人類が滅びゆく“地球最後のクリスマスイブ”『サイレント・ナイト』カミラ監督インタビュー「いわゆるラブコメディの風刺でもある」

キーラ・ナイトレイ主演、ローマン・グリフィン・デイヴィス(『ジョジョ・ラビット』)、リリー=ローズ・デップ共演、人類が滅びゆく“地球最後のクリスマスイブ”を過ごす家族の姿を描く『サイレント・ナイト』が、11月18日(金)より、グランドシネマサンシャイン 池袋ほかにて公開中です。

【ストーリー】今日はクリスマスイブのディナーパーティー。ネル(キーラ・ナイトレイ)とサイモン(マシュー・グード)、息子のアート(ローマン・グリフィン・デイヴィス)たち家族のもとに、親友たちが次々と集まってくる。しかし、今年はいつものクリスマスとは違っていた。あらゆる生物を死滅させる謎の猛毒ガスが地球全土を席巻し、明日にもイギリスに到達するのだ。大人たちはパーティーを満喫した後、政府が配布した<EXITピル>という自殺用の薬を飲み、共に“尊厳ある死”を迎えるという協定を結んでいる。果たして、彼らは“最後の聖夜”をどう過ごすのだろうか……。

「キングスマン」シリーズのマシュー・ボーンが製作を手がけ、長編監督デビューとなるカミラ・グリフィンが監督・脚本をつとめた本作。ローマン君の母親でもあるカミラ監督にお話を伺いました!

――本作とても楽しく拝見させていただきました!長編デビューとなる作品ということですが、喜びと共に大変なこともあったのではないでしょうか。

私はもう若いわけではないのですが、長編映画初なんです。ずっと映画を作りたいと願い続けてきて、短編はいくつも撮ってきました。撮影に13年間担当していて、長い間業界には携わっています。気持ち的にも技術的にも十分準備が出来ていたので、制作にはそれほど支障は無かったのですが、映画を作り始めた時にイギリスが最初のロックダウンになりました。
映画作りというのはラブストーリーの様なもので、ポストプロダクション(撮影後に行う作業のこと)が結婚生活、その後離婚をするかこのまま関係を続けるか迷う様なものです(笑)。

カメラマンのアシスタントをした時に気付いたのですが、監督というのは「何を撮りたいのか」ということが明確にわかっていないとキャストやスタッフの信頼を失ってしまいます。なので、たくさんたくさん準備をして、短い間に信頼を獲得しなくてはいけません。幸運なことに私はそれをすぐすることが出来ました。

――本作は“クリスマスコメディ”となっていて、映画の中でも一つのジャンルというほど親しまれていますよね。

「ワーキング・タイトル・フィルムズ」というイギリスの制作会社があるのですが、『ラブ・アクチュアリー』などリチャード・カーティス監督作品をたくさん制作していて、“ワーキング・タイトル”というジャンルが一つ確立されているほどです。イギリスの上品な人たちがおバカなことをやって、それが魅力的な映画なのですが、このジャンルっぽさを利用して、本作のテーマを描きたいと思ったんです。その“ワーキング・タイトル”ぽさを象徴する一つが、キーラ・ナイトレイさんなんです。もちろんキーラは非常に才能のある女優さんなのですが、ワーキング・タイトルの顔ということでまず起用させていただきました。

この映画を作り始めた時は、コロナウィルスによるパンデミックが起こるなんてまさか思っていなかったんですね。最初は「楽しいお話のつもりが悪夢になっちゃった」というテイストにしようとしたはずが、パンデミックのせいで私が予期していなかった、望んでいなかったシンクロもしてしまったのよね。

――キーラ・ナイトレイさん素敵でした。

叶うならばこれから全ての映画でご一緒したいくらい、キーラってとても魅力的な人なんですね。彼女を中心に他のキャスティングも進めていきました。本作のプロデューサーはマシュー・ボーンという日本でも人気の監督だけれども、彼はすごく情熱的でキャスティングに関しても徹底的なところがあります。「どのカップルも陳腐で典型的な形であって欲しい」という要望がありました。いわゆるラブコメのカップルという感じですね。ワーキング・タイトルジャンルの風刺でもあるのですが、役者の皆さんは全て素晴らしい演技を見せてくれました。

――私はこの映画の映像美がすごく好きなのですが、カミラさんが長年撮影を担当されていたことが活きているのでしょうか?

私の夫は撮影監督で(ベン・デイヴィス)長い間私のボスだったのだけれど、本作での撮影の仕方について色々質問したの。日中でありながら夜の撮影をする必要があったので、ライトの使い方で非常に“異世界”的な映像を撮ることが出来ました。何か不穏なことが広がっているという雰囲気を映像で演出できたわけです。夫は「絶対にうまくいかない」と言ってたのに、成功出来ることが出来て、本当に良かったです(笑)。

――旦那さんが撮影監督のベン・デイヴィスさん、息子が俳優のローマン・グリフィン・デイヴィスさん、そしてカミラ監督と、本当に素敵な映画一家でいらっしゃいますよね。最高です!

ありがとう。私も子供の映画を観ることが大好きなんです。私は子供時代あまり幸せじゃなかったのですが、映画があったおかげで楽しく過ごすことが出来ています。今も、月2,3回は家族で映画館に足を運んでいますし、自宅のテレビでも色々な作品を観ます。
映画を観る事によって色々な話が出来ますよね。「作品が作られた背景」「それをどう感じたか」「どんな批評がされているのか」。これは古い映画でも、外国の映画でも、ドラマでも良いのですが、同じ作品を家族で観て、色々な話をすることはとても幸せなことですし、大切なことだと思っています。

――まさに本作も、色々な話が出来る作品だと思います。今日は素敵なお話をどうもありがとうございました!

『サイレント・ナイト』上映中
(C)2020 SN Movie Holdings Ltd

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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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