかったのは、マニアックで、夢を追っているのだけど現実社会では上手く生きていけていない人が、どうやって社会と分かり合えるか、和解出来るかということなんです。
――なるほど、確かにそういった視点が描かれていますよね。また、本作には“大人の青春”といった側面を感じたのですが、監督自身もこの映画を作っている最中にタン編集長の様なパッションを感じていたのでしょうか?
最初にこの映画を作ろうと考えていた時はとてもパッションがあったのですが、次第に疲れていってしまって…(笑)。映画作りは本当に大変でした。なので、日本映画の『カメラを止めるな!』(上田慎一郎監督)はすごいですよ!あんなに映画作りへのパッションに溢れていて…。
――監督という職業ならではのぼやきかもしれませんね(笑)。本作での“UFO”の描き方、つまりUFOが出てこないUFO映画という所がとてもユニークだなと感じたのですが、そちらについてはいかがですか?
予算が無かったんです(笑)。というのは嘘で、どんなUFO映画を観ていても、形やデザインがどれも似通っていますよね。つまり人間が想像したUFO、宇宙人のパターンを出ていない。私が思う宇宙人というのは、人間の想像を超えたもの、我々が想像にすることの出来ない形をしている。人間の形に起因しているので、二足歩行ですし、目があって口があって…というデザインになってしまう。私にとってUFOや宇宙人とはもっと精神的な面での違いを感じる存在なのです。
――本作は中国でとても大きな反響を得ていますが、観客からの感想などで印象的だったものを教えてください。
たくさんのありがたい感想をいただきましたが、特に印象的だったものが、うつ病だったという方が「この映画を観てとても癒されて、涙が流れました」と言ってくださったんです。僕は個人のSNSアカウントは持っていないので、プロデューサーの微博を見つけてそこから感想を送ってくれて。すごく感動しました。
――素晴らしいエピソードをありがとうございます!本作のエグゼクティブプロデューサーが大ヒット映画『流転の地球』のグォ・ファンさんであったり、今度Netflixで『三点』が映像化されたりと、中国SFに注目がさらにあつまりそうですね。
そうですね、非常にヒートアップしている状況だと思います。国も宇宙開発に乗り出していて、民間の観客もSF映画に大きな関心を寄せています。この映画を同じ中国のSF作品の中にカウントして良いかはわかりませんが、実際に中国でもたくさんの方に観ていただいて、こうして日本でも公開することが出来るわけですから、感謝の気持ちでいっぱいです。今は僕は新しい映画を撮る気力が無いのですが(笑)、今は観客として中国SF作品の盛り上がりを楽しみたいです。
――まずはゆっくり休んでいただきたいです!(笑)今日は素敵なお話をありがとうございました!
『宇宙探索編集部』
舞台は中国、主人公は廃刊寸前のUFO雑誌編集長。
人に何を言われようと宇宙人の存在を信じて進み続ける爆笑と感動の奇想天外ロードムービー!
【物語】廃刊寸前の科学雑誌「宇宙探索」の編集長タンは、ある日、中国西部の村で宇宙人の仕業と思われる不思議な現象が起きたという情報を掴む。編集部の起死回生をかけて、一癖も二癖もある編集部員と外部の同志を連れ、調査の旅に出ることに…。果たしてタンたちは宇宙人に出会えるのか?
原題:宇宙探索編輯部|英語題:Journey to the West|2021|中国映画|118分|1.78:1|5.1ch
監督:コン・ダーシャン(孔大山)|出演:ヤン・ハオユー(楊皓宇)、アイ・リーヤー(艾麗婭)、ワン・イートン(王一通)、ジャン・チーミン(蒋奇明)、ション・チェンチェン(盛晨晨)|字幕:磯尚太郎|字幕協力:大阪大学外国語学部 古川裕|配給:ムヴィオラ
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