【オフィシャルレポ】筋肉少女帯、デビュー35周年を目前にライヴ大盛況 ベストアルバムの試聴ダイジェスト公開
デビュー35周年を前に、「Debut 35th カウントダウンシリーズ」として、2022年5月から様々なシリーズ・ライブを展開し、ファンを歓喜させてきた
そのシリーズ・ライブの最終章となったのが、2023年5月に開催した2本のライブ。5月20日にYOKOHAMA Bay Hallで<『UFOと恋人』発売30年記念再現+Xライブ>を、5月29日に川崎CLUB CITTA’で<『UFOと恋人』発売30年記念再現+XXライブ>を開催した。5月29日=川崎CLUB CITTA’の模様をレポートしよう。
【以下、オフィシャルレポート】
まず今回のライブのテーマとなる『UFOと恋人』とは、筋肉少女帯が1993年に発表した8枚目のスタジオ・アルバム。当時、日本武道館ライブをすでに何度も成功させるなど、高い人気を誇る筋肉少女帯。『UFOと恋人』にはゲームやCMのタイアップがついた曲も収録され、バンドの存在はさらに広く認知されることにもなった。だが当時のシリアスな話をすると、テレビ番組「三宅裕司のいかすバンド天国」を契機に火のついたバンド・ブームも、かげりが見え始めた時期。いろんなバンド・バブルがハジけ、筋肉少女帯がそれまで所属していたマネージメントも経営難に陥っている。『UFOと恋人』の制作に入る頃には、実は筋肉少女帯はどこのマネージメントにも所属せず、ライブのイベンター預かりで活動を行なっていた。同時に水面下では未来に向けた話し合いがメンバーで何度も行なわれるなど、バンドが一丸となっていた頃でもある。いわば踏ん張り時であり、試練の時期。タイアップを狙って曲を作ったり、大槻ケンヂ(Vo)がタレントとしてテレビ番組に積極的に出演していたのも、当時のバンドを取り巻く状況が大きく影響していた。
そんな1993年から時が経つこと30年。デビュー35周年を目前に控え、多くのファンで埋め尽くされソールドアウトとなった会場は、すでに祝福ムードも漂っている。そこに鳴り響いたSEは、EL&Pの「聖地エルサレム」。荘厳な曲に合わせて、照明で赤く染まるステージ。が、数10秒後に流れ始めたのは、真反対のご陽気なお囃子だった。照れたような表情で大槻ケンヂが一人でステージに表われ、歌い出したのはもちろん『UFOと恋人』の1曲目「おサル音頭~BORN TO BE WILD~」。歌詞には当時の疲弊した精神も滲み出ているが、心を癒すように飛び出るコーラスがたまらない。声出し解禁のため、みんなで一斉に“モキモキモキー”やら“ウキウキウキー”と大合唱だ。その楽しさに誘われるように橘高文彦(G)、本城聡章(G)、内田雄一郎(B)、サポートの三柴 理(Kb,Pf)と長谷川浩二(Ds)も、音頭に合わせて手拍子しながらステージに登場。一気にお祭りムードも高まり、バックドロップで『UFOと恋人』のジャケットも表われたところで、いよいよライブは開幕した。
ネコのドルバッキーの声と思われる「1、2、3、4!」を合図に「暴いておやりよドルバッキー」へ突入。愛や恋のきれいごとを歌っておけばオッケーだろうという当時のポップ・ソングに、大槻が皮肉も込めた歌が強烈だ。しかし今、ここにあるのは真実の愛のみ。バンドとファンがひとつになって、コーラスを共に歌い、筋少サウンドに全身を委ねていく。あっという間に笑顔だけが広がる会場になった。
「イェーイ! このノリも久しぶりだね~。『UFOと恋人』、発売、なんとなんと30周年記念。30年前、みなさん、どうしてましたか? 生まれてもいなかった方は、いらっしゃらないでしょうね。お互い、いろいろ年を重ねてきましたね~。しみじみしちゃうなぁ。でもコール&レスポンス、今日はできるからさぁ」 そう言うと、早速、コール&レスポンスで楽しむ大槻とファン。また『UFOと恋人』の再現ライブで気づいたこともあったという。それはセットリストの重要性。激しい曲を続けなければ疲れ知らずで、ライブ後にロキソニンのお世話にならなくても大丈夫だという。「チャクラが開いた。まだ、やれる。50、60、当たり前! バーンとやった後に、ちょっと抑えた曲をやれば、延々とライブやってられるよ」と大それたことまで言い放つ大槻。 そういうことでバーンと始まったのは「くるくる少女」。橘高の趣味趣向を色濃く反映させた様式美かつメタリックなナンバーで、ファンを挑発するように指差しては弾き、弾いては指差す橘高。三柴との掛け合いソロでは、水玉のコートをひるがえしながらエモーショナルに弾きまくる貴公子=橘高。そして激しいサウンドを引っ張っていくように歌うのは大槻。ビブラートも力強い。かと思えば、続く「高円寺心中」ではストーリー・テラーとなり、ファンを惹き込む大槻。そのストーリーにさらに深みや陰影を付けていくのは、内田のベースフレーズや本城のコード・ワーク。歌詞に登場する二人の行く末を、泣きむせぶようにフレーズで描き出すのは橘高。バーンの後だからちょっと抑えた曲ということだろうが、メンバー全員の表現力がすさまじい。
そしてライブは、30年前のエピソードや当時のこぼれ話へ。声出し解禁ゆえ、ファンからのツッコミも交えて、笑いの絶えない漫談の場と化す会場。これもまた筋少ライブの醍醐味のひとつだ。 しかし曲になれば、場面は急展開。悲しみに満ちた「ひまわり」、そのアンサーソングとも受け取れる「きらめき」で切なさで包み込んでいく。ファンは歌詞や音をひとつずつ噛みしめ、曲の世界に没頭していった。アルバム『UFOと恋人』のA面が終了ということで、会場は一度暗転。新たな衣装に身を包んだメンバーが登場し、「君よ!俺で変われ!」からB面へ入っていった。ファンが手にするペンライトが鮮やかな光の波を作り、続く「俺の罪」では大槻もゴーゴー・ダンスしながら楽しさ爆発。
またMCでは、デビュー35周年の記念日である6月21日にLINE CUBE SHIBUYAで記念ライブ「#筋少の日」を開催することや、6月14日にメジャーデビュー35周年記念オールタイムベスト『一瞬!』をリリースすることも告知。ベスト盤について本城が「聴きどころは35年分ある」と言えば、大槻は「35年もやったら1曲ぐらい幽霊の声が入っていても」とボケ始める。すると橘高が「実は…」と、のっぴきならないことを言い出す。もちろん大槻は食いついた。さすが、「緊急検証! 紅白オカルト合戦」の審査員を毎年、務めているだけのことはある。身近なオカルト話に嬉しさを隠せない。しかし、はたと現実に気づいた。ここはステージ、ライブである。「やおらライブのムードが変わってきたんですけど。でも幽霊の話じゃなくて、ライブにお付き合いください」 その言葉と共に「アンクレット」で演奏へ再び突入した。そしてプログレの組曲に通じるスケール感とドラマ性を持ち合わせた「パレードの日、影男を秘かに消せ!」、当時の理想と現実ともがいた様も描いた「タイアップ」、ファンキーな「バトル野郎~100万人の兄貴~」など、『UFOと恋人』の曲順どおりに展開するライブ。
ライブ序盤に大槻は、どんな曲調でも対応できるファンの凄さを称えたが、実際に『UFOと恋人』はバリエーションに富んだ幅広さと奥深さのあるアルバムだ。当時、ある種の危機感も抱きつつ、ふんばりながら、しかし後悔しないように全てを吐き出した作品だったのかもしれない。メンバーにとって、いいことも苦悩も怒りも不条理も、とにかく様々な思い出が染み付いた1枚。
しかし今、高揚感と興奮と幸せでいっぱいのファンを前に各曲を改めて呼吸させていくことで、全てが浄化されていくようにも見える。ポジティブな思い出で塗り替えていくライブである。『UFOと恋人』のラストを締めくくる「バラード禅問答」では、メンバーの歌うメロディや奏でる旋律が美しさを帯びながら感動的に響き渡った。そして本編ラストは、2017年に発表した『Future!』からの「ディオネア・フューチャー」。メンバーの輝く表情は、素晴らしい未来へとみんなを引き連れていく力強さと優しさに溢れていた。
アンコールは『一瞬!』にも収録される最新ナンバー「50を過ぎたらバンドはアイドル」、そしてキラー・チューンの「釈迦」。ロックのMCはパワハラに近いという大槻の分析で、「オメーら、この興奮を胸に秘めて、次のライブまで取っておけよ! わかってんな!!」と、言いながら自分でも吹き出しつつ、大槻はブッ飛ばす。バーンとやって、ちょっと抑えるどころか、最後の最後まで激しく熱い筋肉少女帯がステージにいた。この勢いをさらに加速させながら6月21日、筋肉少女帯はデビュー35周年記念日をLINE CUBE SHIBUYAのステージで迎えることになっている。
なお、このライブに先駆けて発売される筋肉少女帯のオールタイムベスト「一瞬!」。本日、リマスタリング全32曲を収録したベストアルバムの試聴ダイジェスト映像が公式YouTubeにて公開された。新曲とセルフカバーの新録音源3曲もここで聴くことができる。メンバー自身が監修・選曲をおこなったベストアルバムの発売が今から楽しみである。
TEXT:長谷川幸信
PHOTO:コザイリサ
【動画情報】
■筋肉少女帯メジャーデビュー35周年記念オールタイムベスト「一瞬!」
試聴ダイジェスト映像 YouTube URL
https://youtu.be/En3wZEoAIgc
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