有松絞の町・名古屋市有松。絞り体験に江戸風情を楽しむ街歩き
こんにちは。はたみさこと申します。日々、お着物で生活しています。もちろん旅行もお着物で。
「せっかく着物で旅をするなら、風情ある街並みや伝統工芸にも触れたい!」ということで、江戸時代から400年以上続く絞り染め「有松・鳴海絞」(有松絞)の産地として知られ、日本遺産にも認定されている名古屋市の有松地区へ。国の伝統的工芸品にも指定されている有松絞、その伝統と歴史を肌で感じる列車旅に出かけました。
東京駅
東京駅から絞り染めの町「有松」を巡る列車旅へ
久しぶりの列車旅、早起きしてちょっと早めにJR東京駅に到着。東海道新幹線「のぞみ」に乗って、名古屋へ向かいます。
有松絞にちなんで、絞り染めの長襦袢(着物と肌着の間に着る下着)をコーディネート。旅先に関連するアイテムを身に着けるとワクワク感が倍増します。
袖口からのぞく襦袢をチラチラ眺めつつ、これから始まる旅の妄想を膨らませること約1時間半。あっという間にJR名古屋駅に到着。徒歩5分ほどの名鉄名古屋駅から名鉄名古屋本線で約20分、有松駅に到着です。
有松駅には、街歩きに便利なパンフレットも置いてありました。おすすめです。
有松天満社
まずは有松の氏神さまにご挨拶
有松駅から徒歩約10分、「有松天満社」に向かいます。
70段ほどある石階段の両脇には、有松絞で染められた「のぼり旗」が並んでいます。お守り袋も有松絞で素敵でした。
菅原道真公を祀る神廟(しんびょう)には、繊細かつ豪華な装飾が施されていて、目が釘付けになります。早い時間帯だったので、拝殿を独り占め。石階段を上って訪れた甲斐がありました。
カフェダイニング庄九郎
有松絞の開祖「竹田庄九郎」の本家でランチ
有松天満社から歩いて約6分、「カフェダイニング庄九郎」に到着。有松絞の開祖・竹田庄九郎の後裔である竹田家の離れを改装したお店です。
暖簾をくぐり、なかに入ると、和と洋、歴史と現代が絶妙に調和していて、思わず「素敵!」と声に出してしまいました。随所に有松絞が配された素敵な雰囲気に、お料理を注文するのも忘れて見入ってしまいます。
内装やお料理には、竹田庄九郎の流れをくむ、有松絞問屋「竹田嘉兵衛商店」の七代目の長女であり、お店のオーナーでもある中村俶子さんのこだわりが溢れています。日本の伝統美のなかで生まれ育ったオーナーのお話はとても興味深く、一日中聞いていたいくらいでした。
おすすめは、1日限定10食の「庄九郎ランチ」。3種類のアレンジ寿司(ネギトロ・イクラとホタテ・マグロ)・スープ・サラダ・飲み物・和菓子がセットになっています。味付けは上品で、女性にはちょうど良いボリューム、ビーツのスープも美味しかったです。
飲み物は、お抹茶または、コーヒー、紅茶から選べ、お抹茶を選ぶと地元の和菓子がいただけます。
お料理の器も地元の作家さんのもので、地元愛を感じるおもてなしにうれしくなります。
お腹も心も満たされて、お会計を済ませたところ、オーナーの中村さんより「よかったら隣のお店も見ませんか?」とのご提案。
え︎ うれしい♡実は、お隣の「竹田家住宅」(現:竹田嘉兵衛商店)も是非訪ねてみたかったのですが、門が閉まっていて営業しているのかわからず、「今日はお休みなのかな?」と思っていたところでした。
竹田家住宅(現:竹田嘉兵衛商店)
有松の伝統的な建物・竹田家住宅
有松の代表的な家系である竹田家は、江戸時代から続く有松絞の商家です。改築はされていますが、主屋は江戸時代の建築。主屋の豪華な装飾だけでなく、14代将軍徳川家茂が訪れたとされる歴史ある茶室「栽松庵(さいしょうあん)」もあり、その繁栄がうかがえます。
今でも伝統的な町屋建築の美しさが保たれており、日々のお手入れの丁寧さに驚きます。手間暇がかけられた空間は、その場にいるだけで心が清らかになるようです。
なんと、この伝統的な建物では結婚式を挙げることもできるそう。伺った日は、翌日に行われる結婚式の準備中。有松絞の色打掛がとても素敵でした。
有松エリア
Cafe T-Ryujyu
「Cafe T-Ryujyu」でひと休み
散策を楽しんだらひと休み。「Cafe T-Ryujyu」は陽当たりが良く、ナチュラルな雰囲気が落ち着くカフェです。
お目当ては、有松絞の藍色をイメージしたドリンク「藍ラテ」。美肌効果が期待できるというバタフライピー(藍胡蝶)を使っています。かわいすぎる見た目で、インスタ映え間違いなし。オーナーお手製のスイーツは数種類あり、ガトーショコラを注文。甘すぎないので藍ラテとの相性は抜群でした。
やさしくてセンスの良い、オーナーの本田さんと、お話しをしながらお茶タイム。有松絞を購入するなら、例年6月に行われる「有松絞りまつり」の時が1番お得、という情報もゲット♪
「街歩き用のお着物をレンタルできるお店ってありますか?」と尋ねてみると、なんと! お友達のお店を紹介してくださることに。
ご紹介いただいた美容室「さらさ」さんは「CafeT-Ryujyu」から徒歩約5分のところにあります。6月から10月は有松絞の浴衣もレンタル(要予約)されているそうで、お着物好きの店主・みわこさん選りすぐりの有松絞がたくさんありました。ぜひ、お着物で街歩きを楽しんで欲しいです。
みわこさんの笑顔にも癒やされ、有松駅から名鉄名古屋駅へ向かい、駅近くのホテルへチェックインして1日目は終了。
岡家住宅
市指定有形文化財「岡家住宅」を見学
名鉄名古屋駅から再び有松駅へ。今日は、有松絞の伝統的な絞りを体験します!
その前に、駅から徒歩5分くらいのところにある市指定有形文化財「岡家住宅」を見学。有松の伝統的建造物のなかで、主屋の間口は最大級、ほぼ江戸時代末期の建造当時の姿のまま残っているそうです(公開は土・日のみ)。
岡家住宅は、江戸後期~明治時代の尾張藩士で画家・小田切春江の錦絵『丸屋丈助店先』にも描かれているそう。
タジン鍋のようなこちらの古道具は、糸でくくった絞りの糸を解いて、お湯の蒸気でしわを広げて反物の幅を整える「湯のし」の道具です。レアな道具に出合え、知識が増えました。
幸運にも、竹田家住宅で結婚式を挙げた花嫁さんが、岡家住宅を背景に撮影中のところに遭遇。白無垢姿と街並みがベストマッチでした。
有松・鳴海絞会館
有松絞の歴史と技法を学ぶ
岡家住宅をあとにして徒歩約7分、「有松・鳴海絞会館」へ到着。
1階は有松絞のお土産コーナーになっていて、小物から洋服、浴衣の反物まで、幅広い種類の商品がそろっています。2階は資料館になっており、資料や映像、そして職人さんの実演で、有松絞の歴史や、技法などを学ぶことができます。
有松絞は世界一技法が多いそうですが、職人さん1人につき1技法で行います。90歳を超えて現役で活躍中の職人さんもいらっしゃるそうです。実演中の職人さんとお話しできるのは、貴重な経験です。
有松・鳴海絞会館
いよいよ、絞り染め体験に挑戦!
歴史や技法を学んだ後は、いよいよ「絞り教室」に参加します(※)。絞りの技法は「くくる」「ぬう」「たたむ」の3つが基本となっていて、今回は、たたむ技法を使った「板締め 雪花絞り」にチャレンジしました。
※編集部注:教室は事前予約制。詳細はこちら
白い手拭いを、丁寧に幾重にも三角形にたたみ、板で挟みます。
板に挟んだ手拭いを好きな色の染料に浸けて、染めていきます。染色は一発勝負、浸す分量や時間、使う色数によっても柄が変わります。
どんな風に染まっているかは、広げてからのお楽しみ。担当してくださったのは、久野剛資先生。なんと、ズボンと靴が絞りのお姿! 有松絞への情熱がほとばしるカッコイイ先生でした。
左は一緒に体験した男子高校生の作品。右は私の作品。作品には個性が表れているようです(笑)。作品から伝わるとおり、ワクワク・ドキドキの体験でした。
有松天満社
最後も氏神さまへご挨拶
お天気とご縁に恵まれ、有松を思う存分楽しませていただいたお礼に、もう一度あの石階段を上り有松天満社へ。氏神さま様にご挨拶。
門が閉まっていたので、扉越しのご挨拶でしたが、扉をよく見ると、梅の形を発見! こんなところにも胸キュンポイント♪ 最後まで心ときめいて有松をあとにしました。
有松駅から名鉄名古屋駅を経由して東海道新幹線で東京駅へ。帰りは東海道新幹線「ひかり」で、有松の余韻に浸りながらゆっくり帰京。カメラに収まった写真は300枚を超えていて、心を動かされる瞬間がたくさんあったと、あらためて感じました。
東京駅
掲載情報は2022年12月22日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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