また一緒に遊ぼうね。香取慎吾LIVE「Black Rabbit」

2023/01/24 12:00 NeoL／ネオエル

一面、緑の海だった。15色もあるペンライトなのに、やはりみんなの心は「緑」に染まっていた。香取慎吾LIVE『Black Rabbit』はオープニング前からそんな会場の一体感で満ちていた。東京・有明アリーナで1月21日、22日にかけておこなわれた本公演。新しい地図としては有観客イベントも解禁されたが、ソロライブとして久しぶり。しかも、香取慎吾としてのアリーナクラスでのライブ開催は初となる。

オープニング、スクリーンが開くとそこにはたった一人、スポットライトに照らされた男が立っていた。ロング丈の白い衣装にマスク。香取慎吾の登場だ。そこにブラックスーツに身をまとったSNG DANCERSたちが合流し、1曲目の「Metropolis」の演奏が始まった。1stアルバム『20200101』に収録された、WONKとのコラボ曲だ。正式タイトルは「Metropolis (feat. WONK)」。WONKの荒田は以前ラジオで、ただ曲を提供させてもらう仕事かと思っていたのに、タイトルに自分たちの名前があることに驚いたと語っている。提供というか、一緒に作った。WONKは制作を振り返りそう語っていたが、香取自身もその感覚でいるのだろう（むしろそこにはアーティストに対する敬意すら感じられる）。

実際に香取慎吾のアルバムを聞くと「feat.◯◯」の数の多さに驚いてしまう。しかもそれぞれ曲調が全く違う。相手のアーティストの懐に入り込み、その色に存分に染まっている感じがする。まるで自分が変わるということを楽しんでいるみたいに。
アイドル時代から豪華なミュージシャンたちの楽曲提供を受けてはいたが、ソロになってからはフレッシュな顔ぶれが目立つというのも特徴だろう。画家としての活動面においても、磯村暖など若手アーティストとのコラボレーションを行っている。幅広くアンテナを立てて、自分がいいと思った人とならキャリアに関係なく一緒に仕事をする。今はそれがちゃんとできているということだ。

それからしばらくパフォーマンスが続く。「Trap」ではネイビーのジャケットスタイルにさっそくチェンジ。濃密なグルーヴを感じさせるナンバーが心地よく、身を任せると体が勝手に揺れてしまう。軽快なポップチューン「10％」は元気で明るく、まさに私たちの知る香取慎吾のパブリックイメージそのもの。＜Ye ye ye ye…＞や＜Na na na na…>など、歌詞のリズムに合わせてペンライトが上下に揺れることで、観客みんなが楽しんでいることが伝わってくる。2ndアルバム『東京SNG』に収録されたジャジーなナンバー「こんがらがって」からはスパンコールが光るタキシードに着替えての登場。SNG BANDも加わり、ビッグバンドの生音が大いに華を添えていた。

ライブ中、ずっと同じテンションで駆け抜けるそのパワフルさに改めて驚いてしまった。といっても、それはテレビ等でみてきた印象と変わらない。つまりそれだけ毎回どんな仕事にも全力で挑んでくれていたということ。MCのとき、わざと息切れの音をマイクに大きく拾わせていたが、それだって会場の笑いを誘うためのパフォーマンス。それに加え「久々のスタンディングでみんなも同じでしょ？」とファンを労う言葉も忘れない。コロナ禍でライブが制限されていたなか、ファンがこの状態をどれだけ心待ちにしていたか。そのことだって本人は十分に理解しているはずだ。

さらにMCで語られた言葉からは、今日に至るこれまでの香取慎吾の軌跡を思わずにはいられなかった。「こんな大きなところで一人でライブをする日がくるなんて」としきりに語っていたが、本人のこの思いは、まだ芸能界に入りたての10代前半にまで遡る。先日も大阪城ホールで新しい地図の『NAKAMA to MEETING Vol.2』が行われたばかりだが、そのときも子どもの頃の思い出が脳裏に蘇ってきたのだそう。

大先輩のバックで踊っていた頃、「いつかこんな風に前でスポットライトを浴びたいと思っていた」という。デビューは小5。それからずっとショービジネスの世界を突き進んできた。「マイケル・ジャクソンの東京ドームのステージを観に行ったとき、目があった気がした」という話は、ファンなら「わかる……」しか言えない。そしてはじめて東京ドームに立ったときは、ステージに手をついて、「マイケル、やっとここまできたよ」と心の中で報告したらしい。そうやって一歩ずつ歩んできたのだ。その先に、今がある（歌い続けてくれてありがとう！）。

そのときに理解した。今目の前にいる香取慎吾には、デビューした小学生の頃の、10代の、20代の、30代の、そして40代になった今の香取慎吾の、全年齢の面影がそのままある。これまで第一線を走り続けてきたすべての過去を糧にして、今ステージに立っているのだ。そう思うと、子どものようにも見える瞬間も、アイドルとしてもがいていた若き日の顔に見える瞬間もあって、思わずハッとした。これがスーパースターたるゆえんなのだろう。

前日のライブには稲垣吾郎が来てくれていたが、ライブ中はそのことを忘れていたという話や（改めて電話をくれたらしい）、今日は草彅剛がきて…いないという話（ドラマ『罠の戦争』の撮影中）など、小学生の頃からずっと一緒にやってきた新しい地図メンバーのことにもちゃんと触れてくれる心遣いも、ファンにとっては嬉しいものだ。

ライブで演奏された楽曲で特にシビれたのが、香取主演のドラマ主題歌であった「Anonymous」。曲の真っ赤な世界観に合わせ、客席のペンライトも示し合わせたかのようにさっと赤に変わっていった景色の壮観さといったらなかった。これにはきっとエモーショナルな感情が湧いたファンも多いことだろう。ほかにも「Slow Jam」では会場がほぼ青、「シンゴペーション」はほぼ黄色など、曲に合わせてファンが染めるペンライトの色に一体感があったのもみていて楽しかった。そしてセンターステージで1人、スポットライトを浴びて歌う「ひとりきりのふたり」には、これからもエンタメの世界で生きていく覚悟のようなものも感じられた。

ライブ日は、ちょうど3年ぶりとなる個展『WHO AM I -SHINGO KATORI ART JAPAN TOUR-』の最終日でもあった。歌って踊って、芝居をして、絵を描いて。個展のタイトル通り「本当の自分は誰なのか」と感じることがこれまで何度もあっただろう。壊れそうな気持ちになってしまったこともあるかもしれない。それでもひたすらエンターテインメントをやり続けてきてくれたおかげで、今日のステージがある。これまでの活躍を知っているからこそ、その目の輝きと楽しんでいる姿に希望を見た。

「また一緒に遊ぼうね。アイシテマース」。最後の挨拶に、拍手は鳴り止まない。

《香取慎吾コメント》
最高でした。香取慎吾史上アリーナ規模でのライブデビュー日になりました。ここが新たな始まりで、応援してくれる皆さんと音楽でもっとつながっていつまでも笑顔をつむいでいきたいです。

text Daisuke Watanuki（https://twitter.com/watanukinow／https://www.instagram.com/watanukinow/）

香取慎吾LIVE「Black Rabbit」
【東京公演】会場:有明アリーナ公演日:2023年1月21日(土)15:00/1月22日(日)13:00
【神戸公演】会場:神戸ワールド記念ホール公演日:2023年3月14日(火)15:00/3月15日(水)15:00
【チケット料金】全席指定 9,800円(税込)
【公式サイト】https://black-rabbit.jp/
2022年8月20日に開業した「有明アリーナ」。香取慎吾は2022年8月24日に、稲垣吾郎・草彅剛とともに「東京2020パラリンピック1周年記念イベント」にIPC 特別親善大使として参加して以来二度目となるが、今回はソロアーティストとして香取自身にとって初のアリーナクラスでのライブ開催となる。
月曜夜10時より放送中草彅剛主演新ドラマ『罠の戦争』の主題歌新曲、香取慎吾×SEVENTEENによるコラボレーション楽曲“BETTING”(2023年1月17日配信)がアンコールにて初披露された。2023年1月16日~1月18日の集計でダウンロード数国内1位獲得

香取慎吾 2ndアルバム『東京SNG』
(2022年4月13日(月)発売)
01.「東京 SNG」
Written by Hiroaki Yamashita, Shutoku Mukai, Shingo / Arranged by Hiroaki Yamashita
02.「こんがらがって(feat.H ZETTRIO)」
Written by H ZETT M, Kana Yaginuma, Shingo / Arranged by H ZETTRIO
03.「Catharsis(feat.WONK)」
Written by WONK, Yanosuke, Shingo / Arranged by WONK
04.「今夜最高ね」
Written by Sohsaku Ohtake, Shingo / Arranged by Yoichi Murata
05.「ひとりきりのふたり(feat. ヒグチアイ)」
Written by Ai Higuchi, Shingo / Arranged by Motoki Matsuoka
06.「シンゴペーション(feat. Gentle Forest Jazz Band)」
Written by Motoi Murakami, Gentle Kubota, Shingo / Arranged by Motoi Murakami
07.「Mack the Knife」
Written by Bertolt Brecht, Kurt Weill, Marc Blitzstein / Arranged by Yoichi Murata
08.「Slow Jam」
Written by Mori Zentaro, ZIN, Shingo / Arranged by Mori Zentaro
09.「Happy BBB(feat. 田島貴男(Original Love))」
Written by Takao Tajima, Naruhiro Gompa, Shingo / Arranged by Takao Tajima / Horn Arranged by Yoichi Murata 10.「東京タワー(feat. 新しい学校のリーダーズ)」
Original Artist:Hibari Misora / Composed by Toru Funamura / Lyrics by Toshio Nomura / Arranged by Yasuharu Konishi
11.「道しるべ」
Written by Takeshi Ota, Gekidanhitori, Shingo / Arranged by Takes
【公演情報】https://tokyosng-meijiza.com

『香取慎吾二〇二二年四月特別公演東京SNG』東京公演:2022年4月16日(土)~5月6日(金) 全22公演
会場:明治座『香取慎吾二〇二二年六月特別公演東京SNG』
京都公演:2022年6月24日(金)~7月10日(日) 全19公演
会場:京都劇場

■シングル:香取慎吾×SEVENTEEN「BETTING」
【デジタルリリース情報】2023年1月17日(火)00:00配信リリース香取慎吾×SEVENTEEN「BETTING」
Written by WOOZI, BUMZU, Nmore, Shannon, Yanosuke, Shingo