「ブレないインタビュアー」吉田豪著『帰ってきた 聞き出す力』(集英社)

「ブレないインタビュアー」吉田豪著『帰ってきた 聞き出す力』(集英社)
「聞き出す力」は人として必要なコミュニケーション力でもある。

僕の知己に某国立大学でコミュニケーションを教えている人間がいるのですが、著者である吉田豪君の(付き合いが長いので「君」づけでご容赦を)『聞き出す力』を参考にしていると言います。すなわち聞くということは、当然コミュニケーション力の有無につながってくる訳です。大学で教える際のテキストになっているのか、とちょっとした驚きとともに、学生にとっては著名人がたくさん出てくる本なので読みやすいのだと推察します。

聞きだす力とは何なのか。この本から何が読み取れるのか。というキモに入る前に、柔らかいテーマから。

まず、久々に読書中に声を出して笑ってしまいました。ネタバレしないように皆さんに伝えると、前段に俳優・松方弘樹さん、前人未到の400勝投手金田正一さんらの過去本の引用が掲載されているのですが、下世話&無邪気過ぎてあ然を通り越し、笑いをこらえきれませんでした。今は絶対、掲載できない対談です。批判的に言うならば、これで笑う僕もいわゆる「価値観のアップデート」が出来ていないのかも知れません。

ただ、一方で「これで良いのでは」という想いが、松方さんや金田さんについては感じる所があります。不愉快な思いをする女性もいるであろうことは推測できます。が、もう一歩踏み込んで考えると、彼らの言葉には「人間臭さ」があるのです。

本書に掲載されている通り、筆者は「興味がある人間しかインタビューはしない」主義です。なので、いわゆるサブカルやアイドル、プロレスラー、漫画家といった人たちへのインタビューが多くなるものの、何と野球がアメリカで誕生した以来の天才野球選手と言ってよい大谷翔平選手にもインタビューしているのです。彼の人間臭さを引き出せるのか―ー。

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インタビュー内容を掲載するとネタバレになるので本書を手に取って頂きたいのですが、明らかに野球に興味がない吉田君と大谷選手のインタビューはミスマッチでは? と思いきや、大谷選手という天才アスリートの生身の部分の一端を読者に魅せる事に成功。因みに、ここの箇所、大谷選手をある野球漫画の登場人物に重ね合わせて、読者(僕ですが)の笑いを取っています。例えが秀逸。これも以前からの吉田君の原稿の特徴です。このあたりの表現力はさすが、30年近く出版業界・ネット業界の一線を走り続けた物書きのテクニックと言えるでしょう。

本書は「人間臭さ」に注目して、それを引き出していくテクニックを本書では解説しています。松方秀樹さんにしろ、金田正一さんにしろ「面白い人は普通に喋っていても面白い」。人として面白い・魅力的だ。そこに着目して引き出す彼の姿勢は、僕は「吉田君はヒューマニズムの人」だなと、感じる次第です。

そこには優しさが存在するからです。

当然、ダメなものはダメという事はするのですが、基本、彼の優秀さは「優しさ」を大切にする点だと常々思っていました。だからこそ「聞き出せる」のです。というように、コミュニケ―ション力を身につけたい人は本書にヒントがたくさん転がっています。

因みに青木理さんに「ブレないジャーナリスト」と名称づけたのは僕だったと記憶していますが、吉田君もブレませんね。多少は丸くなったのかも知れませんが、尖っている部分は尖っています。本書でも垣間見られます。ブレていません。

が、何人かのライターさんは、年月を経ると変わっていく人もいます。例としてネット右翼化。陰謀論者化。この辺りの地雷地帯を敏感に察知し、避けながら渡り歩いていく吉田君のブレなさを見ていると、彼の社会への姿勢は混とんとしている令和の時代、一つの羅針盤になり得るのかなとも感じる次第です。(文@久田将義)

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