かぬまシウマイを食す旅。シュウマイ研究家が巡る栃木県鹿沼市
これまで注目されることがなかったシュウマイを応援すべく、全国のシュウマイを1,500種類以上食べ続けてきた、シュウマイ研究家のシュウマイ潤です。今回は、シュウマイを活用した地域活性化で注目される、栃木県鹿沼市で「かぬまシウマイさんぽ」してきました。
【目次】
東京駅
かぬまシウマイで地域活性する鹿沼市へ
鹿沼市は2021年より、地元商工会議所が中心となり、全国初(?)となるシュウマイを活用した地域活性化を行っている。そのユニークなテーマと、元祖・シウマイ企業の一つ「崎陽軒」のサポートもあり、全国的にも注目されている。
鹿沼市へは、まず、JR東京駅から東北新幹線「やまびこ」に乗り、50分ほどかけてJR宇都宮駅に。JR日光線に乗り換え15分ほどでJR鹿沼駅に到着。乗り継ぎがよければ1時間強でついてしまうのだ。
鹿沼駅
駅前にシウマイのまちのシンボルが……
鹿沼駅の改札を抜けると、目の前のターミナルに、2021年9月に設置されたシウマイのまちのシンボル「シウマイ像」が!
私は一度訪れたことがあるので、これをシウマイ像とすぐ認識できるが、正直、あの丸くほんわかしたシュウマイのフォルムとは一線を画す、直線的かつ前衛的なデザイン。このギャップにネットを中心に物議を醸したが、隣町の餃子のまち・宇都宮にある「餃子像」のリアルなビジュアルとの対比も面白く、いい意味で話題を呼び、鹿沼が注目されたとも考えられる。
今回は、鹿沼商工会議所が制作した「かぬまシウマイ オフィシャル店舗マップ」(以下、シウマイマップ)をもとに、2日間かけて4店舗を巡ることにした。
さっそく1店舗目に行きたかったのだが……なんと、この日は月曜で鹿沼の飲食店の多くが定休日。タイミングが悪い中、シウマイマップから気になるお店を見つけることに成功。夕方からの営業のため、まずは鹿沼の代表的な史跡を巡ることにした。
今宮神社
「シウマイのまち」を見守る氏神
鹿沼の守護神である「今宮神社」に向かう。最近、日々シュウマイばかり食べているため、健康面を考慮して鹿沼市内はすべて徒歩移動にした。ただ、駅からリーバス(路線バス)が運行(※)されており、それらを活用すると楽に巡ることができるはずだ。
※編集部注:鹿沼市内のリーバス(路線バス)の路線図・時刻表はこちら
鹿沼駅から徒歩約20分。今宮神社に到着。
由緒ありそうな立派な境内と建物や彫り物。創建は1532年(天文元年)。一度は荒廃したものの、1608年(慶長13年)に鹿沼宿の氏神として再建されたという。歴史の重みが随所に感じられる。
シュウマイ研究家としては、ここ「シュウマイ神社(私が勝手に命名)」で、来年の運気を見ておきたいところ。境内におみくじがあったので、やってみた。
中吉。「最初は心配ごとが絶えませんが、あとになって何ごとも望み通りになり幸福が続きます」とのこと。実は私、2022年に日本シュウマイ協会を立ち上げたので、その暗示だろうか……シュウマイも蒸すのに時間がかかる。今は忍耐、だと言い聞かせる。
仲町屋台展示収蔵庫
緻密かつ大胆な巨大屋台彫刻に圧倒
次に、鹿沼を代表する観賞施設「仲町屋台展示収蔵庫」に向かった。鹿沼市には27の彫刻屋台があり、まちのシンボルらしい。今宮神社からは徒歩約3分とすぐ。
こちらの施設は自由に見学でき、入り口付近のボタンを押すと、庫内が点灯。30分ほどで自動的に消灯する仕組みになっている。
仲町屋台は27ある彫刻屋台の代表格で、1836年(天保7年)の制作。
庫内中央に飾られた彫刻屋台は、ガラス張りの展示ケースの外側から見学する。ガラス越しでも伝わる大迫力! 幅10尺(約3m)、奥行き、高さともに12尺(約3.5m)と、大きさそのものが巨大だが、そこに刻まれた木工彫刻の緻密さと豪快さが、素人目にも伝わってくる。
今回、特別に展示ケース内に入れていただくことができたが、近くで見るとさらにその彫刻の技巧の凄さが伝わってきた。
嘉蒂
本格中華料理店のシンプルシュウマイ
仲町屋台展示収蔵庫から来た道を戻り、徒歩で約25分。鹿沼駅にほど近い中華料理店「嘉蒂(かてい)」が、今回の旅、初シュウマイの店である。
さっそく入店し、初日の締めくくりとして瓶ビールとおつまみのメンマ、そして目的の「焼売」を注文。ちなみに、私はいつもシュウマイそのものの味わいを確認するために、できるだけシンプルなサイドメニューを心がけている。結果、この渋いセレクトとなった。
シュウマイの大きさは1個30g強ほど。一般的なサイズよりも少し大きめ。食感はやわらかめで、具材は豚肉と玉ねぎとシンプル。じんわりと具材の旨みが滲み出てくる。おそらく、私が選んだシンプルなメンマなどと対極な、濃厚だったり刺激の強かったりする料理にも合いそうだ。また、ビールだけでなく紹興酒、サワーなど、どんなお酒にも合いそう。
こちらのお店の味は、中国出身の奥さんの「故郷の味」をかなり意識しているそう。しかし奥さんいわく、「故郷ではシュウマイはあまり食べない」そうで、日本的なシュウマイをこの店流にアレンジ。
鹿沼の名産であるニラの美味しい春になると、本場中国でも食べるスタイルの「ニラ玉焼売」をつくるとのこと。今回は食べることができず。無念……。
3個のシュウマイは結構なボリュームで、明日のシウマイ巡りのために、ほどほどの腹もちで終了。ほろ酔いで店を後にし、宿泊地の宇都宮駅へ戻った。
笑福シウマイ
かぬまシウマイの先駆者がお出迎え
昨日1シュウマイしか食べられなかった分、心もお腹もシュウマイモード(?)でテンションを上げ、昨日に続き宇都宮駅から日光線に乗り、鹿沼駅へ。
鹿沼駅の改札を抜け、今日はシウマイ像には軽く挨拶のみ。そのすぐ奥に建つ、「かぬまシウマイさんぽ」2軒目の「笑福(エフ)シウマイ」に向かった。
お弁当も気になるものの、このあと2軒のシュウマイを食べることを考慮し、基本の肉シュウマイ「特製シウマイ」3個と「チリシウマイ」2個を注文。
特製シウマイは、豚の赤身肉使用の「筋肉体質」。しっかりと噛み締められる食感とともに、赤身肉の風味と旨みが前面に出ている。味付けは十分だが、全体的にあっさり目なので、1個40gと大ぶりながら、食べ飽きずに3個をぺろり。
チリシウマイは、チリソースがこの特製シウマイの旨みをさらに引き立てる。ちょっと濃いめのソースとピリ辛風味が食欲を引き立て、白いご飯もいいがビールが欲しいなあ……と午前中から思いつつ、これまた先のことを考え、我慢して駅前を後にした。
安喜亭本店
栃木シュウマイの元祖? スープも希少
駅前の笑福シウマイから、徒歩約15分かけて「かぬまシウマイさんぽ」3軒目の「安喜亭本店」へ。
到着時はちょうど昼時。混雑しているなか、ほとんどのお客さんが「シュウマイ」と「豚そば」を注文。私もそれに準じようと思ったけれど……「シュウマイスープ」を発見。最近増え始めた、シュウマイをお酒とともに楽しむスタイルのお店では、スープに入れるスタイルも増えてきたけれど、こんなクラシックなお店でスープが? 実は、大正14年創業の安喜亭では昔から提供しているメニューとのこと。シュウマイ研究家としては食べぬわけにはいかない。「豚そば」は諦めて、シュウマイとシュウマイスープ。おそらく、こういう組み合わせをする人は地元ではいないのだろう、店員さんは半笑い。
そして、シュウマイとシュウマイスープが登場。
シュウマイは玉ねぎとつなぎがメインのもっちりで食べ応えのあるスタイル。
おすすめのソースで食べたら、どこかで食べたことがある味……そう、鹿沼市と同じ栃木県の足利市にある、具材に肉を使わずソースで食べるスタイルの足利シュウマイ! 同じ地域での共通点を発見し、ひとり心躍る私。
スープは、もっちりしたシュウマイが中華スープをよく吸い、ワンタンよりも食感がモチフワで面白い。スープがまたシンプルで無駄ない美味しさ。
ノーマルのラーメンも食べたい、そしてみんなが食べていた「豚そば」も食べたい……と迷いながらも、シュウマイ8個を平らげ、かなりの満腹感。
みっちゃん蕎麦
名物そばとニラの個性が凝縮
安喜亭本店から徒歩で約10分。最後の目的地である「みっちゃん蕎麦」へ。
蕎麦屋でシュウマイ……? 否、蕎麦屋や居酒屋、割烹などでもシュウマイを開発・提供する多様性こそ、かぬまシウマイ最大の特徴なのだ。
本当は、鹿沼名産のニラを使った「ニラそば」を食べたかったが、お腹に蕎麦を食べる余裕はなし。旅の最後の〆でもあるので、お疲れさまの「瓶ビール」と「ニラそばシウマイと温野菜」をつまみ的に注文。
何度も試作を繰り返し行き着いた、そばの実とニラの共演シュウマイ。それぞれの食材の個性と、シュウマイの肉感が絶妙なバランスでマッチ。大きさは中ぶりで、その時の腹具合にはちょうどよかった。
シュウマイというと、つけるのは辛子醤油が一般的だが、ここではあえてポン酢。それがまたあっさりした味わいを後押しする。
近くの新鹿沼駅から鹿沼駅まで直通バスもあるが、みっちゃん蕎麦から鹿沼駅まで約35分かけて歩く。ほどよい酔い覚ましと腹ごなしになった。シュウマイ10数個分のカロリーも十分消費できただろう。
と、「かぬまシウマイさんぽ」というには若干駆け足気味で4軒を巡ったが、前述のとおり、マップ掲載店舗は60店舗。まだ1/10にも満たない。次に訪れる楽しみを感じつつ、次は必ず月曜をさけて訪れようと、改めて心に留めて鹿沼駅から帰路についた。
東京駅
掲載情報は2023年1月31日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
旅するメディア「びゅうたび」は、ライターが現地を取材し、どんな旅をしたのかをモデルコースとともにお届け。個性たっぷりのライター陣が、独自の視点で書く新鮮な情報を、臨場感たっぷりにご紹介します。
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。