岩手の秘湯・夏油温泉 元湯夏油へ。大自然のなかで湯巡りを満喫
皆さん、こんにちは! 三度の飯より温泉が大好き♡ 温泉家の北出恭子です。数年前に温泉にハマり、今では温泉探究が私のライフワーク。日本の温泉のすばらしさを一人でも多くの方へ伝えられるよう日々、温泉研究と情報発信に励んでいます。
さて……今回は、岩手県北上市の秘湯「夏油温泉(げとうおんせん)」で7つの湯巡り! 山や川に囲まれた緑いっぱいの大自然のなかでデジタルデトックスもしてきました。
東京駅
東京駅から北上駅へは「はやぶさ」で1本!
夏油温泉に行くには、まずはJR東京駅からJR北上駅まで向かいます。東北・北海道新幹線「はやぶさ」に乗って約2時間半の列車旅。乗り換えがなく1本で到着するので楽々。「JR東日本びゅうダイナミックレールパック」であれば、新幹線と宿のセットがお得に予約できます。
北上駅に到着! 北上駅の西口には、画家・利根山光人さんと陶芸作家・雲雀民雄さんが制作した大陶壁画「日輪」が飾られています。北上の郷土芸能である鬼剣舞(おにけんばい)をモチーフにした横18m・縦3.5mの壁画は圧巻です!
夏油温泉は、栗駒国定公園内にあり、ブナの原生林や花の群生地など手つかずの自然がのこる自然豊かな場所にあります。そんな夏油温泉に向かうには、宿の送迎バス(事前予約制)を利用するのが便利。北上駅東口のロータリーにあるバス乗り場から、13時45分に出発です。
夏油温泉 元湯夏油 1日目
元湯夏油へ到着
バスに揺られ約50分、今宵の宿「夏油温泉 元湯夏油」に到着です。「げとう」という名前の由来はいくつかあるようで、アイヌ語の「グット・オ=崖のあるところ」という意味や発音からきている説や、冬は豪雪のため利用できなくなることから「夏湯」といわれ、夏の日差しで湯面がユラユラと油のように見えたことから、「湯」が「油」になった説などもあるそう。
元湯夏油での宿泊は旅館部と自炊部に分かれていて、私は旅館部を選択。ほっと安らぐ純和風の設えで窓からも豊かな自然を感じられます。携帯電話のキャリアによっては電波が届かないようですが、ロビー周辺はWi-Fiも整備されています。とはいえ、宿泊の間はデジタルデトックスを試みるのも良いかもしれませんね。
夏油温泉の通りからは、今でもノスタルジックな湯治場の雰囲気がいたるところに感じられます。「平家の落人の末裔であるマタギが傷ついた白猿を追っていくと、温泉に浸かりながら傷を癒やしている姿をみて発見した」という開湯伝説が語り継がれる、歴史ある温泉場です。
さらに奥に進むと「湯前さん」と呼ばれる温泉の守り神「薬師神社」が霊験あらたかな空気感の中でひっそりとご鎮座しています。その隣には、寄り添うように、開湯記念に植えられたとされている樹齢約650年以上と伝わる老杉「見印の杉」が。
周辺では、四季折々の貴重な山野草や野鳥が見られます。この日私が出会えたのは「ギンラン」という野生のランで、複数の地方自治体が絶滅危惧種に指定している可憐なお花。
夏油温泉 元湯夏油で湯巡り
7つの湯船と7つの源泉で温泉天国!!
夏油温泉には全部で7つの源泉と7つの湯船があり、元湯夏油に滞在すると(日帰り入浴可)この全てが利用できます。一つの施設で、個性のちがうたくさんの泉質を湯巡りすることができるなんて全国的にも本当に稀少です! まさに、日本屈指の温泉天国!!!
男女混浴の露天風呂が多いですが、女性専用時間を設けてくれているので混浴が苦手な女性でも安心です。
さぁて! すべての温泉を制覇するぞぉ~♪
露天風呂に向かうには、川沿いまで長い階段を下りて行きます。まずたどり着いたのは、「滝の湯」。こちらは女性専用の露天風呂で自然湧出泉です。
2つに仕切られた浴槽があり、湯口側が約47℃ほどの激熱で、湯口から離れた側は約40℃の適温の「温湯(ぬるゆ)」となっています。泉質はpH6.0「ナトリウム・カルシウムー塩化物泉」で、ほんのりと硫化水素(硫黄)の香りがして、粉っぽいサラサラとした肌ざわりです。
さらに階段を下りていくと見えてきたのは、夏油温泉の発見のきっかけになったといわれ、歴史ある「大湯」。薬効が高く、昔から多くの湯治客を癒やしてきた名湯だそうです。ダイナミックな川のすぐそばにある大岩風呂でとにかく激熱!!! しかし、夏油温泉の社長は「かけ湯だけでも一度は体感して欲しい」とおっしゃっていました。
天候や季節によって泉温は変化しますが、この日は約47℃で、入るのに勇気がいる温度でしたが、コツは洗面器で何度もかけ湯を繰り返して熱さに体を慣らすことと、入ったら湯を揺らさずにじっとしていること。熱さで手足の先がピリピリとしてきますが、同時に温泉の薬効が身体にぐんぐん染み渡っていくようです。
泉質はpH6.1「ナトリウム・カルシウムー塩化物泉」で、湯船の岩盤からダイレクトに湧き出す自然湧出泉で、硫化水素(硫黄)の香りがほのかに感じられます。ふんわりとした羽衣をまとったようなまろやかな湯に包まれて、ふっくらと肌が柔らかくなります。
さらに川沿いを進むと現れるのが「疝気の湯(せんきのゆ)」。約40℃の適温で、せせらぎの音を聞きながら川と同じくらいの目線でゆったりと入ることができるため、癒やし効果も抜群です。
疝気の湯は、全国でも数十カ所しかない足元からプクプクと温泉が湧き出す稀少な「足元湧出泉」で、地球の恵みをダイレクトに感じることができます。泉質はpH6.0「ナトリウム・カルシウムー塩化物泉」で、腐泥のような独特な香りと金気臭(鉄分)があり、キシキシとしたミネラル感のある泉質。炭酸成分も多く含まれています。
※編集部注:バスタオル、水着、湯浴み着などを着用しての入浴は禁止です。今回は撮影のため特別に許可を得て撮影しています
夏油温泉 元湯夏油の夕食
地元食材たっぷりの豪華でおいしい会席
湯巡りを堪能したところで、お楽しみの晩ごはんタイム!!
近くの川で釣れた天然岩魚の塩焼き、岩手県産和牛の陶板焼きや岩手県産のお米(ひとめぼれ)、周辺の山で採れた山菜やキノコをふんだんにつかった地産地消の豪華でおいしい料理の数々に舌鼓。ごちそうさまでした~!!
露天風呂は夜間入浴不可ですが、内風呂は24時間入浴することができます。就寝前に「白猿の湯」へ。約41℃、泉質はpH6.0「カルシウム・ナトリウムー硫酸塩泉」で、ツルツル感がありながらも、ペタペタとオイリーな保湿感もある湯ざわり。湯口や床に鍾乳石のように白い石灰華が固まっていて成分の濃さを感じます。
それではまた明日、残りの湯巡りを楽しみたいと思います! おやすみなさい☆
夏油温泉 元湯夏油 2日目
朝風呂と朝ごはんでエネルギーチャージ!
夏油温泉2日目。朝風呂にレッツゴー!! 男女別の内風呂「小天狗の湯」へ。泉質はpH6.3「カルシウム・ナトリウムー塩化物泉」で、土や海のような香りがします。床に温泉成分が真っ黒く析出しているほど濃厚ですが、ツルツルとして、ふんわりやわらかく肌を包み込んでくれるやさしい湯です。
朝風呂でサッパリしたら朝食。栄養バランスのよいボリューム満点の朝ごはん。ご飯やお味噌汁がおかわりできるのもうれしい!!
そしてまたまた露天風呂へ向かいます。長く急な階段を下りていくと川沿いに2つの湯小屋が。「女(目)の湯」は現在、雪害の影響によって残念ながら入浴不可。気を取り直して「真湯」へ。いざ入湯!!
真湯は緑に囲まれた大露天風呂。焦げたような硫化水素(硫黄)の香りがしっかりと感じられて白い湯の華も舞っています。泉質はpH6.0「ナトリウム・カルシウムー塩化物泉」で、肌なじみのよいやわらかな湯ざわり。肌をコーティングしてくれるようなしっとり感のある保湿力の高い湯です。
鳥のさえずりや川音といった自然の音をBGMに湯に浸かっていると、五感が研ぎ澄まされ、心身ともに癒やされました。
きたかみ風土
北上のご当地名物「北上コロッケ」
宿をチェックアウトして、9時発の送迎バスで北上駅へ。北上市には、地元食材を使ってつくられたご当地名物「北上コロッケ」があり、駅周辺の飲食店で食べられます。今回は、北上駅西口から徒歩約10分の「きたかみ風土」というお店に行ってきました。
さっそく、「北上コロッケ定食」をオーダー。北上コロッケとは、「二子さといも」「黒毛和牛」「白ゆりポーク」「アスパラガス」を使用したコロッケのことだそう。
揚げたてサクサクの衣の中には、バターの風味がしっかりと効いた自家製ホワイトソースやさといもが入っていて、クリームコロッケのようななめらかな舌ざわり。濃厚なアスパラガスの風味、トマトたっぷりの酸味のある自家製トマトソースとの相性が絶妙で、とてもおいしい!
みちのく民俗村
岩手県の民俗文化を学べる野外博物館
この旅の締めくくりにタクシーで向かったのは、「みちのく民俗村」。約7ヘクタールの敷地に、歴史的建造物の保存と地域の民俗文化を守り伝えるためにつくられた野外博物館です。岩手県内から移築・復元した茅葺民家10棟を中心に大小約28棟が点在しています。
国指定重要文化財に指定されている「旧菅野家」は、江戸時代の豪農で立派な薬医門が迎えてくれます。「お手伝い帳」が残っており、そこから建築に使用された材料などがはっきりとわかるため、周辺の茅葺民家を考えるうえでも重要な文化財となっているそう。
小作人と呼ばれる従事者を多く雇い、雨天や冬季の農作業の場として欠かせない土間が建物面積の4割を占め、大農家のしっかりとしたつくりになっているのが特徴です。
続いては、南部領の代表的な民家形式「曲り家」が特徴の「旧星川家」。幕末の建築と推定されており、母屋に馬屋がカギ形に付いたもの。
台所から馬屋の様子がよく見えるつくりになっており、馬の飼育に便利だったからだそう。また、馬は農家にとって重要な家畜なので、ほとんど家族同様に一つ屋根の下で仲良く暮らしていたそうです。
旧黒沢尻高等女学校の校舎を移築した「民俗資料館」もあります。農作業道具、手仕事、生活用品、信仰関係などの民俗資料が展示されており、北上地方の昔の暮らしを知ることができます。
今回の旅では、大自然と歴史ある名湯に癒やされる秘湯・夏油温泉 元湯夏油、北上の素材がギュッとつまったグルメ・北上コロッケ、昔へタイムスリップしたような気分にひたれる、みちのく民俗村など、北上エリアの魅力を存分に堪能できた、とても充実した1泊2日でした。皆さんも北上に旅行にいくときには、是非とも旅の参考にしてくださいね!
東京駅
掲載情報は2023年9月5日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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