2023年に開業する北海道日本ハムファイターズの新球場エスコンフィールド北海道のバックネットまでのファウルゾーンが「公認野球規則」に定められた距離に3m足りず、規則よりも狭くなっているというニュースが報道された。
3m足りない問題、ついに決着!
事の発端は11月7日。プロ野球実行委員会で新球場の本塁からバックネットまでの距離が50フィート(15.18m)で設計されており、公認野球規則の「競技場の設定」に定められている「本塁からバックストップまでの距離、塁線からファウルグラウンドにあるフェンス、スタンドまたはプレイの妨げになる施設までの距離は、60フィート(18.288m)以上を必要とする」との規則を満たしていないという指摘があった。すでに工事の95%が終了しているタイミングで、とんでもないルール違反が見つかってしまった。
これについての決着が11月14日についた。12球団代表者会議が行われ、ファイターズの川村浩二球団社長兼オーナー代行が謝罪を行い、23、24年オフに規則通りのサイズに直す改修案を提示した。現状の違反状態のまま2023年の開幕と、2年間かけての改修が認められた形になった。
そもそもなんでこんなミスが発生したのか
ファイターズは今回の規則違反について、公式HPで「FSEおよび当球団において公認野球規則の解釈、認識が不十分であったことが挙げられ、もっと早期に本件について自ら気付き、関係各所に相談すべきであった」と反省の弁を述べている。
設計を担当した米国設計会社HKS社(本社:アメリカ・テキサス州)がアメリカの公認野球規則(OFFICIAL BASEBALL RULES)に準じたMLBの球場ルールでは問題がないと判断し、日本でも大丈夫だろうということになったという。日本の公認野球規則はアメリカの公認野球規則を翻訳したものであり、同じ内容であると判断したのだろう。
しかしアメリカ公認野球規則では本塁からバックストップまでの距離が「60フィートを推奨(recommend)」としているが、日本の公認野球規則では「60フィート以上必要とする」となっていたのだった。
ファイターズ球団にも落ち度はもちろんある。日本のプロ野球で使う球場なのだから、日本の公認野球規則やNPBに確認しなければならなかった。
ルールがある以上守らなければならない。作ってしまったのだから認めろ、という「やったもん勝ち」は問題がある。実際、広島東洋カープが使用しているマツダスタジアムもバックネットまでの距離を規則より短いものにしたいと考え、NPBに打診して却下されたことがあるそうだ。ファイターズ球団には真摯に反省してもらい、改修工事に取り組んでもらいたい。
でも…規則違反球場は他にもあるよ!
今回のファイターズ新球場以外にも、実は公認野球規則に違反している球場がある。それはヤクルトスワローズ本拠地の神宮球場、ベイスターズの横浜スタジアム、そして聖地甲子園球場だ。
公認野球規則の競技場の設定にはこんな記述がある
「【付記】
(a)1958年6月1日以降プロフェッショナル野球のクラブが建造する競技場は、本塁より左右両翼のフェンス、スタンドまたは左右両翼のフェアグラウンド上にあるプレイの妨げになる施設までの最短距離は325㌳(99.058㍍)、中堅のフェンスまでの最短距離は400㌳(121.918㍍)を必要とする。
(b)1958年6月1日以降現在の競技場を改造するにあたっては、本塁より左右両翼およびフェンスまでの距離を、前記の最短距離以下に短縮することはできない。」
要するに、プロ野球で使用する球場のレフトとライト(両翼)までの距離は99.058m、センターまでは121.918m必要だという。
この基準に照らし合わせると、神宮球場(1926年)は両翼97.5m、横浜スタジアム(1978年)は両翼94m、甲子園(1924年)は両翼95mと規則の99mに足りていない。この規則に合うように改修工事を行った球場もある中、この3つの球場は未だに規則違反の状態が続いている。
神宮球場と甲子園球場は規定ができる前に作られた球場なので、後からできた規則に合わせて改修工事をしろというのは理不尽かもしれない。横浜スタジアムも建ぺい率の問題があり、これ以上球場を広くすることはできないという。
実は規則違反の球場は既に3球場もある。だからといってエスコンフィールド北海道をこのまま認めるべきと言うつもりはない。しかし、普段から違反している球場で我々はプロ野球を楽しんでいる。多少距離が足りないくらいは些細なことなのだから、ファイターズ球団や選手、新庄監督へのインターネット上での過度なバッシングは絶対にやめてほしい。
(球団にはしっかり反省していただきたい!!!)
(Written by 大井川鉄朗)