2023年1月27日に公開された映画「THE LEGEND&BUTTERFLY」。木村拓哉さん演じる織田信長と、綾瀬はるかさん演じる濃姫との出会いから本能寺の変まで、夫婦2人の生涯を描いた大作。豪華なオープンセットや迫力の戦闘シーンなど、非常に見どころのある映画で、ぜひ歴史ドラマに興味のない方にも見ていただきたい名作となっている。
さて、織田信長といえば、天下統一を目前にした1582年に家臣であった明智光秀に裏切られ、本能寺でその生涯を終えた。信長に対し“明智光秀に裏切られた人”というイメージを持っている人も多いだろうが、実は信長は光秀以外の家臣たちにもめちゃくちゃ裏切られているのだ。
娘婿の浅井長政、戦国屈指の悪人とされる松永久秀、自分の兄である織田信広など、とかなりの回数、人数。その中でももしかしたら本能寺の変よりも先に生涯を終えていた可能性がある裏切りがあった。
■弟・織田信勝の裏切り…キーマンになったのは後のあの忠臣!
信勝(信行、信成と書かれているものもある)は信長の実弟。1552年に19歳で信長が家督を相続したが、信勝は信長に匹敵する城や家老衆が付けられ、分割相続のような形になっていた。
兄に対抗心を持ったのか、1556年に信勝は信長の直轄地を奪うという暴挙に。信勝についていた家老の柴田勝家らと結託して信勝に謀反を起こした(稲生原の戦い)。戦は信長軍700人、信勝軍は1700人と2倍以上の兵力を持っていたが、合戦中に信長が信じられないほど大きな怒声を発し、信勝軍がそれにビビッて逃げ出したためになんと信長軍が圧勝したとされている。
信長のことだから、自分を裏切った男は身内であろうと許さないのかと思いきや、このときは母親が間に入ったこともあって、なんと信勝の謀反の罪は不問となった。しかし、それに懲りずに再び謀反の計画を立てていた際、柴田勝家がそれを信長に密告。信勝は信長の居城の清州城に呼び出されそこで誅殺された。
稲生原の戦いで信長が討たれていた可能性も十分にある。そのキーマンが柴田勝家だ。
信勝の家臣だった勝家は、当時“信長を裏切った”という意識はおそらくなかったと思う。勝家は信勝の重臣として、織田家の家督争いの中で信長と敵対していたに過ぎない。
稲生原の戦いについては正確な資料が乏しいため、正確なことはあまりわかっていない。信勝軍は確かに撤退を余儀なくされたが、猛将の勝家率いる軍は一時信長軍を圧倒していたという。しかし勝家が負傷して退いたことにより形成が逆転し、勝家不在の軍を信長軍が打ち破ったという。2度目の裏切りの際も、勝家が密告をせずに信勝に味方していれば信長・信勝のパワーバランスは大きく崩れていたと思われる。
兵力の差があった戦で、柴田勝家が負傷せずに戦っていたら…
勝家が密告をせずにもう一度信勝とともに戦っていたら…
信長は家督争いに敗れて討たれた無名の戦国武将となっていたかもしれない。
(Written by 大井川鉄朗)