夢と声を奪われた少⼥の再⽣の物語 映画『裸足になって』より「初めての手話」本編シーン解禁
第72 回カンヌ国際映画祭「ある視点」部⾨に出品された『パピチャ 未来へのランウェイ』のムニア・メドゥール監督が⼿がけた『裸⾜になって』<7/21(⾦)公開>。北アフリカのイスラム国家、アルジェリアで、内戦の傷が癒えきらぬ不安定な社会の中でバレエダンサーになることを夢⾒るフーリアは、貧しくもささやかな⽣活を送っていました。
しかしある夜、男に階段から突き落とされ⼤怪我を負い、踊ることも声を出すこともできなくなってしまう。すべてを失い、死んだも同然の抜け殻となったフーリア。そんな失意の中、彼⼥がリハビリ施設で出会ったのは、それぞれ⼼に傷を抱えたろう者の⼥性たち。「あなたダンサーなのね。わたしたちにダンスを教えて」その⼀⾔から始まったダンス教室で、また再び“⽣きる”情熱を取り戻していく―。
この度、フーリアが初めて⼿話でコミュニケーションを取る本編特別映像を解禁。あわせて<マリ=クロード・ピエトラガラ><マーサ・グレアム>らの膨⼤な作品を参考に「1年以上準備した」と語る⼿話とダンスのシーンについて語った監督のインタビューテキストもご紹介します。
理不尽な暴⼒による⼤怪我がもとで⾝体の⾃由と声を失ったフーリア。リハビリのため訪れた施設のプールで溺れかけた⼥性を偶然助けると、彼⼥はろう者だった。〈ありがとう〉フーリアは、唇を指で押さえながら初めての⼿話を使う―。不⾃由になった⾝体を通したコミュニケーションで、⾃由だった時よりも、少しずつ<⾃分の声>取り戻していくことになるフーリア。彼⼥のささやかな笑顔が、これからの未来と希望を感じさせるシーンとなっています。
イスラム原理主義者の弾圧が激しい1990 年代のアルジェリアで、ファッションデザイナーの夢を⽬指す少⼥を描いた『パピチャ 未来へのランウェイ』(2020)以来、リナ・クードリと⼆度⽬のタッグとなるムニア・メドゥール監督。「幸運にもリナとはすでに知り合いだったから、『裸⾜になって』の作業では、⼈物像を緻密に構築するだけでよかった。本作では、⼿話や、ろう者やトラウマ後のショック、⾝体のリハビリについて語っているから、信ぴょう性を持った⼈物像を構築するために、出来る限り情報収集をすることが不可⽋だった」という。
そして「ドキュメンタリー出⾝の私にとって、フーリアの役を構成するのにはこうした材料が必要だったの。だから、フーリアの頭の中では何が起こっているのか、トラウマが原因による失語症を理解するために、精神科医や神経科医にたくさん取材を⾏うことから始めた」「リナは準備を⾏うにあたって『Le langage blessé(傷ついた⾔語)』という本を常に持っていた。それから彼⼥は、⼿話指導のアントワーヌ・ヴァレットから⼿話を習った。彼はシナリオの⼿話訳もしてくれ、振付師のハジバ・ファニーとダンスの振り付けをするうえで、その⼿話訳が原型となったからこの作業は重要だった」と振り返ります。
そして、⼿話と併せて準備に1年以上かけたというダンスシーンは、演劇とダンスの境⽬を取り払ったと⾔われる、ドイツのコンテンポラリーダンサー<ピナ・バウシュ>やフランスのバレエダンサーで現在は⾃⾝のバレエ団も率いる<マリ=クロード・ピエトラガラ>ほか、アメリカのモダンダンスの開拓者の1 ⼈であると⾔われる<マーサ・グレアム>らの膨⼤な作品を参考にしたことも明かしています。
主⼈公フーリアのダンスは、⼿話をモチーフにしたコンテンポラリーダンス。⾔語の壁を超えた⾁体表現として、どんな台詞よりも雄弁に私たちにその想いを訴えかけます。抑圧された社会の中で、⼿を携えて⽴ち上がる⼥性たちとの交流を通じて、尊い慈愛と⽣きる⼒強さを瑞々しく描き出すのです。
本作を⼿掛けたのは第72 回カンヌ国際映画祭「ある視点」部⾨に出品された『パピチャ 未来へのランウェイ』のムニア・メドゥール監督。主⼈公フーリアを体当たりで演じたのは、ウェス・アンダーソン監督『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』で、ティモシー・シャラメらと共演し、キュートな存在感を放ったことも記憶に新しい、アルジェリア出⾝の期待の新星リナ・クードリ。そして、製作総指揮は『コーダ あいのうた』でろう者の俳優として初めてのアカデミー助演男優賞を受賞したトロイ・コッツァーが務めることも話題に。
本作の脚本も⼿がけたムニア・メドゥール監督は「アルジェリア社会を舞台に、現代の問題や、⼈間と⾔語の豊かさをもっと掘り下げたいという気持ちがあった」と⾔う。北アフリカのイスラム国家であるアルジェリアは1990 年代に“暗⿊の⼗年”と呼ばれる内戦が勃発、その治安回復と同時に膨⼤なテロ事件が起き、20 年以上が経った今でも癒えない傷が⼈々の⼼に隠されているのです。
「『裸⾜になって』では、事故による変化に苦しむ若いダンサーの物語を語ることで、現在のアルジェリアの歴史に再び踏み込むことにした」「私は元々、ドキュメンタリー映画出⾝だから、映画でフィクションに書き直すために、⾃分の記憶の奥や体験に迫るのが好きなの。私⾃⾝、事故でかかとを複雑⾻折した後、しばらく動けず、⻑いリハビリをしたことがあって、孤独や寂しさ、障害、そして何よりも再起について語りたいと思っていたのよ」と明かし「フーリアは再⽣して、最終的にはもっと強い⼥性、つまり彼⼥⾃⾝になる。耐えることにより偉⼤になったフーリアのヒロイン像は、傷つきながらも⽴ち上がるアルジェリアのイメージを想像して出来上がったわ」とコメントしています。
(C)THE INK CONNECTION – HIGH SEA – CIRTA FILMS – SCOPE PICTURES FRANCE 2 CINÉMA – LES PRODUCTIONS DU
CH’TIHI – SAME PLAYER, SOLAR ENTERTAINMENT
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