テレワークの個室整備、オンライン内見など…コロナ禍から更に変化した住宅市場動向とは
国土交通省は、令和4年度の「住宅市場動向調査」の結果をとりまとめ、それを公表した。毎年実施している大型調査ではあるが、コロナ禍を経て、住宅を取り巻く環境も変わりつつある。その影響がどう表れているか、見ていくことにしよう。
【今週の住活トピック】
「令和4年度住宅市場動向調査」の結果を公表/国土交通省
インターネットの活用は情報収集や問い合わせまでしか進んでいない
この調査は、2021年4月~2022年3月に住み替えや建て替え、リフォームを行った世帯を対象に行ったもの。注文住宅と中古住宅は全国を、分譲住宅、民間賃貸住宅、リフォームについては三大都市圏を対象にしている。
さてコロナ禍では、対面を避けるためにオンラインによる接客やオンライン上の内覧などの手法が採り入れられるようになった。そこで、まずはインターネットの活用がどの程度進んでいるかを見てみよう。
今回の調査では、住宅の住み替えや取得の際の工程を次のように分けて、インターネットの活用状況を聞いている。
(1) インターネットを通じた情報収集
(2) インターネットを通じた問い合わせ、説明会・内見等の申し込み
(3) オンライン会議システム(ZOOM、Teams、Skype等)を活用した物件説明・商談
(4) VR(仮想現実)またはAR(拡張現実)ツールを活用した物件内見
(5) オンラインでの住宅ローン審査(※民間賃貸住宅は対象外)
(6) オンラインでの重要事項説明(※民間賃貸住宅は(5))
(7) 電子署名等を活用した電子契約(※民間賃貸住宅は(6))
(8) (1)~(7)の経験はない(※民間賃貸住宅は(7))
住宅取得等の過程におけるインターネットの活用状況(出典:国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査」調査結果の概要より転載)
いずれの場合も、「インターネットを通じた情報収集」(図の黄色の棒グラフ)が最多でおおむね6割半~8割を占め、特出して多くなっている。次いで、「インターネットを通じた問い合わせや内見等の申し込み」で、最少の賃貸住宅で2割弱、最多の分譲集合住宅(新築マンション)で5割弱といったところだ。
働く場では普及している「オンライン会議システム」の活用だが、図の赤い棒グラフを見る限り、あまり活用が進んでいないようだ。新築マンションの販売センターなどで話を聞く限りでは、多くのデベロッパーがオンライン会議を使った物件説明をしているという話だったので、意外に活用度合いが少ないなというのが正直な感想だ。
売買契約や賃貸借契約の際の電子書面やオンラインの活用はこれから広がるか?
これから普及が進むだろうと見ているのが、インターネットの活用状況の選択肢のうち、(6)のオンラインでの重要事項説明や(7)の電子書面を活用した電子契約である。売買契約や賃貸借契約を交わすときには、必ず重要事項説明を行う(貸主が不動産会社の場合は対象外)ことになっている。かつては必ず対面で行うこととされていたが、オンラインで行うことが可能になった。ただし、国土交通省が定めた細かいルールに準じて行う必要があるため、その環境が整わない不動産会社もあったりして、エンドユーザーが希望しても必ずしも実施できない場合もある。
また、必ず書面で重要事項説明書や契約書を作成することになっていたので、電子書面の交付が可能になった2022年5月以降には、より一層オンラインによる契約の効率化が図れるようになったので、実施状況が上がっていく可能性がある。
社会実験の取り組み(出典:国土交通省「ITを活用した重要事項説明及び書面の電子化について」サイトより転載)
在宅勤務の普及によってそのための個室を確保した?
次に、コロナ禍で普及した在宅勤務の影響を見ていこう。今回の調査では「在宅勤務等のためのスペースの状況」について、次の選択肢を用意して聞いている。
(1)在宅勤務等に専念できる個室がある
(2) 在宅勤務等に専念できる仕切られたスペースがある
(3)仕切られてはいないが在宅勤務等に専念できるスペースがある
(4) 在宅勤務等に専念できる個室やスペースなどはない
在宅勤務等のためのスペースの状況(出典:国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査」調査結果の概要より転載)
賃貸住宅に住み替えた世帯では、在宅勤務のためのスペースがない(図の赤い棒グラフ)という回答が最多で、個室がある世帯は3割強にとどまった。しかし、注文住宅や新築一戸建て、新築マンション、中古一戸建て、中古マンションでは、在宅勤務のための個室があるという回答が最も多かった。また、マンションよりも一戸建てのほうが個室を確保する割合が高い傾向がうかがえる。
これは、住宅の広さの影響があるだろう。一般的な賃貸住宅は持ち家よりも面積が狭いので、在宅勤務のための個室を用意することが難しく、持ち家のなかでも一戸建てのほうが部屋数を確保しやすいので、在宅勤務に充てる個室を用意しやすいということだろう。
個室ではないスペースも含めると、在宅勤務のためのスペースというのは、今後の住まい選びでも意識する必要があるだろう。
住宅スゴロクの崩壊?新築マンションは複数回の取得が多い
最後に、筆者が気になった「住宅取得回数」について見ていこう。
調査で住宅取得回数を聞いたところ、すべての住宅の種類でほとんどが「今回が初めて」と回答している。「今回初めて」の割合が最も少ない新築マンションを見ても、72.9%に達している。逆にいうと、新築マンションを買った世帯のなかで17.4%が「2回目」、9.0%が「3回目以上」と回答しており、4世帯に1世帯は今回の新築マンションが複数回目の取得となる。
理由はさまざまあるだろう。高齢化や少人数世帯の増加により、マンションのほうが暮らしやすいと考える世帯が増えたこと、マンションのほうが売りやすいこと、新築マンションの価格が高騰して購入世帯が限定されたことなどが考えられる。
かつて「住宅スゴロク」といわれた、賃貸住宅→マンション→庭付き一戸建てと住み替えるのが理想とされた時代は終わったようだ。
住宅取得の実態は、そのときの経済状況や社会的な変化が反映された結果になる。ITの進化や働き方の変化、住み心地の価値観の変化など、さまざまな要因が調査結果に表れているようだ。
●関連サイト
「令和4年度住宅市場動向調査」の結果を公表/国土交通省
国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査」調査結果の概要
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