有功が玉栄を側に置いていたのは梶裕貴だったから!?アニメ『大奥』宮野真守インタビュー 福士蒼汰のドラマ版も絶賛
女将軍にひれ伏すは、美男三千人――“男女逆転・大奥”を描いた大ヒットコミック、よしながふみ先生作『大奥』が初アニメ化され、Netflixシリーズ「大奥」 として2023年6月29日(木)より世界独占配信中! 万里小路有功(までのこうじ ありこと) を演じた宮野真守さんのインタビューをお届けします。
物語の舞台は、謎の疫病・赤面疱瘡の流行で、男子の人口が女子の約1/4にまで急速に減少した結果、社会運営の根幹や権力が女性に完全に移った江戸。 3代将軍・家光の時代から幕末・大政奉還にいたるまで、男女逆転の江戸時代を描き切り、累計600万部[紙+電子]の大ヒットとなったよしながふみ先生作『大奥』(『メロディ』連載/コミックス全19巻/白泉社刊)。
「幽☆遊☆白書」や「BLEACH」、「アルスラーン戦記」、「黒執事 Book of Circus」、後編が8月より配信開始のNetflix映画『七つの大罪 怨嗟のエジンバラ』など、人気アニメを手がけてきた阿部記之監督が『大奥』の愛憎渦巻く中、運命に翻弄される男女の切なく美しい愛を繊細に描きます。
今作で万里小路有功(までのこうじ ありこと) を演じた宮野真守さんに、作品や有功の魅力、アニメならではの見どころをお伺いしました。
――『大奥』ということで今回、和装での撮影でしたがいかがでしたか?
宮野:できれば有功さんくらいの腰板のある裃(かみしも)も着てみたかったな、と(笑)。羽織袴はよくあるんですけど、裃を着たことがないかもしれないです。(NHKのドラマ版で万里小路有功を演じた)福士蒼汰が羨ましいですよ(笑)。
でも、今回のアニメでも裃の柄などすごくこだわっているんですもんね。
スタッフ:そうなんです、柄だけでも30~40種類くらいハリコミ(模様などのテクスチャ素材)を用意して。2Dのアニメでここまでやることはないと監督がおっしゃっていました。
宮野:衣装の華やかさは、この作品では重要だったりするし、みんながパッと目を奪われる、みたいな描写もあるわけじゃないですか。そこにこだわって作られているのは素晴らしいですよね。
――しかもアニメなので全編カラーですしね! 衣装にも注目して観ていただきたいです。では、改めてアニメ『大奥』に出演が決まったときの感想をお聞かせください。
宮野:出演が決まったときは、「方言指導は付けてくださいね」と言いました(笑)。オーディションのときは自力でやりましたけど。でも、本当に丁寧に色々指導してくださったので、自然にドラマに入っていけましたね。
――特に方言は公家のお坊さんということで、普通の京言葉とまた違う部分があったのでしょうか?
宮野:時代劇・公家・京言葉ですから(笑)。馴染みのない京言葉という感じでした。だからある意味、新たな感覚で逆に自然と入ってきたみたいなところはあります。もちろん難しいんですけど、今までいろんな方言の役をやっていたので、またそれとは違う“新たな言葉”として覚えることができた感覚はありました。
――有功の京言葉には、どんな印象をお持ちになりましたか?
宮野:とてもナチュラルに発したかったんですよ。頑張ってる感が出てしまうのは避けたかったというか。有功は頑張って誰かにアピールする話し方をするという人ではないじゃないですか。自然となだらかに生きている人、と表現する方が近しいな。それは彼が求めているものというか、仏の道で自分が導けるところに対して手を差し伸べたいと思っている穏やかさに由来する。それだけじゃいられなくなったときの荒げる感情はもちろん大奥に入ってからはあるんですけど。
なので、彼から自然と発せられるような空気感みたいなものは、最初のうちは意識していて。だから、家ではめちゃくちゃセリフのイントネーションを練習するんですけど、マイク前に立ってお芝居をするときは、自然な言葉の流れで発せられるように、というところは意識していました。
そうしたら、逆に染み付いてきてしまって。だから、江戸の言葉に直した後も、感情を荒げると、江戸の言葉だけれどちょっと京訛りが出る、みたいな、狙ったわけではなく自然とそうなって。
でも、そもそもの描かれ方がそうじゃないですか。千恵さま(家光)との褥(しとね)のときは、「かわいらしい」とか、方言が出ちゃう。感情によって自分に染み付いた言葉というのは自然と出てしまうものなので。他のお仕事とかでご一緒する関西の方が、感情が高ぶると関西弁が咄嗟に出てしまう、みたいな場面を目の当たりにすると、「やっぱりそれが自然だよな~」と思っていたので、有功もそういうことがあったら素敵だなと思って演じていました。
――実際に拝見していて、感情が高ぶるシーンで自然に方言が出てしまうところが素敵だなと感じました。家光役の松井恵理子さんのお芝居はいかがでしたか?
宮野:松井さんの声がつくことにより、より痛々しさが増すというか。虚勢で自分を防御しているというか、それがどんどん千恵さまを象っていって。幼い頃の様子も描かれますけど、あのいたいけな少女がどうしてあんな棘のある人になってしまったのかを我々は視聴者として観ているわけで。その刺々しさがただの虚勢ではなく、SOSを常に発しているように聞こえました。有功としても、あの髢(かもじ)を付けて女装をして優しく抱きしめるシーンで、本気で守ってあげたいなと強くそれを思って。
でも、2人の関係は面白いもので、母になってからは千恵さまが本当に強くて、ただただ有功のほうがどんどん脆く崩れていく。そこが皮肉にも、ドラマチックではあるんだけれど、演じているほうは結構苦しかったですね。
――『大奥』の原作の中でも、有功と家光編が一番好きというファンの声も多いですが、その魅力はどんなところだと思いますか?
宮野:他はもっと策略とか更にドロドロしていますもんね。
――そうですね。だから、プラトニックというか、純愛という意味で人気がありますよね。
宮野:やっぱりこの男女逆転大奥がどうやってできたか、の物語の成り立ちの話じゃないですか。だから、世の中や自分たちに対してみんなが危機感を感じて、どうしたらいいのかわからない状況下で、なんとか生きていこうとするエネルギーが強い物語だと思うんです。
春日局も無茶苦茶なこともするけど、でも徳川を守ろうとするというところでの強い意志の元、曲がったことをしているわけではないというか。それに対して周りの大名たちも、どうすれば我々は生き続けられるのか、と。
窪田等さんの印象的なナレーションで、有功の心遣いが後に金食い虫になってしまう、というものがありましたけど(苦笑)。でも、慣れって本当に人をそうしてしまうというか。有功は大奥のみんなの気持ちを救うためにやったことだけど、それが後にただ贅沢になってしまった。
有功と家光のときは、みんなが自分の立場や自分自身の存在をどう肯定していくかに一生懸命な状況下でしたよね。だからこそ、家光の想いもプラトニック。一見滅茶苦茶に見える行動、言動も自分の生きる意味を知りたい、という動機からくるものだった。だって本当に求めているものは有功“だけ”なわけだし。でも徳川の世のために必要なのであれば自分は人柱になる。そこの覚悟をみんなが持って生きている時代で、だからこそグッとくるんでしょうね。
――登場人物の中で好きなキャラはいらっしゃいますか?
宮野:あんな可愛い玉栄が、おじさん坊主になってしまうのはショッキングではあるんですけど(笑)、でも玉栄の在り方もとても面白いと思うんですよね。
自分が好きな人や尊敬する人に想いを捧げるのは今でもあることだけどその想いが玉栄は有功に対してとても強いのがすごいですし、可愛らしいな~と思います。その反面、聡い子なので、ちゃんと腹の中ではしたたかに考えていて。
――でも、その賢さを見抜いていたのか、自分の側に置いていた有功もすごいですよね。
宮野:なんでですかね?梶くんだったからですかね(笑)? 中の人の影響だったからかもしれない(笑)。※本作で玉栄を演じているのは梶裕貴さん。
――梶さんの玉栄は魅力的でしたか?
宮野:もう素晴らしかったですよ!なんでこんなにいつまでも少年が演じられるのか。
――梶さんが演じることで更に玉栄の魅力が増していると。
宮野:増していますし、梶くんもなぜか僕のことを慕ってくれるので、(キャラと中の人との)関係値的に自然体というか。僕らも真っ直ぐ演じられているんじゃないかなと思うので、それは作品ドラマにいい影響を与えているかもしれないですね。でも、梶くんが京都弁を練習しているときは僕が邪魔したり、相変わらず梶くんイジりをしていました(笑)。
――アニメ『大奥』ならではの注目ポイントを教えてください。
宮野:感情細やかに表現しています。それを監督が許してくれたというのが僕は嬉しくて。もちろん画にしっかり合わせなくてはいけない部分もあったけれど、感情が尺からはみ出すという状況を尊重してくれる場面もあって。なので、声が付くことによって膨らむ何かは確実にあったと思いますね。我々もそこに対して全力で臨んだので。
あんな怖い春日局を演じる井上喜久子さんが、オフの時間では「本当に面白いよね~♪」「このあと悲しいよね~!」ってずっと可愛くて(笑)、急にイチファンになって「もうホント好きなの~!」とおっしゃるのに癒やされていたら、急に「あの坊主を殺りゃあ!」って怖い春日局になって。その春日局の心情の難しさみたいな部分を喜久子さんが細やかに演じていらっしゃったり、我々の現場での本気度みたいなものは、作品を良くするものになれているんじゃないかな、と非常に自信を持ってお伝えできるところかなと思います。
――福士蒼汰さんとは、昨年いのうえ歌舞伎『神州無頼街』でご共演されていましたが、『大奥』で同じ有功を演じられることについてお話しされましたか?
宮野:福士くんがドラマに出演することが発表されたのが、アニメを数話収録しているときだったので、そのときに連絡はしましたね。
――福士さんの反応は?
宮野:「え!すごい!!」って(笑)。僕らは最初が同じ役を2人でやっていたので、だから「不思議だね」と思いました。同じ役をやっていたときも、それぞれの違いの話をするのがすごく楽しかったですし、今回もまたそういった話ができるのが楽しそうだなと思いました。
――福士さんが演じられたドラマ版はご覧になりましたか?
宮野:はい、観てって言われたので(笑)。本当に素晴らしかった!ハマり役だなと思いましたね。あの美しさは重要だし。それこそお芝居の話もたくさんしていて、そこからの彼のチャレンジだったので、「じゃあこのときはどう思っていたのかな?」というのを色々聞きたいなと思いました。
――では、有功の見どころを含め、楽しんでくださる方にメッセージをお願いします。
宮野:非常に真っ直ぐで素直で優しい男なんですけど、運命に翻弄されるに比例して自分の中の業みたいなものもたくさん彼は知り、そこに対しても真っ直ぐに向き合ってしまうがために、いろんなことをごまかせない。それで辛い決断をまたしなくてはいけない瞬間もたくさんあって、そのたびに彼の感情はグルグル掻き乱されて。そこに対して僕は彼の想いを感じて声に出したつもりなので、彼の渦巻く感情をぜひご覧になってほしいなと思いますし、でもそれはすべて愛に向かっていることを考えると、とても素敵で悲しくて、その大きな愛の物語を感じてもらえたらなと思います。
――ありがとうございました!
・『大奥』本予告- Netflix
https://youtu.be/vAybfUg6vUc
関連記事:
効果音も自分たちで表現!「存分に“るーみっくわーるど”を楽しんでいる」リスペクトが生み出す令和版『うる星やつら』面堂終太郎役・宮野真守インタビュー
https://otajo.jp/111100
“日常ドラゴンボール”で懐かしい!? 映画『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』神谷浩史&宮野真守インタビュー「答えはもう用意されていた」鳥山明が描くキャラの魅力とは?
https://otajo.jp/108825[リンク]
※Otajoとガジェット通信は姉妹サイトです。
作品情報
Netflix シリーズ「大奥」独占配信中
《ストーリー》
謎の疫病で男子の人口が急速に減少した結果、社会運営の根幹や権力が女性に完全に移った江戸。徳川八代将軍吉宗は、女が男の名を名乗りながら家督を継ぐ世の中を疑問に思い、大奥の所記『没日録』を読み、歴史を紐解き始める。
その始まりは三代将軍・徳川家光の時代に遡る。「赤面疱瘡」と呼ばれる奇妙な病が日本中に広がり、男子の人口は女子の約 1/4 にまで激減した。江戸城でも三代家光以降将軍職は女子へと引き継がれ、俗に美男三千人と称される男女逆転の大奥の世界が築かれていた。
京から江戸城を訪れた公家出身の美貌の僧・万里小路有功は、春日局の脅迫により小僧の玉栄とともに無理矢理還俗させられ、家光の小姓となるべく大奥に入れられるが、そこで驚くべき真実が明かされた・・・
《スタッフ・キャスト》
原作:よしながふみ「大奥」(白泉社・MELODY)
監督:阿部記之
シリーズ構成・脚本:たかすぎ梨香
キャラクターデザイン:佐藤陽子
音楽:川井憲次
アニメーション制作:スタジオディーン
企画・製作:Netflix
キャスト:
万里小路有功:宮野真守/徳川家光:松井恵理子/玉栄:梶裕貴/春日局:井上喜久子/
捨蔵:福山潤/水野祐之進:関智一/お信:佐藤みゆ希/徳川吉宗:小林沙苗/ナレーション:窪田等
Netflix作品ページ:https://www.netflix.com/title/81464005
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。